残業や休日出勤などの業務命令を拒否したらどうなるのか

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最近ブラック企業と呼ばれる会社に関する報道を目にする機会が多い。月100時間を超えるような残業の強制や、休日出勤はおろか休日という言葉自体存在しないかのような勤務体制など目を覆うようなものばかりで、過労死を始めとした大きな社会問題となっている。「教えて!goo」では「残業を断ると解雇されますか」と題して質問が寄せられている。

■やむを得ない事情があると認められれば拒否できるが。

転職したばかりの質問者は、個人的な事情により残業できない日があるという。面接時にそのことを伝えることができず、今まで来てしまった。もし、残業できない日に残業を命令され、断ったら解雇されるかと聞いている。回答を見てみよう。

「面接時に、月に残業が30時間程度あるといわれ、週に2日残業できない日が有るのなら、面接時にきちっと言うべきですね。その上で、相手がOKなら良いでしょうが、OKでないなら相手は困るわけです」(himara-husさん)

「労使協定で年間の残業時間は、何時間になっていますか? (中略) 残業できない理由は、第三者からみて、妥当なものでしょうか?」(fumidaiさん)

残業できない日があるという事情を面接時に伝えていなかった点も問題だが、その事情が労使協定に定めるやむを得ない事情にあたるどうかが問題になる可能性がある。やむを得ない事情ではないと判断されれば、解雇もあり得るという回答であった。

■労使協定 36協定がカギとなる。

ここで出てきた「労使協定」とはどんなものだろうか。労働問題に詳しい加藤法律事務所の加塚裕師弁護士にお話を伺った。

「そもそも会社側が労働者に対して残業や休日出勤を命令するには、まず、就業規則に『業務上必要があるときには所定労働時間を超えて勤務する事を命じることがある』などのように、残業についての定めがあること、次に、労働者の代表と使用者(会社側)が協議して決めた労使協定、いわゆる36協定が結ばれていることが必要です」

労働基準法では、1日8時間、週40時間(第32条)までの所定労働時間と週1回の休日(第35条)を定めている。しかし同法36条では、「労使協定をし、行政官庁(労働基準監督署)に届け出た場合においては、(32条、35条の規定にかかわらず)、その協定に定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」としている。この36条に基づいた協定「36協定」があれば、残業や休日出勤の命令をすることが可能となるのだ。ただし、残業について定めた就業規則と36協定が合理的なものであることも必須。月100時間以上の残業を容認するような36協定は、裁判では「合理的」とは認められない可能性が高い。

では、36協定が結ばれてしれば、残業は拒否できないのだろうか? 拒否した場合、解雇されてしまうことがあるのか? 冒頭の質問に対する回答にあった「第三者からみて、妥当な」理由かどうかが鍵になる。例えば、家族の介護や親族の冠婚葬祭など、社会常識に照らしてやむを得ない事情での残業拒否を理由にした解雇は違法、無効となる可能性が高い。

このような妥当な理由のない残業拒否の場合、
「解雇が正当化されることもありえます。残業命令違反に基づく懲戒解雇を有効と判断した最高裁判決においても、労働者側が単に命令に従わなかったという事情の他、会社から始末書を提出するよう求められていたにもかかわらず提出しなかったという事情も認定されています」

有効な36協定が締結されていても、状況によって解雇されることは充分あり得るということであろう。

ところで、自分が勤務している会社おいて、36協定が締結されているかどうか、調べる方法についてご存じだろうか。労働基準法第106条では、会社には36協定の締結について「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること」の義務を負うとなっている。また、労働基準監督署に届け出る義務も定められているので、労働基準監督署に問い合わせてもいい。長時間残業が常態化している会社や職場は少なくない。過労死まで行かなくとも働きすぎで体を壊してしまっては元も子もない。まずは、自分の会社の就業規則と36協定について確認し、自衛策を考えてみてはどうだろうか。

ライター 与太郎

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)