CMキャラクターには佐々木希さんや高田純次さんを起用。今年3月からは端末代込みで月額料金999円の新プランを発表し、大攻勢をかけていた(撮影:佐野正弘)

9月26日、EC国内大手の楽天が、格安スマホ「FREETEL(フリーテル)」を展開するプラスワン・マーケティングの国内MVNO事業(NTTドコモなどから回線を借りた通信サービス)を買収すると発表した。同日に取締役会で決議し契約を締結、11月1日に買収を実行する予定だ。

買収で楽天モバイルは国内2位級に

同じく格安スマホサービス「楽天モバイル」を展開する楽天は国内で3位、フリーテルは同5位(2017年3月末、MM総研調べ)。買収で楽天の国内シェアは15%前後となり、国内2位のインターネットイニシアティブ(IIJ)と肩を並べることになる。国内首位はNTT傘下のNTTコミュニケーションズでシェア17%。NTTコム、IIJとも法人向けに強いのが特徴だ。

楽天は約3年前の2014年10月に格安スマホに参入。楽天ポイントが通信料の支払いに使えることなどをアピールし、楽天市場のヘビーユーザーを中心に契約者を増やしてきた。個人向けではすでに国内トップ級だ。


「楽天モバイル キャラバンカー」はその場で契約できる移動販売店舗。プロ野球の球場前でスマホ契約を取ることから始め、全国に展開する(撮影:田所千代美)

X JAPANのYOSHIKIさんなど有名アーティストを起用して広告宣伝費を積極投入、家電量販店やショッピングモールの店内などに実店舗も大量出店しシェアを伸ばしてきた。

2017年9月21日時点で楽天モバイルのショップは全国に174店舗。「2018年3月末までに200店舗達成を目指している」(楽天モバイル事業担当の大尾嘉宏人執行役員)。今月末からは車両型の移動店舗を導入するなど、販売チャネルの多様化に余念がない。

一方のプラスワンは2012年10月に設立。端末開発と格安スマホサービスが経営の2本柱だ。


増田社長は外資系メーカーでSIMフリー端末の販売を画策したが、計画が頓挫し、プラスワンを創業した(撮影:佐野正弘)

日本初のグローバル展開する通信ベンチャーとして巨額の資金を集めてきた。2016年には米シリコンバレーや国内銀行系のベンチャーキャピタルに第三者割当増資を実施して42億円を調達。調達資金は合計80億円近くになるなど「将来有望のベンチャー」とみられてきた。「プレゼンが上手な創業者の増田薫社長が巨額資金を絶えず惹きつけてきた」(関係者)。

増資資金はスマートフォンの開発や海外展開に充当。8月下旬にはナイジェリアへの進出を発表している。アジア、北米、中南米、中東、アフリカに進出しているプラスワンにとって、ナイジェリアはアフリカで3カ国目、全世界では22カ国目となる。日本国内では2016年末に増田社長が「200店舗の出店を目指す」と明言、フリーテル専門店を増やしていた。

債務超過寸前の事業売却だった

MM総研で格安スマホを担当する平澤悠花研究員は、楽天によるプラスワンの事業買収を聞いて「やはり」と思ったという。業績が厳しいと聞いていたからだ。

積極的な拡大策の一方で国内事業が思い通りに伸びず、プラスワンの2017年3月期の売上高は100億円にとどまる一方、営業赤字は53億円、最終赤字は55億円だった。ブレークイーブン(損益分岐点)にはほど遠い状況なのである。「海外では健闘しているものの、国内では新端末で予定していた色を発売間際に中止するなど変調をきたしていた」(関係者)。

相次ぐ巨額増資にもかかわらず、先行投資がかさみ、プラスワンにはわずか14億円の純資産しか残っていない。追加の巨額増資をせずにこのまま赤字を垂れ流し続ければ、2018年3月期の債務超過転落は必至だ。

今回分割し楽天に譲渡する国内格安スマホ事業の総資産は18億円、負債合計は30億円。差し引き約12億円の債務超過である。その債務超過の事業を楽天は5億円で買収する。買収で手に入れるのは国内の顧客基盤だ。プラスワンにはスマホ開発など海外部門が主に残る見通しだ。

楽天はフリーテルの事業買収で首位に迫るが、国内格安スマホ事業の見通しは決して明るいものではない。

格安スマホは新規参入が相次ぎ、業者数も650社前後と競争が激化している。さらに、国内携帯大手・ソフトバンクがサブブランド「ワイモバイル」で通信料月額1480円(期間限定)と攻勢を仕掛け、大幅に契約を伸ばしている。同じく国内携帯大手のKDDIも格安スマホ子会社「UQモバイル」でワイモバイル並みの格安プランを提供している。

楽天モバイルは再編の核になるのか

こうした携帯大手系に押され、ほとんどの格安スマホ会社は契約数が伸び悩み、個人向けを中心に赤字が続いている。格安スマホ会社の幹部は「大手系と同じ料金の場合、(1カ月で通信できる)データ容量が大きい」と競争力があることをアピールするが、テレビコマーシャルを大量に流し続けるなどして知名度が向上している大手系は脅威となっている。

格安スマホ会社の再編淘汰はすでに始まっている。国内6位のビッグローブはKDDIに買収され、2017年1月に完全子会社化した。ニフティも家電量販店のノジマに買収された。業界の草分け的存在である日本通信は格安スマホ会社の通信システムを請け負う事業に軸足をシフトするなどの業態転換を図っている。

楽天は今回の買収を機に業界の泥仕合いから抜け出せるだろうか。もし抜け出せれば、楽天が今後の再編の核となる可能性もある。事業承継後もサービス内容や料金の変更はないとしている(フリーテルブランドの存続に関しては両社とも明言していない)が、まずはフリーテルの顧客をいかにつなぎとめるか。それが楽天モバイルの今後を占う試金石になる。