アンチエイジングに一石!年齢を重ねる楽しみ…「スロービューティー」提唱者に聞く

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実年齢よりもはるかに若く見られる女性を「美魔女」ともてはやすなど、美的価値としてアンチエイジングが中心に位置しているのはまだまだ否めない。その一方で「人それぞれ、年それぞれの美しさ」を追求する「スロービューティー」という考え方も広がっている傾向を先日リリースした「アンチエイジングに一石!年それぞれの美しさ『スロービューティー』とは」という記事でお伝えした。今回はスロービューティーを提唱する駒沢女子大学教授・資生堂客員研究員の石田かおりさんに、その背景について話を聞いてみた。

■人生の後半を楽しくする考え方

「最初は『人それぞれの美しさ』だけで十分だと考えていたのですが、それでは大きな問題が残っていることに気づきました」と石田さん。スロービューティーを15年前から提唱している先駆者だが、その考えに行き着くまでには段階があったのか。そのきっかけとなる問題とは?

石田さんは「『人それぞれの美しさ』を実行し続けている人でも、若いときの自分と年を取った自分を比較して、年々外見的な価値が下がる一方だと考えるならば、長い人生の後半は不幸が増すばかりです」と話す。

なるほど。いつまでも若くありたい、と努力することは素晴らしくても、結果が伴わなくなったときにモチベーションの持って行き場がなくなってしまうはずだ。

「日本人の平均寿命は80歳を超えています。アイドルの年齢を見ればわかるように、社会的な評価が得られる外見の価値のピークは80年の人生の最初の4分の1かそれより前というのが現実です」(石田さん)

その現実を踏まえて、石田さんは「残り4分の3は何なのでしょう」と自問し、その回答として「『年それぞれの美しさ』という考え方も欠かせない」という結論に至ったのだ。

■その年齢にしかできない表現がある

石田さんが「たとえば、10年前の自分と、現在の自分、そして、10年後の自分を比べてみるとします。成長期を過ぎた大人の場合、アンチエイジングの価値観ならこうなります」と述べ、アンチエイジングに根差した美的基準のマイナス面を次のように話す。

「10年前はよかったなあ。10年経ったいま見栄えが衰えて、10年後はもっと冴えなくなってしまうのか……と嘆きたくなりませんか。年を取るのは楽しくなく、できれば避けたいし、将来が暗くなってしまいます」(石田さん)

そして、石田さんは「外見のことに限りますが、年を取るということは価値が下がることだけでしょうか」と問い掛ける。経験が積み重なることで知恵や自信がつく、などのことだろうか。

「10年前にしか似合わない服や髪型があるように、今はだめでも10年後になると似合う服や髪型があるのではないでしょうか。その年齢にしかできない表現があるはずです。それが『年それぞれの美しさ』です」(石田さん)

“服に着られている”などはよく聞く言葉だ。経験を積んでこそ、似合う衣装も確かにあるだろう。

「毎年毎年その年齢にしかできない表現を積み重ねて生きていくことができれば、それは楽しい人生になるだろうし、10年後の自分はどんな姿が素敵なのか楽しみになりませんか。『年それぞれの美しさ』は、個人の中での美の基準の多様化なのです」(石田さん)

■日本発信で素敵なシニアファッションを

石田さんは「日本は世界有数の高齢社会ですから、素敵なシニアファッションを世界に発信できるようになるとカワイイだけでないテイストでますます世界から尊敬される文化になることでしょう」と期待する。

筆者は最後にジョン・レノンの死後に発表された妻オノ・ヨーコさんとの共作アルバム「ミルク・アンド・ハニー」に収録された「グロー・オールド・ウィズ・ミー」の一節を紹介したい。

「Grow old along with me(僕と一緒に年を取っていこう)The best is yet to be(まだ最高のときじゃない)」。この言葉通り、オノ・ヨーコさんも年齢を重ねないとできない表現を上手に実行している素敵な人だ。

高齢者と呼ばれるときは誰にでもやってくる。楽しく素敵に年を重ねていきたい。

●専門家プロフィール:石田かおり
駒沢女子大学教授・資生堂客員研究員。お茶の水女子大学大学院修了。学習院女子大学、日本女子大学、早稲田大学の非常勤講師も務めた。専門は哲学的化粧論・身体文化論。著書は『おしゃれの哲学』(理想社)『化粧せずには生きられない人間の歴史』(講談社現代新書)など多数。

(武藤章宏)

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