小池百合子都知事は、27日午前に開かれた「希望の党」の設立記者会見で「日本をリセットする」と宣言した(写真:日刊現代/アフロ)

「しがらみのない政治、そして大胆な改革を築いていく新しい政治。まさに日本をリセットするためにこの希望の党を立ちあげます」

9月27日午前に開かれた「希望の党」の設立記者会見。代表に就任した小池百合子東京都知事はこう宣言した。インナーとスカーフを自身のカラーであるグリーンで統一した小池知事の左右には、若狭勝衆議院議員と細野豪志元環境相がまるで女王様に傅くかのように座っている。

小池知事が意気揚々とした様子に見えたのには理由がある。その前夜、小池知事は前原誠司民進党代表と会談し、民進党が希望の党へと合流する方向で合意したためだ。

「日本最初の女性宰相」を目指すのか

その一報は、すぐさま永田町を駆け巡った。内容は次の2つに集約される。1つ目が「小池知事が知事を辞職し、衆議院選挙に出馬する」というもの。2つ目が「民進党は地方組織とこれまで貯め込んだ約140億円を“手土産”に、希望の党に吸収される」との説だ。

1つ目の「衆議院鞍替え説」は、かなり信憑性をもって流された。ある民進党関係者は「小沢一郎氏が小池知事に『今なら総理になれる』と国政への転出を説いたようだ。最近の小沢氏は小泉純一郎元首相とも近いので、2人で小池知事を説得したのではないか」と述べた。さらに「小池知事自身、この追い風は長く続かないと見ている。ならば一発勝負をかけて、日本初の女性宰相を目指そうというわけだ」と語っている。

これについては小池知事自身が27日夜に各局の番組に出演し、「都知事として頑張っていくということは、昨年291万票をいただいたみなさんの声だとちゃんと認識している」と述べ、都知事辞職と国政進出をきっぱりと否定した。

しかし、小池知事の言葉を額面通りに信じていいのだろうか。

変わり身の早さと口先のうまさ

小池知事は8月に「国政は若狭に任せた」と言いながら、9月25日には若狭議員らが作成した政策をあっけなく“リセット”し、自分で書き直した上で国政政党の代表に就任している。また、公明党が「国政に関与したら都議会での連携を解消する」と警告していたにもかかわらず、いとも簡単にそれを破った。その挙句、「(首班指名には)山口那津男(公明党代表)さんがいいと思う」とまるで公明党にすり寄るような発言を行い、公明党幹部を激怒させている。


希望の党には、いろいろな思惑を持った人たちが集まっている(写真:日刊現代/アフロ)

そもそも、変わり身の早さと口先のうまさは小池知事の大きな特徴である。それゆえに25年間、永田町をわたり歩くことができた。“途中入社”の自民党で党3役の総務会長まで務め、環境相や防衛相まで歴任できたのは、天性ともいえる変わり身の早さと口先のうまさのためだ。

2つ目の「吸収合併説」は半分当たりで半分はずれのようだ。民進党は27日午前に、衆議院選挙に出馬予定者の各陣営に「ポスターやビラなど選挙用の宣伝物の作成を28日夜まで止めるように」と伝達した。すなわち希望の党への合流話が進行しているため、正式な結論が出るまで待て、という意味だ。

また民進党の衆議院議員は党籍を残したまま、希望の党から出馬することがほぼ確定したと報じられた。ただし前原代表自身は、無所属で戦うという。情報は錯綜している。

ところが小池知事は「党籍を残したまま、希望の党から出馬」という手法には反対している。27日夜のBS番組で「ひとりひとりこちらが仲間として闘えるかどうか決めさせてもらう」と明言。「安全保障と憲法」で判断するという。この踏み絵を踏ませるような言葉は、希望の党への参加に賛成していない民進党の議員たちを激怒させている。

「これはちょっと新進党結党の時に似ていないか」

民進党のベテラン秘書が筆者にこう話しかけてきた。新進党は1994年、新生党、民社党、公明党、日本新党などが合流して結成された。この舞台の中心となったひとりが、参議院から衆議院に転出したばかりの小池知事。そして影から一連の動きを演出していたのが小沢氏で、演じている役者が同じというわけだ。

さらにもうひとつ、共通点がある。それは2段階方式による合流だ。

公明党は新進党に参加した時に参議院の勢力を2つに分け、1995年の参議院選挙での非改選組は後で参加するとする「分党・2段階方式」を採用。非改選組は地方組織とともに「公明」を結成し、藤井富雄都議(当時)が代表に就任した。公明党がこのような方式をとった実質的な理由は、「いつ新進党が分裂しても、帰る場所があるようにと配慮したため」と言われていた。

「民進党も党籍は残して、衆議院議員は参加で参議院議員は残るという“2段階方式”をとっている。しょせんは次期衆議院選でなんとか生き残れるようにという方便なのかもしれない」(同秘書)

資金をめぐるぶんどり合戦

民進党を残すということは、組織と資金はそのままということ。民進党にとって虎の子の140億円はそのまま残るということだ。

一方で希望の党は、先行合流組を受け入れることによって、残りの議員が一斉になだれ込もうとすることを期待していたに違いない。当然その時には資金が付いてくる。「資金をめぐるぶんどり合戦」は当分続くだろう。

こうした動向を踏まえて、26日と27日に毎日新聞が行った世論調査では、比例区の投票先として18%が結成間もない「希望の党」を挙げ、「自民党」の29%の次に多かった。そればかりではない。内閣支持率は36%で前回(3日と4日に実施)より3ポイント減少し、不支持率が支持率を6ポイント上回ったことは、政府自民党を震え上がらせた。この傾向が続けば、衆議院選挙に負ける可能性も出てくる。

このままいけば民進党をリセットし、安倍晋三政権までもリセットしそうな小池新党だが、その果てには何があるのか。「スピード感」が口癖の小池都政では、築地市場移転問題は滞ったままで、2020年の東京五輪のスムーズな運営に必要な環状2号線の開通もままならない状態だ。次期衆議院選で我々が注視すべきは、政治家の口元ではなくその足元ではないだろうか。