写真撮影/金井直子

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家族が近くにいるとお互いに助け合えて、もしもの際にも安心。だから、実家の近くに家を建てたり、同じマンションの住戸を購入するなど、親世帯と子世帯が近くに暮らす「近居」を選ぶ人が増えています。そして近居は、UR賃貸住宅などの団地でも広がっています。筆者の近所に親子三世帯が同じ団地で暮らしていると聞き、近居についての思いや日々の暮らし、近居に至った経緯などを伺いました。

両方の世帯にメリットのある「近居」というライフスタイル

少子化対策の一環として政府が「三世代同居・近居」に優遇措置を進めていることもあり、家の購入時に近居を考える人は多いのではないでしょうか。優遇制度は持ち家だけが対象ではなく、賃貸住宅や公営住宅を対象に補助金、優先入居などの制度を設けている自治体もあります。

UR都市機構では、UR賃貸住宅で近居する3親等内の親族を対象に、いずれかが子育て世帯または高齢者世帯等の世帯なら、家賃が5年間5%もしくは20%(世帯年収で割引率が決まる)減額される「近居割」という制度を設けています。同じ団地内もしくは半径2km以内の別の団地どうしも対象です。さらに、URとUR以外の近居でも適用される「近居割WIDE」もあるので、実家近くのUR賃貸住宅に入居する場合も対象になります。

子世帯にとっては、子育てや家事などをサポートしてもらえ、両親の老後を近くで見守れるといったメリットがあり、親世帯にとっては、孫の成長を近くで見守れ、暮らしに安心感が生まれるなどのメリットがあります。一緒に食卓を囲んだり料理を分け合ったりと、日常的に行き来することで楽しい出来事を皆で共有できる歓びも生まれます。

毎日がホームパーティー状態? 病気の際もみんなで看病できて安心

筆者の近所に団地内で近居をしている親子三世帯がいると聞き、お話を伺いました。
場所は東京・日野市のUR賃貸住宅「多摩平の森」。そこに三世帯で「団地内近居」をしているご家族です。最初に姉世帯が暮らし始め、それに次いで妹世帯、さらに両親世帯も加わって、三世帯での近居がスタート。姉世帯はご夫婦とお子さん2人の計4人、妹世帯はご夫婦とお子さん1人の計3人、そして両親という、総勢9人による近居です。

全部で30棟ある団地ですが、姉世帯が5階、妹世帯は同じ棟の3階、両親世帯は隣棟という、とても行き来しやすい近さで暮らしています。「こんなに近い部屋に入れたのは、本当に偶然なんですよ」と微笑む皆さん。仲良し家族だから引き合う何かがあるのかもしれませんね。

【画像1】左から母・太田雅子さん、姉・吉田有香さんとその息子さん、妹・菅波朱美さんとその娘さん。同い歳のお子さん達は、ここで仲良く一緒に成長していくのでしょうね(写真撮影/金井直子)

三世帯がどんな日常を過ごしているのか伺いました。お姉さんは第2子誕生後に専業主婦になり、妹さんは自宅でのお仕事なので、しょっちゅうお互いの家やご両親宅を行き来しています。お母様もそこに加わり、一緒に子育て中です。「毎日楽しく孫達の世話をしています」

三世帯で何やかやと交流のある日々。「元々、ホームパーティー好きの一家なので、皆でワイワイお料理をしたり、食卓を囲むことが多いですね」とお姉さん。「よくお裾分けもし合っています。昨日は母が9人分のコロッケを40個近くも揚げてくれて、みんな大喜びでした」と妹さん。お母様も「小学校に上がった孫が毎朝わが家に『行ってきます』と言いに来てくれて、日々、成長を見守っています」と語ります。

実は引越後、お父様が病気で入院となったのですが、「近居しているおかげで、小さな子どもが一緒でも皆ですぐに看病やお見舞いに行ける。そんなところがとても安心できますね。近くに住んでいなければ、子連れで都心の病院へ頻繁に行くのは難しいでしょうから、母は看病に1人で苦労していたかもしれません」と近居で得られた安心感について振り返ります。

「姉のある言葉を聞き、一緒に子育てしたい!と近居を選びました」

三世帯が日野市で暮らすことになったのは、姉世帯の長男の幼稚園入園がきっかけでした。「世田谷区で暮らしていましたが、立川市の私立学校・東京賢治シュタイナー学校に幼稚園から通わせたいと考え、夫の通勤に支障のない範囲だったこともあって、引越しを決意しました」

