「Thinkstock」より

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●相次ぐチケット転売の逮捕は、社会への見せしめか?

 チケットの高額転売に関する逮捕者が相次いでいる。今年に入り、少なくともEXILEやサカナクション、嵐などのコンサートチケットを転売目的で購入した者が検挙されている。9月には、関ジャニ∞のチケット転売詐欺で誤認逮捕され、19日間にわたって勾留されるという事件まで起きている。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、チケット高額転売を規制する法整備の検討が始まったとの報道も出ているが、政府の力の入れようは尋常ではない。

 そこでチケット流通をめぐり、日本では今何が起きているのか、改めてここで検証してみたい。

●チケット流通業界は1次vs.2次の対立が勃発

 チケット流通では、昔からいわゆるダフ屋にまつわる高額転売が問題とされてきた。しかし近年、ネットサービスの整備により2次流通の市場が急速に拡大。約7割の2次流通市場を占める「チケットキャンプ」が2015年に大々的にテレビCMを打ち出したことで、1次流通と2次流通の対立が表面化し、16年8月には4業界団体主導の下、116組の国内アーティストと24の国内音楽イベントも参加した、「チケット高額転売取引問題の防止」を求める新聞の全面広告が掲載された。この意見広告をきっかけに、チケットの高額転売が社会的な問題として位置づけられるようになった。

●チケット流通の問題はどこにあるのか?

 チケット流通には、そもそもどのような問題があるのか。チケットの高額転売が生まれる背景を軸に、チケットの1次流通と2次流通の問題点を明らかにしていく。

 まず、1次流通においては、チケット転売が生まれる土壌があり、運営者の姿勢にも問題が散見される。一般的に、消費者は「確実にチケットを獲得したい」「もっといい席のチケットを獲得したい」と願うものであり、チケットの価格が定額であればあるほど、過剰な申し込みを消費者が行い、結果的にひとりで複数のチケットに当選するという事態を招くことが容易に想像できる。また、多くのチケットが購入後の変更やキャンセルができないことから、結果的に転売を招くことにつながる。

 チケット入手を確実にするために、スポーツチームやミュージシャンなどのファンクラブに加入する人も多いが、収益のために目をつぶり、厳格な本人確認はせず、実質的に複数名義でのファンクラブ加入を放置しているとも聞く。

 次に、2次流通においては、チケットの高額転売に対する規制の甘さが指摘できる。行き過ぎた高額転売の存在は、2次流通という確実な転売の場があるからこそ起こる問題であり、健全性を欠く高額な設定や、チケットを買い占めて儲けを得る、いわゆる不当な「転売屋」に対してはその常習性から厳しく制限をかけてしかるべきである。犯罪の温床につながるとの指摘もある以上、業者は我関せずの姿勢ではいられず、ガイドラインの設定は必要だと考える。

●エンターテイメント先進国アメリカでの取り組み

 エンターテイメント先進国であるアメリカでも当初、日本と同様のチケット流通問題が取り沙汰されていた。しかし、今日では1次流通と2次流通がお互いの情報を提供し合い、ダイナミック・プライシング(需給状況に応じて価格を変動させる)という柔軟な価格制度を導入し、需要と供給のギャップを埋めている。

 チケット価格はきめ細かく分けられ、スポーツ観戦チケットであれば、天候や試合の価値(大記録がかかった試合やスター選手の出場有無など)により価格が変動し、供給過多であれば額面割れが起こる2次流通でも相互補完により、業界一体となってマーケットを形成している。

●エンタメ業界のグローバル化を目指して

 日本では、20年の東京オリンピック・パラリンピックだけでなく、19年のラグビーのワールドカップ、21年の水泳世界選手権大会も控えている。エンターテイメントのグローバル化を図る上でも消費者ニーズが汲み取れるように、業界全体の問題として捉え、1次流通と2次流通を対立軸ではなく、それぞれが有する情報を補完し合い、相互効果に基づくマーケットの活性化によって、音楽やスポーツをはじめとしたエンターテイメント業界の発展につなげるべきではないだろうか。

 各関係者が消費者視点のもとに、業界の利権にとらわれず、健全なチケット流通の取り組みに向け、1次流通と2次流通の関係者の腹を割った話し合いが行われることを期待したい。
(文=編集部)