GALNERYUSが追求する、ヘヴィメタルとしての“新しさ” 「引き出しが増えていくことが大事」

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 2015年12月リリースの前作『UNDER THE FORCE OF COURAGE』のストーリーの続きを描くコンセプトアルバム『ULTIMATE SACRIFICE』を9月27日にリリースするGALNERYUS。前作から今作にまたがった(あるいは今後も続くかもしれない)コンセプトアルバムであること。全9曲のうちのラスト2曲がいわゆる組曲状態の作りになっていること。アートワークが『スカイハイ』や『爆音列島』で知られる漫画家、盒競張肇爐僚颪下ろしであること。言うまでもなく音は、真正面から堂々とヘヴィメタル、シンフォニックメタルであること。いずれも力いっぱい時流と逆行している、なのになぜかとても新鮮に響く。楽曲を聴くと、ライブを観ると、いつも思う。なんでこのバンドにだけそれが可能なんだろう。メタルのあらゆるルールを遵守することと、つねに新しくあることをいかに両立させているのか、バンド創始者であるギターのSYUと、ボーカルのMasatoshi“SHO”Onoに訊いた。(兵庫慎司)

■「凄まじいオーラを放ってるアルバムを常に目指してる」(SYU)

ーーまず、前作から今作までの間にドラマーのメンバーチェンジがありました。

SYU:はい。2016年の4月にツアーファイナルがあったんですけど、それを最後にJun-ichiさんが脱退するということになりまして。最初は困ったけど、幸運なことにFUMIYAというすばらしい人材がいましてですね。

ーー脱退の理由も訊いてもいいですか?

SYU:仲悪くてやめたとか、そういった理由ではなくて、Jun-ichiさんは大阪に住んでいて、音楽学校の講師やドラムのレッスン、ほかのバンドとかセッションとか……コージー・パウエルみたいに、渡り鳥的にいっぱいドラムを叩いてるタイプの人なんですね。そんななかで、GALNERYUSを好きで、10年以上やってきてくれていたんですけど、バンドの活動規模が大きくなるにつれ、いろんなこととの擦り合わせが難しくなってきて、「もう限界かなあ」と……3年ぐらいそういう状態だったので。それで、仲悪くなる前に、じゃないけどーー。

Masatoshi“SHO”Ono(以下、SHO):(笑)。

SYU:しかたなく別れるというか。Jun-ichiさんはすばらしいドラマーなのですごく残念だったけど。というか、ほんとに困りましたけどね、あんなドラム叩ける人いないですし。エンジンを失ったクルマみたいなもんで。

ーーよく後任が見つかりましたね。

SYU:そうなんですよ。FUMIYAと友達になってから5〜6年経つんですけど。GALNERYUSの昔のメンバーとも一緒にバンドをやってた奴で、それで知り合って「うまいやんけ!」って衝撃を受けました。加入する前から年に1回ぐらい、一緒にスタジオに入ってセッションして遊んでたりして。彼はGALNERYUSをすごい好きやから、曲を一緒にやってみて「あ、全然叩けるやん」とかやってたなあ、ということを思い出して。引き受けてくれて本当に助かりました。

SHO:僕がGALNERYUSに加入してからは、毎年必ずアルバムを出してたんですけど、去年は初めて出さなかったんです。どうなるんだろうと思ったけど、FUMIYAくんがスッと入ってくれて。僕より17歳も若いんですよ(笑)。

ーーで、ニューアルバムなんですが。前作がコンセプトアルバムでーー。

SYU:前のアルバム『UNDER THE FORCE OF COURAGE』は、完全にストーリーがあって、そのストーリーに準じた曲が連なっていく構成で。あれを作った時からすでに、次はそのストーリーの続きのコンセプトアルバムにするって決めてたんですよね。もう、大変でしたね?(笑)。

SHO:(笑)うん。

SYU:普通のアルバムだったら、デモを作って1曲ごとに歌詞を付けて終わりですけど、ストーリーに準じて曲調まで決めないといけないし、そこに合わない曲はボツにしないといけないし。ストーリーの世界観を壊さない、全部聴いてもダレないものにしないといけない、前作と同じようなものになってはいけない……小野さんも何回も言ってますけど、いい映画がありました、でもそのパート2ってだいたいコケるよね、っていう。パート1に似ていないもので、すばらしいものを作らないといけない、というのは大変でしたね。

ーー今回のアルバムをもって完結なんですか?

