1年以上列車の走っていない根室本線東鹿越―幾寅間(筆者撮影)

大地震や豪雨などの影響で、無残にも路盤が崩壊したり、橋梁が落下したりするなどの被害を受け、列車の長期間運休を余儀なくされている線区がいくつもある。今回はそうした不通区間を10カ所取り上げ、現状と復旧の見込みを探ってみた。

復旧作業もまだ手つかず

1)JR北海道・根室本線(東鹿越―新得間)

2016年8月末の台風10号の影響による豪雨で、斜面崩壊や土砂流入、流木堆積などによる甚大な被害を受け、今なお復旧作業さえ行われていない。当初は、東鹿越―落合のみ代行バスを運転していたが、現在は、狩勝峠を越えて、東鹿越―新得間で代行バスの運転を行っている。


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札幌と帯広・釧路を結ぶ特急列車が石勝線経由で運転されるようになって以来、根室本線の富良野―新得間は、利用者数が極端に少なく、JR北海道が単独では維持できないと公表している区間のひとつである。復旧に要する費用は10億5000万円とされており、その場合は国などによる補助を受けることになるが、公的資金を投入する場合はその後も路線を維持し続けることが前提となる。

末端の盲腸線であれば廃止はやむをえないであろうが、鉄道ネットワークとしてみた場合、地元の利用客は見込めないとしても、通過の需要は列車の設定次第であろう。この区間は北海道有数の観光地である富良野と道東を結ぶルートの一部であるし、旭川―帯広を結ぶルートの一部でもある。

近年では、快速「狩勝」が申し訳程度に1日1往復していただけで、需要は細る一方ではあったものの、構想段階にある北海道周遊観光列車を設定したときに、この線区が廃止になってしまえばルートの制約ができてしまう。また、石勝線がもし不通になった場合は、貨物列車の迂回ルートの一部ともなるわけであるから、広域的な鉄道ネットワークの維持という観点から見れば、復旧したほうがよいのではないだろうか?

もちろん、莫大な公的資金を投入する以上は、活性化を大いに検討すべきであることは言うまでもない。

2)JR北海道・日高本線(鵡川―様似間)


様似駅に到着した列車(2008年8月・筆者撮影)

2015年の高波による盛土の流出、その後の台風による路盤流出で復旧がままならないうちに、2016年の豪雨と台風によって被害はさらに拡大し、鵡川―様似間116kmで運休が続いている。復旧には試算で86億円、そのほか施設老朽化による対策費用が50億円以上と見積もられている。

あまりに高額な費用であるうえに、過疎化が進む地元自治体が応分の費用を負担できるわけもなく、JR北海道は復旧を断念すると発表している。しかし、地元は納得せず、交渉は膠着状態である。一方、被害がほとんどなかった鵡川―日高門別間20.8kmについては地元が復旧を要望している。

現状では、折り返し運転ができないシステムになっているので、この駅で折り返しをするためには信号システムの改修工事をする必要がある。その費用の算出を行っていないのだが、無傷に近いのなら、この区間くらい復旧してもいいと思う。そのほかの区間については、DMV(線路と道路の両方を走れるバス形車両)導入の提案などもあり、決着には今しばらく時間がかかりそうである。

約2年ぶりに復旧の見込み

3)JR東日本・山田線(上米内―川内間・宮古―釜石間)

盛岡―宮古―釜石間を結ぶ路線。盛岡―宮古間は2011年の東日本大震災の際は比較的早期に復旧したが、2015年12月の土砂崩れによる列車脱線事故で再び不通となった。その後、盛岡―上米内間、川内―宮古間は運転が再開されたものの、山間部の上米内―川内間は2017年9月下旬の時点で運休中である。

しかし、復旧作業は順調に進んでいて、JR東日本は9月22日、盛岡―宮古間の運転を11月5日に再開すると発表した。

一方、東日本大震災による津波被害などで壊滅的状態だった宮古―釜石間は、JR東日本が工事を行ったうえで三陸鉄道に移管し、同社が運行を担当することになった。復旧工事は順調に進み、2018年度内の開業を目指している。

4)JR東日本・只見線(会津川口―只見間)


只見線の不通区間、会津川口から只見に向けて発車したSL列車(2010年・筆者撮影)

2011年の豪雨で不通となっている会津川口―只見間は、一時は廃線もやむなしと思われていたが、2017年6月に鉄道での復旧が決定した。地元である福島県とJR東日本が「鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」を締結し、福島県が鉄道施設や土地を保有しJR東日本が列車の運行を担う「上下分離方式」で運営していくことになった。

基本合意書などの内容によると、1日3往復を基本とするとある。定期列車としては、それでいたしかたないのかとも思うけれど、せっかく莫大な費用をかけて復旧するのであるから、従来以上に積極的に観光列車を運行して、只見線の活性化を図ってもらいたいものである。

