希望の党代表の小池百合子氏

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 東京都知事の小池百合子氏が代表に就任した国政政党「希望の党」は9月27日に綱領を発表し、結党を伝える記者会見を行った。

「脱原発」「消費税増税凍結」「しがらみ政治の脱却」「真の地方分権」などを訴え、「寛容な改革保守」の立場から、自公連立政権でもなく野党4党連合でもない新たな選択肢を生み出した。

 安倍晋三首相と民進党の前原誠司代表が図らずも描いていた「自民党vs.民進党」の対立構図は、小池氏が新党の代表に就任したことで崩壊したといえる。総選挙の新たな対立構図として「しがらみ政治vs.改革派」という流れが生まれることになるだろう。

 代表あいさつで小池氏は、こう述べた。

「しがらみのない政治、大胆な改革を展開し、日本をリセットしなければ、国際間競争、日本の安全保障も守れないという危機感を持つ仲間が集まりました。日本にはモノがあふれていますが、希望がない。

 国民は、『これからの日本はどうなるか』という不安の中で生きています。国民のみなさまに希望を届けたい。希望の党は、これまでの日本の文化と伝統を守る寛容の精神で改革を行う、新しい保守政党です。

 まず、『東京で改革をしよう』と都知事選にチャレンジし、その際『日本や東京に希望を与えてほしい』という声が多々ありました。ですから、真剣に改革しなければなりません。ところが、全国知事会の知事の方々の多くは霞が関出身です。ですから、地方分権を進めるどころか中央集権を進めているのが実態です。

 また、北朝鮮情勢がこのようななか、安倍総理の専権事項として解散を断行しようとしています。政治空白をつくることは、本来であればいいはずがありません。解散するのであれば、今こそしがらみ政治を脱却し、変えるところは変える、守るところはきめ細やかに守る政治を行います。これからも、世界をリードする日本でありたいと思います」

●綱領前文に安倍首相への皮肉?

 希望の党の綱領は以下の6項目で、細野豪志衆議院議員が読み上げた。

(1)寛容な改革保守政党を目指す
(2)「しがらみ政治」からの脱却
(3)国民が希望と活力をもって暮らせる生活基盤を築き上げる
(4)平和主義のもと現実的な外交・安全保障政策を展開する
(5)税金の有効活用、民間のイノベーションの最大活用を図る
(6)女性も男性も活躍できる社会づくりに注力する

 綱領の前文には「立憲主義と民主主義に立脚」と明記されているが、これは「立憲主義が権力者を縛るという解釈は古い」と公言してはばからない安倍首相に対する皮肉のように見えた。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領の例を見ても、保守勢力によって白人至上主義の考えが蔓延し、今やアメリカ社会は分断されている。保守は、ときとして「寛容さがない」と受け止められることがある。前述の文言は、そんな状況に危機感を抱いていることの表れだろう。そこで、新たなキーワードとして、「寛容な改革保守」を打ち出したのではないだろうか。

 そもそも「寛容」はリベラル派がよく使う言葉であり、希望の党は「保守」と言いつつ右にも左にもウィングを広げつつある。というのも、自民党をはじめとする保守政党は「脱原発」を標榜してこなかった。しかし、東京をはじめとする大都市圏の有権者には一定数の「脱原発」支持者がいる。しかも、「アベノミクスで戦後2番目の長さの好景気」と言いながら、中小・零細企業の経営は苦しく、一般家庭の財布の紐は固い。

 子育てママさんたちの中にも「消費税増税凍結」を望む声は多いが、肝心の民進党は「消費税増税賛成」であり、そもそも「安倍政権と前原代表の政策の違いがよくわからない」という声も上がっている。そんななかで希望の党が打ち出した政策は「保守的でありながらリベラルも網羅する」というものであり、まさに有権者に新たな選択肢を打ち出したかたちだ。

「反自民」「非民進」といった保守系・革新系を問わず、希望の党は現状の政治に不満を抱く有権者の大きな受け皿になる可能性が高い。さらに、もっとも保守的な政党「日本のこころ」の代表であった中山恭子参議院議員も希望の党に参加したが、中山議員は「拉致問題の解決、日本の伝統の保守」をうたう存在として知られている。

 一方で、綱領には明記されていないものの、細野議員は会見で「保育施設への取り組み」「選択的夫婦別姓」にも言及し、今後、国民の多様な生き方を後押ししていく方針も示した。

 そもそも、保守系の議員には「選択的夫婦別姓には反対」という意見が多い。それが両立するのは、「寛容な改革保守」というオブラートに包んだスローガンでまとまっているからだと考えられる。

●小池代表は早々に退席、具体的な政策は不明瞭

 会見で、細野議員は「本気で政権を取りに行く」と覚悟のほどを示した。さらに、若狭勝衆議院議員は「これまでの政治システムを大胆に変えていく。この政策は、国民の希望につながるかどうかで実施する」と語り、結党宣言を行った。続いて、長島昭久衆議院議員の音頭で「がんばろう三唱」が鳴り響いた。

