微表情は、いつでも出るわけではない。嘘を平気でつく人の微表情は基本的に出にくいが、感情を揺さぶることで出ることがある

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 こんにちは。微表情研究者の清水建二です。

 微表情とは、抑制された本音や「真の感情」が一瞬で顔に表れて消え去る表情のことです。

 その多くは0.2秒以内に行われるため目視で認識することが困難で、通常の会話では8〜9割が見落とされてしまいます(※「微表情」にあたる英語表記は、“micro expression”、”subtle expression”、“mini expression”などの用語に大別され、細かく分類されるがここでは総じて「微表情」とする)。それを分析・研究するのが私の仕事です。

 本日は、微表情に対するある疑問にお答えしようと思います。それは、微表情ってどのくらいの頻度で現れるの?という疑問です。結論から言いますと、微表情が生じる頻度は状況次第ということになります。それはどういうことでしょうか?

 Porterらの研究によると、微表情を実験的に実験参加者の表情に生じさせようとしたところ、観察された697回の表情の中で微表情が生じた回数は14回だったということです。抑制しきれない感情が微表情として生じるかどうかを実験した結果、2%の微表情出現率というわけですから、もの凄く少ない現象だと言えそうです。

 またPorterらが検出した14回の微表情は、0.2秒よりも長い間、顔の下もしくは上半分に生じたということです(これは厳密に言えば、微表情ではなく微細表情という現象です。微表情は、顔全体に抑制しきれない感情が0.2秒ほどの表情となって現れる現象です。一方、微細表情は、感情の感じ始め、あるいは弱い感情を感じているとき、それが表情となって現れている時間は問わず、顔の一部分に現れる現象です)。

 このことからさらに、微表情はほとんど生じない現象のように思えてきます。

 しかし、本物の微表情に日々対峙している私や微表情を利用してコミュニケーションをとっている実務家から言えば、この実験での14回という微表情出現数は極当たり前、と考えます。その理由は、感情刺激画像を用いて実験参加者に感情を生じさせているからです。

 自殺を成功させるために自分の苦悩を隠し退院許可を得ようとする患者の感情、犯した殺人を隠し通そうとしているときの犯罪者の感情、不倫をした疑いをかけられ政治生命が危ぶまれているときの政治家の感情、政務活動費の不正な使い道を指摘されその言い訳を考えているときの政治家の感情、自分の信念とは反する主張をしなくてはいけないときの感情etc……。

 こうした感情を抱きながら抑制しているときと実験用画像を見て刺激された感情を抑制しているときとで、微表情が生じる頻度や強さに違いが生じるのは当たり前です。

◆微表情が生じるとき・生じないとき

 微表情が生じる頻度や微表情の強さは、感情が抑制しやすい状況か否かによって左右されます。

 感情を抑制するのが容易なら微表情は生じませんし、それが困難なら微表情は生じます。ウソをついた人物がそのウソにさほど罪悪感を抱いていないければ、その罪悪感は簡単に抑制出来てしまうので、罪悪感の微表情は生じないでしょう。

 また、もしその人物が微塵も罪悪感を抱いていなければ、そもそも抑制される感情がないために微表情は生じません。一方で、その人物がウソに大きな罪悪感を抱いていれば、その罪悪感を抑制するのが困難になり、微表情として生じるでしょう。

 さらに、ウソつきが罪悪感を抱いていなくとも、証拠を提示されればそれに動揺して微表情が生じるでしょう。その証拠を見越して辻褄の合う回答を用意していれば、罪悪感も動揺もないので微表情は生じないでしょう。

 このように微表情が生じやすいか否かは、個人の感情の抱き方や微表情が生じる状況、つまり感情が抑制される状況であるか否かを考えることが重要なのです。