SYU:まだ続くかもしれないです(笑)。ただね、こういう内容の濃いものって大好きなんですよ。映画でも2時間なら2時間すごく作り込まれていて、細部までいろんな発見があるような。ひとつひとつパーツを組み合わせて、ひとつでも欠けたらアルバムにならへんで? っていうものが好きだから。

SHO:僕も小野正利としてソロで25年やっていて、アルバムが出るっていうと取材していただくんですよ。そうするとだいたい「今回のアルバムのコンセプトは?」って訊かれるんですね。たいていの場合、正直言うと後付けです(笑)。最初に「よし、これでいくぞ」っていうのがないままに、作家の人に曲を発注したりして、それを聴いて「あ、これいいんじゃない? じゃあ曲順こうしようよ」みたいに進んでいって、できあがって聴いてみた時に、「あ、一途な感じを表してる曲が多いな、じゃあ今回は『音楽に対する自分の一途な気持ちを表すことをーー』って言おう」とか(笑)。だからコンセプトアルバムっていうのは、本来アルバムを作る上で最初にあるべき作業をしっかりやっている、っていうことなんだな、と思いました。

ーー音楽の聴かれ方、所有のされ方が昔とは変わったじゃないですか。というなかで、それでもアルバムという形態で作品を発表することの必然って何? って考えると、その答えのひとつとしてコンセプトアルバムという方法があるのかな、とも思ったんですけれども。

SYU:単品で曲を購入して聴く、とかですよね。それは僕は全然いいと思うんですよ、聴く側が選択することだと思うから。だから、作る側として、アルバムを全部聴いてほしいんだったら、1曲目から再生した時に、「あ、こりゃ最後まで止まれねえな」と思えるアルバムを作ればいい。曲を単品で売った方がいいんじゃないかと思ってしまうとすれば、それは自分たちでもアルバムだと重たいって感じている、っていうことだと思うんで。頭から最後までほんとにサラッと聴けちゃう、1時間あっという間。そこらへんは自信持って言えるかな、とは思います。僕もどっちかっつうと、アルバム通して聴くのしんどい派なんですよ。

SHO:そうだったんだ(笑)。

SYU:アルバム通して聴けるバンドは正直あまりいないし、同じアーティストの中でもまるごとツルッと聴けるアルバムなんてすごい少ないし。でもそういう、作品トータルとして凄まじいオーラを放ってるアルバムを常に目指してるところはありますね。

SHO:でも、メタルファンと言えばいいのか、GALNERYUSファンというか、そういう人たちは、こうやってアルバムをまるごと聴かないと得られない喜びがある、楽しさがあるってことを知ってくれてると思うんですよね。

SYU:メタルファンとして、メタルがすごく好きな人間として、「こんなメタルのアルバムがあったらいいよね」っていう作り方をいつもしてるんです。好きな本を読む時とか、好きな映画を観る時に似てる感じです。腰を落ち着けてその世界に浸る、っていう。たとえば続きものの海外ドラマとか、1話観たら絶対2話が気になる、っていうのはその作品がおもしろい証拠じゃないですか。そういうおもしろい海外ドラマのように、「続きを聴きたい!」ってなるようなアルバムにしたいですよね。聴く必然性を生みたい。

■「メタルを歌ってるという意識じゃなく歌ってる曲もある」(SHO)

ーーGALNERYUSのやっているスタイルーーいわゆるシンフォニックメタルって、ギターもリズムも曲の構成も「こうじゃなきゃいけない」っていうポイントがいっぱいあって、それを全部クリアして曲にしなきゃいけないじゃないですか。