 若狭議員は会見で以下のように語っている。

「希望の党のPR動画も含めて、自民党から『付け焼き刃的に動画を作成した』と言われているが、ここ数日でできるものではない。何カ月間も新党構想を練ってきた。これまでの日本社会は男社会でやってきたが、ゆがみも生まれた。新たに女性目線で国を変えていくことも必要で、男性と女性の力を結集したい」

 小池氏に質問したのは、「ニコニコ動画」と朝日新聞だ。首班指名の質問について、小池氏は「選挙が終わった後、しっかりと国政を率いていただける人を考えます」と回答。「衆議院選挙立候補の可能性」について聞かれると、「都知事としての役割をしっかりと果たし、東京オリンピック・パラリンピックも進めていく」との意向を示した。この質問をもって、小池氏は都知事の公務のために早々に退席した。

 これ以降の質疑応答は、主に若狭議員、細野議員、松沢成文参議院議員が回答した。具体的な政策に切り込んだのが、日本農業新聞だ。同紙は、農林関係最大手の専門紙。農業の保護育成を主眼とし、環太平洋経済連携協定(TPP)反対に論陣を張った。

 希望の党が都市型政党であり、農業関係でどのような政策を立案するかに関心がある一方で、不安を抱えていたという側面もあったのだろう。

 しかし、同紙の質問に対して、希望の党は「地域が活躍できる社会をつくりたい。農業・漁業の政策をしっかり掲げたい」と答えるにとどまった。具体的な政策が発表されるのは来週だという。

●「希望者が殺到している」…さらに議員が参加か

 会見に出席した印象では、今後、既得権益に偏った政策については見直される可能性が高いと感じた。政治と業界団体とのつながりは自民党単独政権時代から存在しており、今もパーティー券の購入などで政治家と業界団体は結びついている。また、票につながることから、政治家は各業界の陳情には耳を傾けている。

 しかし、道理が通る政策であれば別だが、一部の既得権益者だけが利益を享受するような政策は見直されるのではないだろうか。そして、従来の既得権益を見直す一方で、地方を元気にするための施策が検討されるものと思われる。それが、希望の党が掲げる「しがらみ政治からの脱却」の真意ではないだろうか。

 ちなみに、前述のように小池氏は全国知事会に言及したが、知事の多くは総務省などの自治官僚出身だ。率直に言えば、自治官僚を終えて次のステップとして知事になるケースが多いわけで、現在の全国知事会の山田啓二会長(京都府知事)も元自治官僚だ。全国の知事職は、霞が関官僚の天下りポスト同然というわけだ。

 しかし、真の地方分権を行うときに、そのような“中央集権”的な元霞が関の人たちが本気で動いてくれるのか。それを疑問視しているのが、小池氏のスタンスだ。それゆえ、今後は改革に期待が持てると同時に官僚出身の知事からの反発も予想される。

 今回の会見に出席した国会議員は14名。今後の参加者について質問があったが、「相当な方々が『参加をしたい』との申し出がある。人数は控えますが、ここ数日でも希望者が殺到している。候補者擁立をしっかりと進めていく。ただし、政策の一致が前提です」「全国規模の政党にふさわしい立候補者をそろえる予定」との回答だった。

 実際、現在も民進党から離党する議員は増えており、前原代表も困惑を隠せない。回答した細野議員や若狭議員の顔色を見る限り、参加者についてはかなりいい感触を得ていることが想像できた。

●小池百合子の都知事&代表兼務は可能なのか?

 興味深い質問を飛ばしたのは、TBSだ。小池氏が早々に退席したことに対して、「早速、二足のわらじに弊害があるのではないか」と指摘したのだ。これについて、希望の党側は「知事職を全うするのは大変であるが、時間的な制約があることについてはみんなで補う」「地方分権に取り組むためには、小池都知事・代表に期待したい」と切り返した。

 ちなみに、細野議員は厳しい表情で回答したが、もう1人の回答者で知事経験者でもある松沢議員は笑顔で返していた。松沢議員は、この日の会見で「憲法改正とともに、受動喫煙の法規制の実現」にも言及している。

 希望の党の役職については、小池氏の代表のみが決定しており、ほかの役職については選挙後に検討するという。なお、本日の会見に出席した国会議員のメンバーは次の通り。

【衆院】細野豪志=静岡5区▽松原仁=比例東京▽長島昭久=比例東京▽笠浩史=神奈川9区▽後藤祐一=神奈川16区▽福田峰之=比例南関東▽木内孝胤=比例東京▽鈴木義弘=比例北関東▽野間健=鹿児島3区▽若狭勝=東京10区▽横山博幸=比例四国
【参院】行田邦子=埼玉▽中山恭子=比例▽松沢成文=神奈川
(文=長井雄一朗/ライター)