ジュビロ磐田のアダイウトン。Jリーグで圧巻の突破力を見せている【写真:Getty Images】

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破壊力のある突破。相手DFに与える脅威

 9月23日、明治安田生命J1リーグ第27節が行われ、ジュビロ磐田は大宮アルディージャに2-1で勝利した。ここ最近好パフォーマンスを見せている磐田FWのアダイウトンは、ゴールこそなかったものの、試合後に中村俊輔がその潜在能力を絶賛。スタメン落ちを経験することもあったが、天才レフティーとの出会いもあった2017年は、ブラジル人アタッカーにとってキャリアのターニングポイントとなりそうだ。(取材・文:青木務)

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 明治安田生命J1リーグ第27節、ジュビロ磐田はホームで大宮アルディージャと対戦し、2-1で逃げ切った。3試合ぶりに勝ち点3を獲得し、6位をキープ。5位の横浜F・マリノスに2ポイント差と迫り、再び射程圏内に捉えた。

 複数のマークをものともせず、水を得た魚のように守備網を“破壊”する。自身は無得点に終わったが、その積極果敢な姿勢は勝利を手繰り寄せる原動力となった。アダイウトンは、相手に大きなダメージを与えている。

 ブラジル人アタッカーのここ最近のパフォーマンスには、中村俊輔さえも舌を巻く。

 試合開始早々の5分にクロスを右足で合わせると、2点リードで迎えた43分にも持ち味を発揮する。ディフェンダーを背負った状態で浮き球を受けると、相手の逆を取るトラップからのターンで一気に加速。左サイドからそのままゴール前へ突進し、シュートを放った。62分には、右サイドで1対2の状況を作られるも構わず勝負を選択する。茨田陽生と大屋翼の間をすり抜けて中央へ持ち込み、追いすがる大屋にバランスを崩されながらも左足を振り抜いた。

 いずれもゴールネットを揺らすには至っていない。しかし、敵陣でアクションを起こすアダウトンの存在は、相手にとって厄介なものだったに違いない。彼がボールを持ち決然と前へ進む時、必ずと言っていいほどフィニッシュに繋がった。

 北海道コンサドーレ札幌戦、浦和レッズ戦と勝利を逃がした2試合でも自身のコンディションは悪くなかった。札幌ドームでの一戦ではPKを誘発する突破を見せ、台風18号の影響が心配されながら雨も降らなかったエコパスタジアムでのゲームも、終盤にやはり相手2人の間を突破し、決定的なラストパスを供給している。

 そしてヤマハスタジアムでは、昨年一緒にJ1復帰を果たした好敵手を蹂躙した。

 大宮の伊藤彰監督は試合後、「前半は受け身になったところがあり、ゼロで抑えたいというゲームプランだったが、中村俊輔選手のFKでやられてしまった」と振り返った。また「中村選手がトップ下から降りてゲームをコントロールして、そこに我々は行きたかったが、プレッシャーを外された」とも述べ、相手エースに仕事をさせてしまったことを悔やんだ。

 一方、中村俊輔はアダイウトンに言及した。

アダイウトンのプレーに「光」を見出す中村俊輔

 前節の浦和戦、磐田はCBにプレスをかけられず、遠藤航に精度の高いフィードを許した。自分たちがボールを持っても攻撃のスピードが上がらず、手間をかけた分だけボールロストも増えていた。中村俊輔にも、らしくない奪われ方があった。

 その点で大宮戦は、シンプルにプレーするところと時間を作るところのバランスに改善が見られた。そのことについてレフティーに質問を投げかけると、こう返ってきた。

「まあ相手とのバランスやフォーメーションもあるし、どっちかというと反省の方が大きいかな。やっぱり2点差って怖いなと。足がどうしても止まってしまうし、(失点が)後半の最初だったから。そこから向こうのエンジンがあまり上がらなかったから良かったけど、上位のチームにはやられていたと思う」

