ハリルホジッチ監督には大胆な選手起用を期待したい。写真:サッカーダイジェスト

写真拡大 (全2枚)

 いよいよ、ロシア・ワールドカップへの本格的な準備がここから始まる。といっても、10月シリーズで戦う相手はニュージーランドとハイチ。この両国はお世辞にも世界の強豪と言えず、来年6月の本大会でまずグループリーグ突破を目指す日本のスパーリングパートナーとしてはやや不十分だろう。
 
 なにも、ニュージーランドやハイチを舐めているわけではない。前者にはクリス・ウッド(バーンリー)という強力なストライカーがいるし、後者は今回のワールドカップ予選(北中米&カリブ海地区の3次予選)で曲者コスタリカなどと僅差の勝負を演じている。
 
 しかし、そんな彼らも決して「強国」ではない。世界的には「弱小」の部類に入る日本がロシア・ワールドカップを見据えて戦うべきは明らかな格上、いわゆるサッカー大国だ。劣勢を強いられるシチュエーションでどう守り、どうチャンスを作り、どうゴールを奪うか──。弱者が強者を食う戦い方を身に付けることこそ重要なのではないのか。
 
 アルベルト・ザッケローニ監督の下で「自分たちのサッカー」(ポゼッション重視の攻撃的なスタイル)に執着した結果、1勝もできずにブラジルの地を去った14年のワールドカップと同じ轍を踏まないためにも、日本に求められるのは、したたかに勝点3をかっさらうというスタンスだろう。
 
 その点で、10月シリーズの連戦をワールドカップの予行演習とは捉えにくい。ホームで、日本と同格以下のニュージーランドやハイチとの親善試合で、一方的に押し込まれる展開は考えにくいからだ。仮に現時点でのベストメンバーで臨んだ日本がこの連戦にいずれも大勝したとして、どんな意味があるのか。
 
 そもそも、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は相手ありきで戦略を練るタイプの指揮官である。だとするなら、本格的なチーム作りに着手するのは12月1日の組分け抽選会で日本の対戦国が決まってからと、そんな見方もできるはずだ。
 とはいえ、貴重なテストマッチを無駄にするわけにはいかない。もちろんそれはハリルホジッチ監督も承知しているはずで、実際、10月シリーズでは新戦力をテストする方針を示している。
 
 そこから見えてくる狙いは当然ながら、既存のチームにプラスアルファをもたらす人材の発掘。9月26日現在で森岡亮太(ベルギーのワースラント=べベレン/MF)、山村和也(C大阪/MF)、扇原貴宏(横浜/MF)らが招集されるとの噂もあるが、いずれにしても10月シリーズ最大の焦点は“ファーストサバイバル”だ。
 
 アジア最終予選の起用法から判断するかぎり、その全試合にフル出場したCBの吉田麻也(サウサンプトン)、キャプテンの長谷部誠(フランクフルト)、最前線で確かな存在感を示した大迫勇也(ケルン)など欠かせない戦力がいる一方で、レギュラーが不透明なポジションも複数ある。

 先のオーストラリア戦で大活躍した井手口陽介(G大阪)も定位置を確約されているわけではないし、ここからハリルホジッチ監督にアピールしてロシア行きのチケットを掴む選手が出てきたとしても、決して不思議はない。
 
 今回の連戦をはじめ、11月に実施予定の海外遠征、12月に開催されるEAFA E-1サッカー選手権2017(韓国、中国、北朝鮮と対戦)、3月のテストマッチなど、来年の本大会に向けて代表活動の回数は限られている。最終予選のラスト2試合に招集されながらも出番がなかったMFの郄萩洋次郎(FC東京)、CBの三浦弦太(G大阪)あたりにとっては、この10月シリーズが生き残りを賭けた大一番になる可能性もありそうだ。
 
 ハリルホジッチ監督にしてみれば、これまで試せなかった選手を躊躇なく起用できる絶好の機会であり、メンバーリストにはあっと驚くような選手が並ぶかもしれない。あくまで憶測だが、例えば内田篤人(ウニオン・ベルリン)が代表復帰したりすると……。10月シリーズへの興味は俄然湧くはずだ。
 
 果たして、ここからハリルジャパンの現序列を覆すようなタレントは現われるのか。振り返れば、14年のブラジル・ワールドカップでは、その前年の東アジアカップで活躍した森重真人、青山敏弘、山口蛍、柿谷曜一朗、大迫勇也らがメンバー入りを果たしている。そうした例もあるだけに、本大会への第一歩となる今回のメンバー選考は非常に興味深いところだ。
 
 アジア最終予選は過去の話──。ロシア・ワールドカップに向け、真のサバイバルが、まさにここから始まる。

文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)