「土に触れる暮らしがしたくて、世田谷で暮らしていた頃も畑を借りていました。引越先でもと考えたのですが立川市では見つからず、隣の日野市で菜園付きの賃貸住宅を見つけたんです。でも満室だったため、近くの緑に囲まれたUR賃貸住宅に入居することにしました。レンタル菜園が近くにあるので借りる予定です」とお姉さん。

一方、妹さんも後を追って越してきた経緯を語ります。「姉の長男がとても可愛いくて、毎日のように子育てを手伝っていたんです。私が結婚したとき、姉の家の近くに新居を構えたほどの甥ラブなのに、引越すことを聞き、手にしていた麦茶を落とすくらいショックで。近くで一緒に暮らそうと姉から言われたのですが、都心近くにいたいという思いが強くてずっと拒んでいました。でも、甥に毎日会っていたのに週に1回会えるかどうかになってしまって寂しかったですね」

「その後、私も娘を生み、夫は仕事で夜遅いことが多く、母に毎日のように来て支えてもらっていたのですが、甥が一時病気になり、母が看病することになって、1人で行う子育てがどうにもしんどくなってしまって…」と妹さん。「そんな時、姉から『子育てのコは孤独のコ。だから子育ては一緒に日野でしよう』と言われ、その言葉が心にズシンと響いたんです。夫に相談したら『妻と娘に良い環境ならそれでいい』と言ってくれて。心の広い夫です(笑)。今では自治会の役員になるほど、この地に溶け込んでいます」

郊外暮らしは考えたことすらなかった妹さんでしたが、転居して1週間も経つ頃には「日野暮らし最高! 団地暮らし最高!」という心境になったそう。「緑豊かで空気も綺麗。図書館、子ども家庭支援センター、イオンが歩いてすぐという利便性もあって、郊外って暮らしやすいんだなと実感しました」

お母様も振り返ります。「私たち夫婦も、孫が小さい時期に一緒に子育てしたいと、1年間の期間限定で転居してきました。みんなで近居するには本当に良い環境だと感じます。まもなく1年経ちますが、この先も娘達、孫達を見守れる環境にいられればとも思います」

「URは礼金や保証人が不要で、家賃を1年分一括で支払えば収入証明書等の書類提出が不要という制度もあるので、気軽に借りることができました。教室を開催していることもあり、港区の自宅はそのままにしていますが、夫からは自宅を引き払ってもいいんじゃないかなんて言葉も出るようになるほど、日野での近居暮らしを気に入っています」とお母様。

賃貸住宅ならではの入居の気軽さ、近居割などの割引制度があるので、期間限定居住がしやすいのかもしれません。更新料も不要なので、更新も気軽に行えます。

【画像2】大樹に囲まれゆったりした団地の敷地。子どもが走り回れる芝生広場、遊具のある児童公園、木漏れ日が心地いい遊歩道が何カ所もあり、子育てやのんびり過ごすにはとても良い環境です(写真撮影/金井直子)

自治会活動にも積極参加。三世帯で団地ライフを満喫

「近居は、それぞれの家族が適度な距離感でつき合えるのがいいですね。さらに自治会やママ友など地域との付き合いも三世帯で気楽にできて、心地よいです。郊外って街がゆったりしているからか、やさしく接してくださる方、子連れでいると話しかけてくださる方が多くて最初はびっくりしました」

姉妹で自治会活動に積極的に参加することも多く、絵本の読み聞かせ会を開いたり、毎年開催されるイベントでさまざまな企画を立てたりと、家族全員が団地ライフを楽しんでいます。

姉妹世帯どうしの近居スタートから2年以上、親世帯との近居からまもなく1年が経とうとしていますが、三世帯の交流だけでなく、団地や地域コミュニティともおつきあいの幅が広がりました。

人とのつながりが希薄になったと言われる時代にあって、三世帯のつながりを見ると、家族やお友達のたくさんの笑顔に触れられる毎日は、3家族分の楽しさが詰まっている素敵な日々なのだろうと感じました。

【画像3】親子三世帯でよく集会所に遊びに行く。自治会事務局の関さん(写真右)とも仲良しで、お子さん達の成長を一緒に見守ってくれています(写真撮影/金井直子)

【画像4】写真の建物は図書館・家庭支援センター。団地に隣接しています。病院、イオンもすぐ近くで便利(写真撮影/金井直子)

●取材協力
・UR多摩平の森 自治会事務局
・UR都市機構(独立行政法人 都市再生機構)●参考
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(金井直子)