 自身の持つJ1最多直接FKゴールを24点に更新したことには満足せず、薄氷の勝利だったとの見解を示す。そして、少しの間を置いて続けた。

「アダが一人でいいサッカーをするのか、守りつつアダの良さを出すのか。その2つが単純に明確になっている」

 反省点がある中でも、アダイウトンのプレーには光を見出している。その口ぶりには『驚き』が含まれる。

「アダに最後言ったけど、(ドリブルの時に)下を向いちゃう。斜めに俺とか川又(堅碁)も動いているんだけど。それでも、後ろから見ていてもあれだけキープできつつ相手のゾーンまで一人で持っていくのは、なかなかいない。ああいうようなシチュエーションをチームで作っているという部分では、それも一つの戦術なのかなと」

「ヨーロッパでもあんまり見たことない」(中村俊輔)

 ここで背番号15がミックスゾーンに現れる。選手バスへ向かう彼の後ろ姿を見た中村俊輔は、こう言って笑顔を浮かべた。

「ふくらはぎはあんなに細いのに、上半身は大きい。わからないね。ヨーロッパでもあんまり見たことない」

 世界を渡り歩き様々な選手とプレーしてきた男は、磐田で伸び伸びとプレーするアダイウトンの底知れぬポテンシャルを計りかねているようだった。

「自分の好きなように、前に行くんだったら行ってという風にさせた方がいい。型にはめようとすると多分、動きづらいと思うから。面白いね」

 自由にピッチを駆ける姿を見守る中村俊輔だが、守備に関しては指示を飛ばすことをやめない。

「口うるさく言っているからムカついているだろうけど」。そう思いながらも言い続けるのには理由がある。「彼の良さは前でプレーすることだけど、良さを出すために戻らないといけない」と説いたのは一度や二度ではない。

『スタートポジションに戻って守備をしよう』

 磐田の攻撃陣は1トップ2シャドーが基本的な形だが、中村俊輔は逆サイドからでも声を張り上げ、腕を大きく振ってブラジル人アタッカーにいるべき場所を提示する。

 アダイウトンもそうした助言にしっかりと耳を傾ける。「ハードワーク」や「犠牲心」という言葉をよく用いる男は、自身の特徴を最大限発揮する術を教えてくれる人の存在に感謝している。

「俊輔さんからはもちろん、みんなからも守備のポジショニングについてよく言われる。後ろから出て行くように、と名波さんからも言われている。それが正解だなと自分でも思うし、後ろから出て行くことで相手の裏を取りやすくなる。その質をもっと高めていきたい」

「ベストのタイミングで彼(中村俊輔)に出会うことができた」

 アダイウトンは自身に元々宿るフォアザチームの姿勢に、周囲から求められる献身を肉付けしながら戦えるようになった。そして、前を向いて相手ゴールへ突進したら簡単には止まらない。チームのために守備に戻り、チームのために攻撃に迫力をもたらしている。

 ピッチの上を躍動するアタッカーの姿を見るにつけ、天才レフティーにも新たな発見があるのだろう。自由で、驚異的とも言えるプレーを称賛するだけでなく、やるべき仕事を叩き込む。そうした働きかけによって、アダイウトンが化けていくのを楽しみにしているようにも見える。

 日本で成長を続ける26歳のブラジル人にとって、中村俊輔との出会いは大きな幸運だ。

「経験豊富な選手に褒めてもらうのは素直に嬉しい。それによって、自分もまた一段階レベルアップできると思う。俊輔さんから非常によくコミュニケーションを取ってくれるし、本当に器の大きい人で自分にとって偉大な存在。自分のキャリアの中でベストのタイミングで彼に出会うことができたと思っている」

 来日3年目の今シーズンは、アダイウトンのサッカー人生において重要な意味を持つ。一時はスタメン落ちも経験したが今では主力に返り咲いており、チームの力になろうと日々全力を尽くしている。

 選手としてのピークはこれから訪れる。中村俊輔をも唸らせる潜在能力の持ち主は、今後どのような成長曲線を描いていくのだろうか。

(取材・文:青木務)

text by 青木務