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2018年春にJR新潟駅の在来線ホームの一部を高架化し、上越新幹線「とき」「Maxとき」と在来線特急「いなほ」の同一ホーム乗換えが実現する。これはとても便利だ。しかし、新潟日報の9月26日の記事によると、新潟駅の在来線ホーム高架化を理由に、JR東日本は「SLばんえつ物語」の新潟駅乗入れを終了する方針だという。新潟市長は新潟駅乗入れ継続を要望していると報じられた。

新潟市は、新潟県・JR東日本と協議の上、2007年から新潟駅付近のJR在来線2.5kmについて連続立体交差事業を進めている。新潟駅周辺は地上の線路と駅設備によって南北方向を分断されている。歩行者の通行は6カ所、自動車の通行は駅の西側の踏切2カ所と跨線橋1カ所のみ。毎日新聞の3月2日の報道によると、踏切は2カ所とも1日平均の閉鎖時間の合計が約2時間。踏切通行時の一時停止義務の影響で、慢性的な渋滞になっていたという。立体交差事業が完成すると、歩行者の通行は15カ所、自動車の通行は11カ所に増える。

一方、新潟駅は在来線側にある万代口駅舎が半世紀以上前の建築で老朽化しており、建替えの必要に迫られていた。上越新幹線側の南口に比べると、万代口は駅前広場が狭く、路線バスの通行に支障が多かった。南口は北側の中心街へ行きにくいため、整備された後も開発があまり進んでいない。そこで、南北分断解消による往来の活性化、高架下を含めた交通広場の設置、新潟市が推進するBRT路線網の核として、新潟駅改良も含めた連続立体交差事業がはじまった。

事業完了後の新潟駅在来線ホームは上越新幹線ホームに並ぶ形となる。上越新幹線の11番線ホームの向かい側に、線路を挟む形で島式ホームを設置。片側を在来線ホームとして、上越新幹線と在来線の列車を同一ホームで乗換え可能にする案が採用された。東京方面から上越新幹線「とき」「Maxとき」で新潟駅に到着すると、同一ホームで在来線特急「いなほ」に乗り換えることができ、酒田・秋田方面へ行ける。

これは便利になるな……と思ったら、思わぬところで支障が出た。JR東日本が「SLばんえつ物語が新しい高架プラットホームには乗り入れできない」と言い出した。理由はおもに2つ。蒸気機関車は立体交差の高架線へ向かう急勾配での負担が大きく、老朽化した車体では難しい。また、新プラットホームは大屋根で覆われており、煙の逃げ場がなく充満するという。そのため、2018年春に高架ホームを使用開始した場合、「SLばんえつ物語」は新潟駅に到達せず、新津駅折返しとする。

ところで、在来線ホームの高架化は3段階で行われている。2012年の段階で在来線のホーム1本を撤去し、5〜7番のりばを廃止した。代替用として、1番のりばの東側に仮設ホームをつくり、8・9番のりばを設置した。

2018年度はさらにホーム2本を撤去し、旧5〜7番のりばの上に高架ホーム2〜5番のりばを新設。地上には1番のりば、8・9番のりばが残される。2021年に地上ホームはすべて撤去され、高架ホーム1番のりばが作られ、高架化工事完成となる。

この流れを見ると、「SLばんえつ物語」は2021年の切替えギリギリまで1・8・9番のりばを使えば良いような気がする。しかしこれもダメ。なぜかというと、1番のりばは越後線など定期列車が発着しているため、使いにくい。8・9番のりばは頭端式ホームで、用地の制約があり7両編成までしか対応しなかった。「SLばんえつ物語」は客車7両と蒸気機関車1両。惜しい。1両分足りない。

さらに、新潟駅では回送用に電気機関車を連結する。新潟発の「SLばんえつ物語」が入線するときは、電気機関車を先頭にして逆向きに入ってくる。新潟駅到着後の「SLばんえつ物語」も、後部に電気機関車を連結して逆向きに回送される。この電気機関車が待機する場所も高架化工事で使えない。では客車を2両減らすか? となれば、これは売上げに影響する。儲からない列車になってしまい、運行する意味がない。

そこで、JR東日本は「SLばんえつ物語」の新潟駅入線をあきらめ、新津駅発着と決めた。もともと「SLばんえつ物語」は新津駅発着で運行を開始し、イベント時の新潟駅乗入れを経て新潟駅発着となった。これは上越新幹線との乗換えを考慮したからだ。つまり、JR東日本だって「SLばんえつ物語」は新潟駅発着が良いと思っている。新津駅発着は発足時の振り出しに戻る。苦渋の決断だったはず。

これに対して、新潟市長の篠田昭氏は「SLばんえつ物語」の新潟駅発着を諦めていない。新潟日報では、「物理的に登れないことはないと思う。高架を登るときだけ他の車両で押し上げていくことも可能」とコメントしていた。おそらく、新潟駅から回送されるときの電気機関車の連結を想定していると思われる。

それはJR東日本も先刻承知ではないか、と筆者は考える。回送時は電気機関車だけが牽いているわけで、蒸気機関車は動力を使わない。しかし、新津駅で後部に電気機関車を連結して押し上げるとなると、蒸気機関車と電気機関車の連係動作が必要だ。電気機関車同士、電車同士なら「総括制御」というしくみを使って、運転士1人で操作できる。蒸気機関車と電気機関車の場合は、かつて蒸気機関車同士が連携したように、互いの運転士が汽笛や無線の合図で加速・減速を合わせる必要がある。

煙対策も兼ねて、蒸気機関車を稼働させず、電気機関車のみで押していく方法もある。かつて、上野発の寝台特急が実施していたような推進運転となる。これは速度が制限される。また、素人考えだけど、軽い客車の先に重い蒸気機関車という構成では、推していくときのバランスの面でも心配だ。JR東日本もその可能性は検討しただろう。

9月25日、筆者は都内で市長にこの件を伺う機会を得た。篠田氏は「毎回でなくても良いんです。イベントなどで年に1回でも2回でもやっていただけたら」と言う。もちろんそこには、年に1度、できたら2度、3度、いずれ毎回、という心づもりもあるだろう。

「蒸気機関車が煙を出さなくてもいい。なんとか高架ホームに入ってこないかと……」

新潟駅接続に関しては、「SLばんえつ物語」を新津駅発着にしたとしても、新津〜新潟間のリレー号を工夫して楽しい演出をしてはどうか。新津鉄道資料館にも立ち寄れて、また新たな魅力のあるコースになりそうだ。そんな筆者の考えを伝えると、「それもアリですよ。ちょっと時間をずらして、新津周辺の探索時間も用意してあげたい」

「でもね、杉山さん」と、ここで篠田氏はとどめのひと言を放った。「最新型の新幹線車両と蒸気機関車が、同じプラットホームで並ぶ姿を観たいと思いませんか」

それはすごい光景だ。SL列車が各地で誕生し競争する中で、最も強い魅力となる。

「み、観たいです!」

JR東日本さん、なんとかなりませんか。