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 欧州最大のLCC、ライアン航空が10月31日まで凡そ2000便のフライトをキャンセルすることについて、スペインでも報道メディアの主要テーマの一つになっている。何しろ、そのキャンセル予定の内のおよそ500便がスペインが始発になっているからである。

 英国で行われる娘の結婚式に参加するために予約していた往復便のフライトがキャンセルされた夫婦は電子紙『20minutos』の取材に、<「私は非常に憤慨している。ライアン航空とはもう二度とこのようなことが我々に起ることはない」>といって、ライアン航空を利用することは今後一切ないという拒絶反応を示し、<「主人はホテルの予約からレストランの手配など全てやっていたのに」>と同航空に痛烈な批判をしている。(参照:「20minutos」)

 2000便のフライトのキャンセルする理由としてライアン航空のオレアリー社長はパイロットに休暇を与えることに計画性が欠けていたのを理由としたが、その後の報道メディアの調査でライバルのノルウェジアン航空がライアン航空から140人のパイロットを引き抜いたのが今回の多数のフライトのキャンセルに繋がったと明らかにされたのは既報の通り。

 しかし、ことはもっと深刻であった。

 4050人のパイロットを抱えるライアン航空が140人のパイロットの不足で2000便をキャンセルするということは充分な説得力に欠けるとして、スペインの報道メディアも更に調査追及したところ、新たな事実が判明したのだ。

 なんと、つい最近までの1年間に700人のパイロットが他社に移っていたというのである。これはアイルランドの航空パイロット連盟(IALPA)のデーターをもとにしたものだ。しかも、これに加えて、更に40人のパイロットがノルウェジアン航空に近く移る予定になっているという。(参照:「El Independiente」)

 もはや、ライアン航空を辞めるパイロットが多過ぎて、経営者側では新たにそれを補充することが追い付かなくなってしまい、今回の2000便のフライトキャンセルに繋がったのである。

 同社CEOのマイケル・オレアリー氏は、来年5月から6月までに新たに600人のパイロットを雇用すると明言している。しかし、待遇の悪さが大量離職の要因であるため、パイロットの確保は容易ではないと見られている。

◆相変わらずブラックな労働環境

 深刻なパイロット不足で、ライアン航空の経営者側は機長と副操縦士に対し<休暇を10日間返上して勤務すれば機長に1万2000ユーロ(156万円)、副操縦士に6000ユーロ(78万円)の特別手当を支給する>としたが、当然ながらパイロット側は<通常の勤務時に稼ぐ給与と大差がない>としてそれを却下している。(参照:「Expansion」)

 それに対して、ライアン航空CEOは、<「現行の契約条件からだと、会社側はパイロットに支給している4週間の休暇の最後の週を無効にできる権利が付与されている。そして、それを来年1月に回すということが出来るようになっている」>とコメントしたという。すなわち、パイロットが反対しようがしまいが会社側では彼らの休暇を返上させて勤務に就かせることができるといっているのである。同社がどうしようもなくブラック企業だということを実によく表している。

 また、待遇面以外でもパイロットの不満はあがっている。たとえば、大半のパイロットが自営業者として契約されているということだ。すなわち、本人が病気になれば医者料はパイロットの負担になる。また社会保障費の支払いもパイロットが自分で負担せねばならないということなのである。経営者側では彼らに給与を支払うだけが義務で、社員に代わって会社側が負担する費用はないということなのである。