米ニューヨーク・タイムズなどの海外メディアが伝えるところによると、米フェイスブック傘下のメッセージアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」は、このほど中国本土でサービスが遮断されたという。

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残り1つのサービスもついに遮断

 フェイスブックの同名のサービスであるSNSは、2009年から同国で遮断されている。フェイスブックには、傘下に写真共有サービスの「インスタグラム(Instagram)」もあるが、こちらも2014年に香港で起きた反政府デモ(いわゆる雨傘運動)の際に遮断されたと伝えられている。

 こうした状況で、ワッツアップはフェイスブックにとって、同国本土で遮断されていない唯一のサービスだったが、こちらもついに、規制の手が及んだということのようだ。

 このニュースと時を同じくして、中国当局は、中国版のソーシャルメディアやメッセージングサービスに対し、罰金を科す行政処分を下したと発表した。対象となったのは、中国版ツイッターと言われる新浪の「Sina Weibo(新浪微博)」、中国版LINEと言われるテンセントホールディングス(騰訊控股)の「WeChat(微信)」、そして検索大手バイドゥ(百度)の掲示板「Teiba」だ。

 当局によると、3社は、違法なコンテンツの投稿を規制するという義務を怠ったのだという(米ウォールストリート・ジャーナル)。

 中国共産党は、今年10月18日に北京で、5年に1度の党大会を開催する。そこでは、党トップに当たる中央委員を選出し、その中から最高指導部メンバー(常務委員)を選ぶ。こうした催しを控え、当局は、ネット上の言論統制を強化しているようだと、ニューヨーク・タイムズは伝えている。

中国でのサービス再開計画が後戻り

 フェイスブックにとって、この状況は後戻りを意味するものと言えそうだ。フェイスブックの中国事業については、先ごろ、同社がサービス再開を目指し、政府高官などとの関係を築く部門を率いるエキスパートを雇い入れたと報じられた。

 また、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、同国でサービスを再開させるべく、過去3年、さまざまな施策を講じてきた。例えば、同氏は2015年10月に中国を訪れ、清華大学の学長の陳吉寧(チェン・ジーニン)氏と会談している。また同氏は、同大学で行った講演で、流暢な北京語を披露している。

 同氏はアリババグループ(阿里巴巴集団)の創業者、ジャック・マー (馬雲)会長や、シャオミ(小米科技)のレイ・ジュン(雷軍)会長兼CEOなどとも会っている。2014年には中国インターネット規制当局のトップがフェイスブックの本社を訪れたが、その際、同氏は、習近平国家主席の考えに関する書籍をいつも机の上に置いていると述べ、中国重視の姿勢をアピールした。

(参考・関連記事)「フェイスブックが中国でサービス再開目指す」

強固な暗号技術が標的に

 ただ、今回のワッツアップのサービス遮断は、時間の問題だったとも言えそうだ。ニューヨーク・タイムズによると、ワッツアップは強固な暗号技術を使うサービスとして知られている。そのテキストメッセージの暗号仕様は、一般的でないものが使われており、当局が利用者間のメッセージを監視するのが難しい。

 そこで、当局は、これを遮断するという手段をとった。こうすることで、利用者はおのずとWeChatなどの地場サービスに移行する。地場サービスであれば、簡単に監視できる。しかも、当局にとって都合の悪いメッセージを削除することも簡単になるということのようだ。

筆者:小久保 重信