夏ドラマ、SNSの反響狙いで過激展開が続出 今後のヒントは『過保護のカホコ』にアリ?

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 一部の深夜ドラマを除いて、主な夏ドラマが終了した。在宅率の低い時期ということもあり、視聴率の面では名作続編の『コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)を除いて軒並み苦戦。しかし、『過保護のカホコ』(日本テレビ系)、『僕たちがやりました』(フジテレビ系)のように熱狂的なファンを集めた作品もあった。

参考:『過保護のカホコ』が熱狂的なファンを生んだ理由 遊川和彦と岡田惠和が描く“純愛”の違い

 全作の全話を見終えた今、頭をよぎるのは、「強引と紙一重の過激な展開が目立った」こと。

■往年のジェットコースタードラマを彷彿

 『コード・ブルー』は、前シリーズ以上にドクター本人たちが深刻なアクシデントに襲われ続けた。「むしろ患者よりも深刻なものが多かった」という印象。

 『僕たちがやりました』は、暴力、爆破、逃亡、濡れ場などのシーンが連続。主人公や親友が屋上から飛び降りるシーンもあった。

 『カンナさーん!』(TBS系)は、夫の不倫や仕事上のトラブルなど、ヒロインが災難続き。どん底でも明るく生きるヒロインを見せるために、極端な展開が多かった。

 『わにとかげぎす』(TBS系)は、主人公がヤクザや闇金に追われ、窃盗や殺人にも巻き込まれた。そもそも、普通の人間が一人も登場しないため、必然的に過激な展開になる。

 『ウツボカズラの夢』(フジテレビ系)は、ほとんどの登場人物が裏切りや悪事を働いていた。童顔の志田未来をはじめ、不倫のシーンも続出。

 『ごめん、愛してる』(TBS系)は、韓流原作らしく激しいシーンばかり。銃で撃たれ、病気に苦しみ、人を罵倒し、ボコボコに殴るなど、Vシネにも近い描写が多かった。

 『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)は、殺人の罪を隠す主人公に、衝撃的な展開が続出。死体を掘り起こされ、遺体の一部が送りつけられるなどの脅迫が続いた。

 1990年代、『もう誰も愛さない』(フジテレビ系)を筆頭に、上下動の大きい展開で魅了する“ジェットコースタードラマ”が人気を集めていた。今夏は当時を思い起こさせるジェットコースターのような作品が多かったのは間違いないだろう。

 その狙いは、視聴率対策であり、SNSでの反響狙い。過激な展開は、例年苦戦している夏ドラマの視聴率を獲るための対策であり、「事件やアクシデントが頻発する作品は、SNSの動きが活発になる」という近年の傾向を利用したものだ。

 その点、今夏のドラマは、視聴者を「ハラハラドキドキさせて飽きさせない」「連ドラらしく続きが気になる」と思わせた点では、一定の成功を収めたと言えるだろう。

 ただ、「序盤から過激な展開を続けると、中盤から終盤にかけて息切れしてしまう」というデメリットもあり、実際トーンダウンしていった作品も見られた。視聴者は少しずつ刺激に慣れていく。それだけに、「もっともっと……」と高まる期待感を満たせるのか、上がりに上がった最終回のハードルを越えられるのか。あらためて難しさを感じたスタッフとキャストは少なくないはずだ。

■過激な展開の第一人者・遊川和彦が方向転換

 スマホやパソコンをさわりながらの“ながら見”が当たり前の今、わかりやすい過激な展開が増えるのは、ある程度仕方がないだろう。しかし、過激な展開に頼るあまり、心理描写が省かれがちなのは心配だ。登場人物のセリフはリアクションや説明的なものが増え、騒々しいシーンが続くばかりでは、徐々にドラマフリークほど地上波から離れ、CSや動画配信サービスに流れていくのではないか。

 もともと地上波の作品には、コンプライアンスやスポンサー対応などの問題があり、過激な展開と言っても限度がある。それだけに、今後もこの路線を続けていくのは難しいのではないか。

 その意味で一つ見逃せないのは、『女王の教室』『家政婦のミタ』(日本テレビ系)などを手がけ、過激な展開を得意としてきた脚本家・遊川和彦の『過保護のカホコ』(日本テレビ系)が、むしろ真逆のベクトルだったこと。同作は、終始のんびりとした展開で登場人物の心理を丁寧に描き、視聴者に癒しを感じさせながら、最終回の大団円につなげていた。つまり、「過激な展開はなくても、視聴者の支持を集められる」という今後のヒントが潜んでいる。

 もしかしたら、「夏らしく豪快な作品が多かっただけ」なのかもしれない。10月からは秋らしく繊細な心理描写に力を入れた作品が増えてほしいと思っている。

■木村隆志コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間20数本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。