「Thinkstock」より

写真拡大

 SNSの普及により“一人一メディア”の様相を呈している昨今、Twitterなどで自分の日常や時事的なニュース・社会問題などに対する持論や感想を投稿し、耳目を集めようとする人もいる。だが、これらの人のなかには、投稿した内容が世間から反感を買い“炎上”してしまうケースも少なくない。著名人もその例外ではなく、意図的に批判を浴びる所謂“炎上商法”をウリにするタレントや国会議員まで現れる始末だ。

 一般人はともかく、有名人であれば炎上することによって、自らの活動に支障をきたす可能性も高い。それにもかかわらず、なぜ彼らは炎上商法を行うのだろうか。立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に、マーケティング的視点からの見解を聞いた。

●「いいね」の反対は「炎上」なのか

「まず、第一に考えたいのは『いいね』の反対は『炎上』なのかということです。一般的に、『いいね』が欲しいという心理には、世間や周囲から認められたいという気持ちが働いています。では『いいね』がもらえない場合に、そういう人たちが一番恐れているのは何でしょうか。それは、世間からの無視、ネット用語でいうところの“スルー”されることなのです」(有馬氏)

「愛の反対は憎しみではなく無関心」という言葉があるが、ネットの世界でもそれは例外ではないようだ。

「当然、好感を持たれるほうが反感を買うよりも好ましいと誰もが思うでしょう。ですが、相手にされないくらいなら、たとえ炎上やバッシングを受けるリスクを負ってでも、自分をアピールしたいと考える人々もいるわけです。役者の世界の場合、エキストラよりも悪役のほうが観る人の記憶に残りますよね。それと重ねあわせているのではないでしょうか」(同)

●炎上商法の効果は期間限定

 であれば、知名度や話題性が武器になるタレントの場合は、炎上商法はある程度効果的なようにも思える。

「確かに、タレントなら炎上という話題性は、世間から面白がられて需要が飛躍的に上がり、一時期は仕事を増やせるかもしれません。ですが、そのような売り方は必ず世間から飽きられてしまうものです。これは、企業の商品に置き換えて考えてみると分かりやすいかもしれません。例えば、ロングセラー商品の変わり種フレーバーで話題を集めた『ガリガリ君コーンポタージュ味』や『ペプシコーラあずき味』は、そのほとんどが期間限定での販売でしたよね。変わり種商品は怖いもの見たさで手に取る消費者は多いのですが、リピーターの獲得にはなかなか至りません。つまり、世間からの好奇の目を利用してテレビなどに出演するタレントも、短期間で集中的に売る“期間限定商品”のようなものなのです」(同)

●スルー&炎上させないPRとは?

 たしかに炎上タレントや国会議員も、メディアに消費されるだけの存在なのかもしれない。だが、炎上商法に近いかたちで知名度を上げて、そのまま芸能界で生き残っている例もなくはない。これと同様に、企業も炎上商法によって効果的にプロモーションすることは可能なのだろうか。

「現代のような情報過多の時代に、炎上する可能性のある過激さを含んだメッセージは、マスコミに取り上げられやすいというメリットはあります。ですが、やはりこれも炎上タレントと同様に、長期的には信用を失う可能性が高く、うまくやらなければただのマイナスプロモーションになってしまいます。ただ、なかには機転を利かせて話題性をプラスに転換させることに成功している企業もあります」(同)

 それが最近話題になったカザフスタンの旅行会社のCMだ。

「その企業は最初に女性蔑視とも取れるCMを公開し、炎上したらその翌日に今度はそのCMの男性バージョンを公開するというユニークな対応をしました。すると、世間の声は非難から関心へと変わったのです。このように、世間の反応を予測して世界中に自社をPRできる可能性もあります。無難なCMをしていても知覚されるのが困難な時代ですから、今後日本でもこのケースをモデルとしたプロモーションを展開する企業が出てくるかもしれません」(同)

 今、ドン・キホーテの公式Twitterアカウントで行っている悩み相談が人気を集めているが、その理由は一歩間違えば反感を買いかねないような、悩みに対する辛辣な回答にある。一方、「シャープ製品」のTwitterアカウントは“悪ノリ”が高じて炎上し、アカウントを停止する事態に。好意的に世間から認識され続けるのも、企業にとってはひと苦労な時代のようだ。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)