「あらら、なんだあれ? 夢!? かこれ」
 北海道、夕張。炭鉱、観光開発と繁栄を築いたこの町で、夜の帳が下りたころ、衝撃的な出会いに動揺した。
 仕事を終え、夕張を発つ最終列車のひとつ手前、19時24分発の列車まで、駅前の屋台村で呑んでたときだった。
 グリーンにイエローの色が入るボディが、屋台村の脇を通り去った。
 その車体は、明らかに都営バスだった。東京都のバスがなぜ夕張に…?
 2020年オリンピックが東京で開催されることが決まった2013年。ことし最後のラン鉄は、東京都の電車やバスとの突拍子もない出会いを、勝手に回想してみたい。
 どれも、国際オリンピック委員会のロゲ会長よろしく「トッキョー!」と思わず叫びたくなるほどの衝撃だ。

熊本…三田線車両が路面電車に!?

 まずは、夕張インパクトから約2千キロ離れた、九州・熊本。
 出張帰りに見たその光景は、まるで白昼夢。都営地下鉄三田線で1999年まで活躍していた6000形が、なんと熊本電鉄に転職し、地上をのんびりと走っている。
 都営地下鉄の電車が、肥後国の藤崎線の併用軌道区間を、クルマと歩行者といっしょになって遠慮がちに走る姿は、ちょっとフシギ…。
 ちなみにこの6000形、埼玉の秩父鉄道にも渡り、もと東急や国鉄の車両たちといっしょに山間を駆けている。

長崎…都電の黄色い電車が隠居!?

「ナニコレ! 旨あああああ!!」
 キン冷えの昼ビールに、長崎の珍味、熱々のハトシをひとくち。初めての味の出会いに感動し、ついつい酔っ払った日だった。「海老などのすり身の風味とパンのカリッとした触感がたまんねえな」などとひとり言を発しながら、真夏の長崎の街をさ迷っていたとき、またも「トッキョ!」に出会った。
 都電の黄色い電車が、車庫でまったりと休んでるじゃないか!
 その正体は、長崎電気軌道700形。もと都電2000形という車両で、1969年に6両が東京から長崎へと渡った。
 車両前面には「私は元東京都電2018号車です」という表示。ハトシに似た色の都電が、長崎電軌の電車群のなかで、異彩を放つ。こちらもひっそりと隠居する古老といった感じだった。

千葉…森にたたずむ都電カフェ!?

 千葉・八千代で見つけた都電は、森のなかで甘い香りを漂わせていた。
 なんと、都電の車両がカフェへと転身し、木漏れ日にあたりながら、カフェ好きをこっそり誘い入れている。
 36系統の札を出し、本所吾妻橋ゆきを表示するこの都電8000形。車内は、かつての車内の面影はほぼ消えて、見事なオサレカフェに変身している。
 ココはいっちょ、お外の席に座る。この都電を眺め、森に流れる風の音を聞きながら、熱〜いコーヒーと、しっとりとしたチーズケーキ、といこう。
 オサレカフェに場違いの中年男。電車を見つめてお茶のひととき、あの超大物芸人の打ち明け話を思い出した。
「やっと買えた高級車を、自分で運転すると、そのクルマのカッコよさがわからねえだろ、だから弟子に運転させて、その後ろをタクシーでついていって、ずーっと外から眺めてたんだ」

夕張…都バスがなんで北海道に!?

 そして夕張、だ。 東京から夕張へ渡ったバスは、ノンステップバス。学校の統廃合などの関係で、夕鉄バスのルートが変更され、新たなバス停の乗降をできるだけラクにする目的で、ノンステップ車が選ばれたという。
 駅前の屋台村のおばちゃんは言う。
「ハイカラできれいなバスね。乗りやすくて助かるよ。んでもあたしらよりもっとびっくりするのは、東京からやてきた旅行客だよね。なんでココ走ってんの?って、まず聞いてくるよね」
納得。もう一杯頼もうとしたころ、折り返し、追分ゆきとなる帰りの列車の足音が聞こえてきた。

この連載は、社会福祉法人 鉄道身障者福祉協会発行の月刊誌「リハビリテーション」に年10回連載されている「ラン鉄★ガジンのチカラ旅」からの転載です。今回のコラムは、同誌に2013年12月号に掲載された第18回の内容です。

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