いつも読者からの質問に回答してくれる、メルマガ『『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』』の著者で人気コンサルの永江一石さん。今回はランドセル会社を経営する方から「確実にシュリンク化する業界で生き残る方法は?」というとても難しい質問が寄せられました。この難問に対して、永江さんが出した答えとは?

確実にシュリンク化する業界で生き残る方法

Question

現在、40年続くランドセル会社、その中でもニッチな分野でのリーディングカンパニーの経営を任されています。商材はニッチながら、生産から流通、営業まですべてこなせる、業界では数少ない会社です。ランドセル業界はここ数年、少子化、シックスポケットの影響から一種のバブル状態が続いています。しかし日本の人口動態や経済情勢を考えて縮小業界。

そこで質問です。

ランドセル業界における新規商品の開発、プロモーションはいかにすればいいのでしょうか?また、同時にニッチ縮小業界の会社における新規事業開発の糸口はどのように模索すればいいと思いますか?

日本には確実にシュリンクする、しかし確実に毎年新規顧客が発生する、残存者利益のある業界が多く存在するので、ある程度一般性のある質問かと思い、質問しました。ご回答いただけますと幸いです。

永江さんからの回答

「新規事業開発の糸口」は、今までのノウハウの中にしかないんです。まったく違うところから見出そうとしても絶対失敗します。まずは、今まで蓄積した自分たちのノウハウってなんだろうと見直すところから始めてください。

その上で具体的な開発内容を考える前に、業界を取り巻く現状を見渡してみると、ランドセル業界が縮小すると捉えるこの方の危機感は正しいと思います。

ひとつの根拠は、祖父母層の貧困化です。

今でこそ「シックスポケット(1人の子どもに対し、両親+両方の祖父母という6つのポケットからお金が出る)」と言われて、孫に潤沢に資産がつぎ込まれていますが、将来祖父母枠に入ってくるはずの50代は今、まったくお金を持っていないのが現状です。これを裏付ける具体例が、下宿大学生の仕送り平均額が7万円という数字。最近の大学生の親世代といえば60代も多く、定年退職が近くてお金もないため、ガンガン仕送りができないのです。下宿大学生たちは、一人暮らしのおじさんの生活保護より少ない額でなんとか生計を立てている。結局この親たちが祖父母世代になった時、孫に出してやれるお金がないのは目に見えています。

わたしたちが小学生だった頃のおじいちゃんおばあちゃんは、65〜66歳ぐらいでした。当時の定年は55歳。退職して10年でまだ資産もあったんですね。今の小学生の祖父母は70代が多い。後期高齢者となれば医療費もかかるし、決して以前のように裕福でなく、さらにこれからは年金も減ってくるから、より一層余裕がなくなっていくでしょう。

業界縮小が予測できるもうひとつの根拠は、制服の消滅です。

子どもの通学服の自由化が進み、制服が全廃される日も遠くないと感じます。制服に近い存在であるランドセルも同様に、必要ないという学校が今後たくさん出てくるでしょう。すでに自由な校風の学校はデイパックで、小学生だったらランドセルという考え方自体が古くなるのは間違いないと思います。今は「みんなが持ってるのに自分だけ違うのはイヤ」という理由で、子ども自身がランドセルを欲しがりますが、その考え方自体もだんだん変わってくる。

「みんなが持ってるからイヤ」という時代が必ず来るはずです。

以上のことを踏まえつつ、会社が生き残る方法は2つしかないと思います。

ひとつはこの業界で特別な存在になって、他社が潰れても自社だけは生き残る方法を考えることです。つまり超高級品を作るとか、ハンドメイドにこだわるなどの方向です。時代が変化しても、ランドセルを使わなきゃいけないところは一定数残るはずで、そこで生き残るんだったら高品質化しかないでしょう。

ただそんな中でも、富裕層が求めた時の受け皿も絶対必要なわけで、金持ちのおじいちゃんおばあちゃんが、ランドセルを買う時はここしかないな、みたいに思う存在をめざすべきです。カリモクの家具みたいな、といったらお分かりいただけるでしょうか。これだけ安い家具が巷に溢れる中、それでも家具を買うならカリモク、なんて人がいますよね。そういう存在をめざすというのはあると思います。

もうひとつは、ランドセルメーカーだからわかるノウハウがあるはずで、それを元にした新商品開発をするという方法が考えられます。

例えば子どもの背中にフィットするのは、などという、子どもに関するノウハウは、一般的なバッグメーカーより多く持っているでしょう。そんなランドセルメーカーが作った「ファッショナブルな次の時代の」「何百万人の子どものデータを元に作った」「必要な容量はコレ」などという商品を作ったら、売れるのではないでしょうか。

ランドセル時代の次のランドセル。ガラケーからスマフォへの進化を彷彿とさせる、次世代の商品をめざしてみては?

ただランドセルってずっと型が変わらないもの。新たな企画を実現できるデザイナーが社内にいるかというところが、事業成功のキーになると思います。

プロモーションについては、基本的にはPR対策しかないでしょうね。

イオンと同等レベルのことができないのであれば、広告を打っても認知が広がることはないでしょう。直販しないのが前提なら、広告で認知を促すのはあまり意味がないとも思います。まあAmazonなどを利用して直販するのも良いと思いますけどね。

いわゆる販売促進にお金をかけるんだったら、ネットが良いのでは。祖父母が資金を出すとしても、子どもの意向を聞いた上で両親が「この商品買って」と祖父母に言うものだと思います。だから両親の年代に届きやすい「ネット」は効果が高いはず。例えばこの方の会社が新商品を作ったとしますよね。デザインが良く、メーカーならではのノウハウも詰まったものだとして、それをきちんとリリースすれば、ネットで評判になると思いますよ。すごく良いなコレ、やっぱりランドセルメーカーってすごいんだな、って。その評判を両親が目にしておばあちゃんに、コレ買ってよって言うのが想像できますね。

いずれにしても商品によってプロモーションの仕方は違うので、まずそれらを語る前に、商品を考えてください。商品がプロモーションに値するかどうかという問題もありますから。

今ならまだ、生き残りへの手立ては間に合うと思います。でもあと10年経って何もしていなかったらもう手遅れでしょう。実際に学生服メーカーはほぼ消滅していますからね。ランドセルが未だ残ってるのは、合理性があるから。今のうちに対策を練っておきましょう。

※記事の一部を修正いたしました。

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出典元:まぐまぐニュース!