日本航空と米ハワイアン航空は、1980年代から客室乗務員の交流や運航委託などで関係を築いてきた(上写真:ハワイアン航空、下写真撮影:尾形文繁)

常夏の島、ハワイの空がますます熱くなりそうだ。

日本航空(JAL)と米ハワイアン航空は9月26日、包括的業務提携を結んだと発表した。2018年3月末に始まる夏季ダイヤから、日本とハワイを結ぶ路線でのコードシェア(共同運航)やマイレージ提携、ラウンジの相互利用などを実施する。JAL傘下の旅行会社ジャルパックは、ハワイアンの便を利用した旅行商品を発売する。

超大型機「A380」の猛攻に備える

「ANA(全日本空輸)がA380を導入すれば、競争環境は厳しくなる。ハワイアン航空からの提案はうれしかった」。JALの植木義晴社長は提携実現を受け、満足げに語った。

植木社長が言及したのは、ANAが2019年にハワイ路線へ3機導入する、座席数500を超えるエアバスの超大型機「A380」のことだ。供給座席数は一挙に増え、価格競争が起きるのは必至。JALは1954年に羽田―ホノルル―サンフランシスコ線を就航し、ハワイを60年以上牙城としてきたことから、対策を模索していた。

ANAに対抗するには、今以上の規模が求められる。夏の繁忙期である今年8月の座席数を基に計算すると、JAL・ハワイアン連合はシェアで46%と断トツになる。

規模のメリットを追求するため、JALとハワイアンの両社は「共同事業(ジョイントベンチャー、JV)」も検討する。単なるコードシェアやマイレージの提携を超え、ハワイ路線のダイヤや運賃を2社間で1つの会社のように調整できる仕組みだ。


(出所)ハワイ州観光局のデータを基に東洋経済作成

実現に向け、数カ月以内に日米両政府へ独占禁止法の適用除外(ATI)を申請する。

「重要なのは、顧客の利便性を高めること。JVであれば、そのために通常の提携よりも踏み込んで話し合える。互いの便の時間帯がぶつかっていれば、ずらそうかという話ができる」と植木社長は話す。

JALに打診したものの…

今回、提携を持ちかけたのはハワイアン側だ。話は7年前にさかのぼる。2010年、羽田空港の国際線発着枠が深夜早朝帯(23時〜6時)に開放され、ハワイアンが羽田―ホノルル線を就航。日本初進出だった同社は、就航前から提携先を探していた。まず打診したのが、ハワイでの存在感が大きかったJALだった。

しかし2010年といえば、JALが経営破綻した年。当時は提携どころではなく、交渉は頓挫した。その後2012年、ハワイアンはANAとの提携にこぎ着けた。しかしコードシェアの対象はANAが運航する日本の国内線や、ハワイアンがハワイ州内で運航する路線のみで、日本―ハワイ路線は含まれなかった。

背景にあったのはANAがJVでタッグを組むユナイテッド航空の存在だ。ユナイテッドは従来から成田―ホノルル線を運航。ハワイアンと手を組めば、ANAは自らユナイテッドとの関係に傷をつけることになる。ハワイアンのマーク・ダンカリーCEOは「思うようにANAには近づくことができなかった」と明かす。両社は来年3月に提携を解消する。


日本航空の植木義晴社長(右)とハワイアン航空のマーク・ダンカリーCEOは、互いの信頼を強調した(記者撮影)

一方のJALはアメリカン航空とJVを組んでいるが、アメリカンは日本発着のハワイ路線を持っていない。こうした事情もあり、ハワイアンにとってJALは理想のパートナーだったのだ。

ダンカリーCEOによれば、2015年12月に「同じ方向性だということを認識」し、JVを前提とした提携交渉が始まったという。

会見の前日、植木社長とダンカリーCEOは食事を共にした。「航空会社のトップとして目指していることが、非常に似通っている。そんな信頼感を大切にしたい」と植木社長は笑みを浮かべる。

1つは定時運航だ。ハワイアン航空は米国の航空業界で10年以上定時運航率で首位。JALも米フライトスタッツ社が集計する定時運航率ランキングで5年連続、アジア太平洋地域で首位を誇る。

また、成田・羽田という首都圏一極集中のANAとは異なり、JALとハワイアンは関西、中部、新千歳など主要空港にも路線を持つ。ダンカリーCEOは「顧客にとって重要なのは、とにかく多くの選択肢があることだ」と強調する。

ハワイアンが持つ羽田路線もJALには魅力的


(出所)日本航空・ハワイアン航空時刻表

とはいえハワイアンが持つ羽田路線も、JALには魅力的だ。JALは米国向けの羽田発着枠を2つしか持っておらず、今年4月に羽田―ニューヨーク線を就航させるため、従来運航していた羽田発着のホノルル線を成田へと移した経緯がある。

日本進出からわずか7年ほどで急成長してきたハワイアンは、JALの目に脅威にも映ったはず。だが提携を結んだことで、強力な味方となった。

ハワイアンは来年にかけて米国本土路線向けの小型機「A321neo」を順次導入を始める。そうすれば、国際線用機材であるA330を日本路線により多く振り向けられるようになり、「新たな日本路線を飛ばせるようになる」(ダンカリーCEO)。

「ANAがA380で市場を変えるだろう。しかし、JALとハワイアンのパートナーシップも市場を変えることになる」とダンカリーCEOは強気だ。A380の”襲来”を前に、どこまで差をつけることができるだろうか。