SYU・SHO:はい。

ーーでも前と同じじゃダメなわけじゃないですか。

SYU:ほんとそうですね。

ーー全部クリアして「今回も一緒か」にならないためには、どうすればいいんですか。

SYU:いやあもう、難しい。いちばん難しい課題ですね(笑)。毎回「このアルバムで全部出しきっちゃった、次どうしよう」って思うんですよ。でもなんとかこうして新しいアルバムが生まれてきたっていうのは、どういうことかというと……もう、考えるしかない。とにかく考えるしかない。パソコンの前で何もしない、ただ頭だけが回転してる時間が、もうほんと長いですよ。たとえばデモを制作する時間を2日とってるとして、その間がほとんど何もやってない時間です。ただパソコンの前に座って「これダメだ」「これいいかもしれない」って。ネタさえあれば1〜2時間で終わる作業が、なんにも進まない。それは、「これは前やった」とか「これは前開けた引き出しとおんなじや」とか、もうけっこうなリリースをさせてもらってるから、やっぱりあるんですね。曲の構成にしても、「これ燃える展開やんけ!」って思って作ってみたら、「あ、前の曲と一緒やった」とか(笑)。ただ、音楽って世界中にあるものだから。メタルの枠内、それから自分って枠内で考えると、まだ残っているやれることは少なくなってるように感じちゃうけど、もっと広い視野で音楽に接していれば、違うジャンル、たとえばラップからインスパイアされることもあるし。そうやって自分の引き出しが増えていくことが大事やと僕は思ってるから。特にボーカルのメロディが僕たちにとってはいちばん大事なんですよね。本当に名曲って言われてる曲って、歌がいちばんいいわけじゃないですか。

SHO:まあヘヴィメタルでも、ポップスでも……わかりやすいところで言うと、「Smoke on the water」(Deep Purple)って曲知ってる? って言われると、たいていの人はイントロのあのリフを口ずさむじゃないですか。そういうリフを作る才能も、SYUくんはギタリストとしてすごくあるんですけど、僕が想像するに「GALNERYUSのあの曲知ってる?」って言われたら、サビを口ずさむ人もけっこういるんじゃないかと思うんですよ。それがGALNERYUSの魅力のひとつで、強さのひとつで……まあそれを歌ってる自分が言うのはナンですけど。

ーー確かに、頭の中で曲を思い出そうとすると、Led ZeppelinでもDeep PurpleでもRainbowでも最初にギターリフが出てきますね。

SHO:そうですよね? 歌メロ以外のインパクトのあるとこで覚えてますけど、GALNERYUSは歌メロでコミュニケーションが取れるんじゃないかと思います。

SYU:僕の作曲方法はメタルっぽくないのかもしれないですね。リフももちろん大事なんですけど、それは二の次で。だから、ギタリストとしてとかリフメーカーとして評価されたいとは全然思わなくて。どっちかというと、トータルの作曲者として評価されていきたい。たとえばメタルのアレンジじゃなくても成立する曲を書きたい、自分がいなくても、小野さんの歌とYUHKIさんのピアノだけでも表現できる曲じゃないといけない、と思うので。

SHO:ドキドキしますけどね、それだと(笑)。だから僕、GALNERYUSは曲によっては、メタルを歌ってるという意識じゃなく歌ってる曲もあるんですよね。バンドに加入したばっかりの頃は、バラードの曲なんかを歌ってると、「なんかこれ、ポップス歌ってる時の俺になっちゃってるけどいいのかなあ?」って。でも「いや、そのまま小野正利でいいんです」って言われて。

SYU:小野さんってやっぱりハイトーンがすごくいいっていうふうに言われるじゃないですか? 確かにそうなんですけど、ただ、このアルバムだと6曲目の「WHEREVER YOU ARE」で聴けるような、ちょっとキーを落として色っぽく歌うような部分も、ものすごく魅力的なんですね。すげえ人とやってるんだなって。出そうと思って出る声じゃないからね。このダイナミクスがあるボーカリストって本当に稀だな、と今回も改めて思いましたね。

(取材・文=兵庫慎司)