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もくじ

ー E-タイプ 2000GT そしてコルベット
ー ガキのころの夢を叶えた
ー いいところ、悪いところ

E-タイプ 2000GT そしてコルベット

戦後の1950年代から「自由に生き、愛する」時代へと移り変わった1960年代になって、ジャガーからE-タイプが産声を上げた。

1961年、このクルマがデビューした当初は、流麗なボディラインとロケットのような加速、他のクルマよりもリーズナブルな価格の組み合わせで、人々の心を一瞬にして奪っていった。アメリカにももちろん、まとまった数が輸入された。

一方の日本も戦後の苦境からなんとか脱却し、気づけば1960年代中頃のアメリカでトヨタはフォルクスワーゲンに次ぐ第二の外国車メーカーに上り詰めていた。

ただしそんな栄誉ある地位に値するだけの高級感が今ひとつ足りなかったことも事実。その頃からクラウンやコロナにはプレミアムな印象を与えるための工夫が見られるようになった。

その流れで始まったのが280Aプロジェクト。1965年に世間の耳目をほしいままにしたトヨタ2000GTの開発コードだ。のちにヨーロッパ勢やアメリカ勢は慌てることになる。

発表された数字を見るかぎり、手仕事によって作られた337台のうち、62台がアメリカに輸出されたはずだ。割合から考えるとアメリカはメインターゲットではないとも思えるのだが、当時のトヨタは年間1000台の製作を目標としていたのだ。

しかし米国の高利回りのマーケットにおいて、トヨタとジャガーを苦しめたのは、言うまでもなく関税である。それだけではなく、センセーショナルなボディを身にまとった、1963年式シボレー・コルベットC2スティングレイも2台にとっては厄介な存在となった。

ゾラ・アーカス・ダントフによって、C2のリアエンドには横置きのリーフスプリングを採用。堅牢なラダーフレームには、デザイン部門を率いたビル・ミッチェルの元でラリー・シノダが線を引いた、美しくもエッジが効いた頑強なボディが被さる。

V型8気筒エンジンが組み合わされ、初版から最終モデルまで、実に14種類のチューニングが施された。このモデルは2代目に当たるのだが、3代目の「コークボトル」型のC3が出るまでに加えられたオプションはもはや把握できないほど。よほどの知識がない限り、モデルごとの価値はジャッジできないとさえ言われている。

ガキのころの夢を叶えた

このクルマのオーナーであるグラハム・クルックスは、学校を卒業するときには既にコルベットを所有することを心に決めていたのだそうだ。そしてその卒業の年にC2がローンチされた。

「もちろん『スプリット・ウインドウ』のポスターも部屋に飾っていましたよ」とクルックス。「だけれど実際に自らの元にやってきたのはかなりの後のことです」と続ける。

「なぜなら拘りが強かったのです。と言っても、実はエンジンはどれでも良くて……。わたし自身が拘ったのはオートマティックであること。それにディスクブレーキとパワーステアリングが付いている、と言うことでした。65年式を選んだのもそんな理由からなのです」

18カ月かそのくらいが経ったあと彼はキラキラと輝くイエローの327/300を手に入れた。夢が現実になった瞬間である。まっすぐ走るだけが速いという固定概念を払拭するきっかけとなったのが、ディスクブレーキや4輪が独立したサスペンション、あるいはパワーステアリングなど「本気の」エレメントだったのだ。

アメリカ人が海外旅行に心躍らせた時代のジェット機の機体からインスピレーションを得たボディラインと、70年代特有のエッジの立ったラインの融合も見事なものだった。クロームのパーツが最低限に抑えられていたのも特徴だ。ケルシーヘイズ製のタービン-スタイル・ホイールを履かせれば完璧である。

シェビーの広告は、いかにも「アメリカン・マッスル」を押していたけれど、実際に乗ってみると、クラッチは軽く、シフトチェンジはいとも簡単にできるうえに、すべてのフィールが驚くほどマイルドなのだ。強いていうならばサーボ機構がないブレーキには力がいるが、それでも十分な仕事をしてくれる。

ラフな滑走路を走らせても、セパレート・フレーム特有の弾みがない。言うまでもなくスムーズな路面の落ち着きはかなりのもので、ボディロールはほとんど感じないと言っていいほどまで抑えられている。

リアはややソフトな方向に振っているが、(そのお陰とも言うべきか)205/75 R15のタイヤは従順に追従してくれる。当時の試乗記事を読んでみると「一言で言うならスティングレイは粘り強いクルマだ」と書かれていたが、まさにそのとおりだと感じた。

いいところ、悪いところ

ライバルに比べると野性的な性格なのは確かではあるものの、「マッスルカー」という意識を捨て去れば、ヨーロッパのグランドツアラーよりも手に入れやすいスポーツカーである、という結論に達するかもしれない。

ボンネットは大きく隆起しているが、フロントの視界は意外にも広いし、ヘッドライトから後方に両サイドが盛りあがっているお陰で、狭い道でも感覚が掴みやすい。

キャビンは想像より遥かに広く、大きなブート・スペースは中からもアクセスできるので便利だ。ただし惜しいのはインテリアのフィニッシュの粗さ。コンケーブした3本スポークに組み合わさるウッドのステアリングは非常に見事なのだが、クロームの代わりに配された安っぽい黒いプラスティック素材は、GTカーの風格を明確に損なっている。

嫌なことを忘れるにはエンジンに火をいれるしかない。

L75型「ファイヤー・ターボ」327は、65年に用意された6種類のエンジン・ラインナップのうち下から2番目のグレードであるものの、最高出力は304psを発生(最も高出力の「ビッグ・ブロック」エンジンは431ps)、この記事で取り上げる3台の中では最もパワーがある。

アクセルを踏み込んで、加速で顔を引き攣らせるには事足りる出力だ。

静止状態からの加速でも5000rpmまでは難なく回っていく。前方のV8は単に闇雲に騒ぎ立てるのではなく、そこには「的確」で「知的」な力強さがある事に驚いた。

また不安になるほどトルクフルであることもお忘れなく。複雑さなどどこにもない楽しさ。シボレーの提唱する面白さはいつだってシンプルなレシピによって作り上げられるのだと感じた次第だ。まさに60年以上続いたフラッグシップの真髄に触れたのである。

もしコルベットに乗った後に、もう少し洗練されたクルマを欲するならばジャガーE-タイプの出番だ。

(2)につづく

モデル名シボレー・コルベット・スティングレー(1963〜1967年)
生産台数 45546台 
シャシー スチール 
エンジン OHV8気筒5356cc 
エンジン配置 フロント縦置き 
駆動方式 後輪駆動 
最高出力 304ps/5000rpm 
最大トルク 49.8kg-m/3200rpm 
トランスミッション 4速マニュアル 
乾燥重量 1383kg 
0-97km/h加速 7.5秒 
最高速度 198km/h