街頭に映し出された北朝鮮のミサイル発射を伝えるニュース映像(時事通信フォト=写真)

写真拡大

■北朝鮮への制裁効果を吟味している間に……

窮地に立たされていた安倍晋三首相が決断を迫られている。複数のメディアが「9月28日の臨時国会召集後すぐに衆院を解散する方針」と報じるなど、年内解散・総選挙に現実味が帯びてきた。10月下旬の投開票が有力だという。

一方で各メディアは「選挙の大義がない」と手厳しい。批判を浴びながらも解散に踏み切る背景には、北朝鮮情勢、加計学園問題、野党再編などを鑑みて「どうしてもこのタイミングでなくてはいけない」という安倍首相の身勝手な自己都合が見え隠れしている。

拉致問題への取り組みで保守政治家としての地位を固めた安倍首相だが、対北朝鮮政策で厳しい局面にいる。長距離弾道ミサイルの発射や核実験を繰り返す北朝鮮は「核保有国」として対等な立場での対米交渉を要求している。

これまで「対話と圧力」路線で核・ミサイル・拉致問題の解決を目指してきた日本は「交渉材料」を持っておらず、その存在感は希薄だ。ある外務省幹部は「米国についていくしかない状況」と苦しい胸の内を語る。

そんな中、米トランプ大統領は「北朝鮮への軍事行動も選択肢に含まれる」と明言した。これ以上北朝鮮情勢が複雑化すれば解散どころではなくなる。この問題を傍観するしかない安倍首相は「9月に入り新しく科した制裁の効果を検証する間に解散するしかない」と考えているのだという。

■全部まとめて「民意を問うた」と一掃する

安倍首相の親友が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる疑惑も安倍首相を悩ませている。大学設置・学校法人審議会は判断を「保留」としているが、8月3日の内閣改造から1カ月半が過ぎた今も謎は深まるばかり。

「真摯に説明責任を果たす」と語っていた首相から国民が納得する丁寧な説明はなされていない。自民党若手議員からは「これまでは野党の国会開会要求を突っぱね、首相が批判の矢面に立たないよう逃げてこられたが、今後はそうはいかない」と不安の声も上がる。

臨時国会では「森友学園」問題や自衛隊の「日報」問題と合わせて野党側が厳しい追及をするのは必至だ。安倍首相は総選挙で「加計・森友・日報問題をまとめて『民意を問うた』と一掃してしまう考え」(政府関係者)だ。

■女性候補者が足りない「小池新党」

世論調査では、小池百合子東京都知事に近い若狭勝衆院議員が目指す国政版「小池新党」に期待する声が5割近くに上っている。東京都議選のように自民党への批判の受け皿に小池新党がなれば、都議会と同様に大躍進が予想されているが、小池新党の先行きは不透明だ。

小池知事の側近は「女性リーダーの印象が強い党なのに、肝心の有力女性候補者が足りておらず、人材探しに四苦八苦している」と吐露する。

民進党は9月1日の党代表選で前原誠司氏が勝利を果たし新執行部を発足させたが、その船出早々、党幹事長に内定していた山尾志桜里衆院議員のスキャンダルが発覚した。支持率は思うように上がらないばかりか、迷走する党に愛想をつかした議員が次々と離党し、混乱に陥っている。

■自民「今なら大負けはしない」

小池新党、民進党ともに足元がおぼつかない今だからこそ、自民党内では解散を求める声が広がる。ある自民党幹部は「首相が衆院解散・総選挙をやると言えば、いつでも衆院解散・総選挙をできるだけの準備はしている」と語る。

政局的には「上策」ともされるアイデアではあるが、これにはリスクがつきまとう。北朝鮮問題が緊迫化する中での選挙には批判が出ているほか、安倍首相の悲願である憲法改正が遠のく可能性が高いためだ。

現在は衆院と参院で憲法改正勢力が発議要件の3分の2を上回っているが、衆院解散・総選挙があれば自民党の議席数が減り、要件に届かなくなるおそれがある。それでも「今のうちやっておけば大負けはしない」という見方が強いという。

「国民には経済優先、保守層には憲法改正」と餌をぶら下げながら走り続けてきた安倍政権。勝手な自己都合での解散で、安倍首相への根本的な信頼が揺らぎ始めている。

(写真=時事通信フォト)