新緑の頃や紅葉シーズンは折り紙つきの絶景路線であるゆえ、2〜3日に限定したSL列車だけではなく、工夫を凝らした眺望の楽しめる車両を投入してはどうであろうか。復旧後の動向に注目したい。

5)JR東日本・常磐線(竜田―浪江間)


常磐線浪江駅から不通区間を望む(筆者撮影)

東日本大震災と福島第一原子力発電所事故により不通となった常磐線のいわき以北の区間は、原発から半径20km圏内の警戒区域、その外側にある緊急時避難準備区域に指定されたため復旧作業自体が凍結されていたが、その後、除染などが進み区域の解除が行われたことにともない、復旧作業が行われ、少しずつ復旧区間が延びていった。

2017年10月21日に竜田―富岡間の運転が再開されると、残るは富岡―浪江間となる。この区間も2020年3月までに運転を再開する見通しが発表され、工事は順調に進んでいる模様だ。

7月の豪雨で大きな被害

6)JR九州・久大本線(光岡―日田間)

2017年7月の九州北部豪雨により光岡―日田間の花月川に架かる橋が流出し、不通となっている。復旧までには1年ほどかかる見込みで、めどは2018年夏頃といわれている。観光特急「ゆふいんの森」、豪華列車「ななつ星in九州」のルートとなっているだけに、一日も早い運転再開が待たれる。「ゆふいんの森」は、現在、小倉、日豊本線経由で2往復が迂回運転されている。

7)JR九州・日田彦山線(添田―夜明間)

久大本線同様、2017年の九州北部豪雨により添田―夜明間において複数箇所で被災したため列車の運転を取りやめ、バスによる代行輸送を行っている。橋の橋脚が傾いたり、変形したりしており、盛土の流失、路盤崩壊などの被害も甚大で、復旧までにはかなりの時間を要するものと思われる。

8)JR九州・豊肥本線(肥後大津―阿蘇間)


外輪山をバックに豊肥本線の列車が赤水に到着する(2008年・筆者撮影)

2016年の熊本地震と豪雨の影響により各所で寸断された豊肥本線だが、今もって肥後大津―阿蘇間は運休中で、肥後大津―宮地間で代行バス輸送を行っている。大地震の影響による斜面崩壊、地盤変状、路盤沈下など被害は深刻だ。

とりあえず、肥後大津―立野間で先行的な復旧工事を行い、その後、全線復旧へ向けた工事を行うとリリースされている。ただし、具体的な運転再開時期についてはわかっていない。この区間も豪華列車「ななつ星in九州」の運転区間であるとともに、阿蘇観光にとって重要路線だけに一刻も早い復旧が待たれる。

なお、台風18号の影響で運転を見合わせている同線の三重町―中判田間は、10月2日に運転再開の見込みだ。

9)南阿蘇鉄道(立野―中松間)


南阿蘇鉄道・立野駅に停車する列車(2008年・筆者撮影)

2016年4月の熊本地震により甚大な被害を受け、中松―高森間7.2kmは復旧したものの、立野―中松間10.5kmは不通になったままである。2つのトンネル内壁崩落、雄大なアーチ橋である第一白川橋梁の損傷など重大な被害を受けている。

第一白川橋梁の補修費用は10億円以上ともいわれ、全線復旧へのハードルは高い。国からの補助、募金などさまざまな取り組みを行っているので、わずかなりとも応援したいものである。南阿蘇鉄道応援サイトも開設されている。

鉄道復旧を断念した区間も

最後に、鉄道による復旧が断たれた路線を挙げておきたい。

10)JR東日本・大船渡線(気仙沼―盛間)気仙沼線(柳津―気仙沼間)

東日本大震災により甚大な被害を受け、2012年より仮復旧ということでBRTによる代行バスの運行を開始した。当初は、鉄道による復旧までの暫定措置という位置づけだったが、完全に復旧するには1100億円ほどの費用がかかることから、JR東日本は鉄道による復旧を断念し、BRTによる運行を本格復旧として継続したいと沿線自治体に提案した。

地元の足並みはそろわなかったが、さらなる議論が必要としていた気仙沼市がいくつかの要望を行い、一定の回答が得られたとの認識からBRTによる継続運行を受け入れることとなった。これにより、鉄道での復旧は断たれたのである。

以上、10カ所について現状と将来の見通しを書いてみたが、どこも鉄道による復旧を望んでいる。しかし、鉄道利用者のあまりの少なさ、復旧費用の膨大な金額を前に断念するところも出ているのが現状だ。災害は、これからも起こりうる。時とともに老朽化が進むローカル線の現状を見るにつけ、将来は楽観視できない。