米アリゾナ州とネバダ州の州境を流れるコロラド川に設置されたフーバーダム(2014年4月13日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】物干しの洗濯物が乾いたり雲に雨水が供給されたりする過程で起こる「蒸発」に膨大なクリーンエネルギーを生み出す可能性があると示唆する研究結果が26日、発表された。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された研究論文によると、この自然現象である蒸発を利用すれば、米国内の既存の湖や貯水池の水面上で最大325ギガワットの電力を発電できるという。この電力は2015年の米国の発電量の約70%に相当する。

 唯一の問題点は、このエネルギーを採取するための技術がまだ存在しないことだ。

 論文の共同執筆者で、米コロンビア大学(Columbia University)のオズギュル・サヒン(Ozgur Sahin)氏は、AFPの取材に「このエネルギーを採取するには、空気と水の境界面に設置する装置が必要になると考えられる」と語る。

「湖や池などから出てくる水蒸気は、大気に到達する前に最初にこの装置に入る(必要がある)」と説明し、まずこの技術を開発しなければならないとした。

 サヒン氏とチームによる今回の研究は、水が気体(水蒸気)に変わるプロセスである蒸発の潜在的なエネルギー生成能力のモデルに基づくものだ。

 研究チームは、湿度、風速、気温などが蒸発速度に及ぼす影響を調べるとともに、蒸発によって生成されるエネルギーを採取する装置を利用できるものと仮定した。

 その上で、米国内にある面積10万平方メートルを上回る水塊からの潜在蒸発量を算出した。五大湖は対象から除外された。

■胞子で発電?

 エネルギーを採取する装置は、細菌胞子の自然作用に基づく仕組みになる可能性があるという。細菌が過酷な環境状態に応じて形成する微小構造体の胞子は、環境状態が改善されてから新たな細菌を生じさせるために干ばつや凍結を生き抜くことができる。

「胞子は湿度が高いと水分を吸収して膨張し、湿度が低いと水分を放出して縮小する。この過程で、胞子は筋肉のように振る舞う」と、サヒン氏は説明した。

 理論上は、蒸発が起きている間など、湿度の変化に応じてエネルギーを生成する材料に胞子を組み込むことが可能だ。

 サヒン氏は、「胞子を組み込んだ概念実証装置はすでに完成している。装置を水面の真上に設置すれば、電気エネルギーが生成される」と話す。

「装置は胞子を塗布処理した薄い帯状のビニールテープを内蔵しており、このテープが湿度の変化に伴って伸び縮みする」としながら、テープの移動端を発電機に接続して電気を生み出す仕組みについて説明した。

 ダムや湖それ自体は、発電を必要な時にだけ実行できるように、太陽の熱を蓄えておくために利用できると、研究チームは指摘している。また、タービンやソーラーパネルは風や日光がないと発電できないが、こうしたエネルギーの「間欠性」の問題に対して、蓄熱性に非常に優れた水が解決策をもたらす可能性があるともした。

 蒸発から取り出すエネルギーを分配するには、配電網に近いことが不可欠と考えられると、研究チームは続けている。しかし、水力発電に使用されている貯水池は、すでにこれに適した場所にある。

 今回の成果については、蒸発をエネルギーに変える技術に関するさらなる研究の正当性を裏づけるものとしている。
【翻訳編集】AFPBB News