【原ゆみこのマドリッド】揃って勝利というのは珍しい…

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▽「もうクビとは気が早いこと」そんな風に私が驚いていたのは月曜日、リーガ6節が終わったばかりというのにビジャレアルのエスクリバ監督が解任されたというニュースを聞いた時のことでした。いやあ、確かに日曜はコリセウム・アルフォンソ・ペレスで4-0と惨敗、ヘタフェに待望の1部復帰後ホーム初勝利を与えてくれた時には2年前、彼の率いていたシーズンにチームが2部降格の憂き目に遭ったお詫びぐらいにはなったんじゃないだろうかと気楽に思っていたものでしたけどね。実際、ビジャレアルは2勝1分け3敗で14位につけていたため、監督自身も試合後の記者会見では進退を問われる可能性は考えていないと、意に介していなかったものの、ホントに昨今は世知辛い。

▽それだけに月曜にはその試合で今季初得点、昨季のヘタフェ昇格に大きく貢献したMoligol(モリゴル)の復活を印象づけてくれた35歳のベテラン、ホルヘ・モリーナなど「Sabemos que cuando los resultados no se dan el entrenador es el primero que cae/サビアモス・ケ・クアンドー・ロス・レスルタードス・ノー・セ・ダン・エル・エントレナドール・エス・エル・プリメーロ・ケ・カエ(結果が出ない時、最初に辞めさせられるのは監督ということはわかっている)」と達観していましたが、逆に言えば、ここで2勝目を挙げられず、ホーム3連敗を喫していたら、ボルダラス監督の立ち位置も微妙になっていたはず。そう思うと、エスクリバ監督には悪いけれど、つくづくこの勝利、ありがたいと感じてしまうんですが…。

▽いえ、話は順番にしていきましょう。先週末のリーガ、トップバッターを務めたのはアトレティコだったんですが、ワンダ・メトロポリターノの2試合目がデーゲームというのは私にとって、周辺を観察するのにおあつらえ向き。さすがに午前10時までのチョコラーテ・コン・チュロス(ホットチョコレートと揚げ菓子、スペインの伝統的な朝食メニュー)無料配布には間に合わなかったものの、少し早めにメトロ(地下鉄)7号線のEstadio Metropolitano(エスタディオ・メトロポリターノ)駅を出て、スタジアム正面の歩道にある100試合以上に出場した歴代アトレティコ選手のプレートを見たり、taquilla(タキージャ/チケット窓口)がその正面左手側のプレハブ小屋にあるのを発見したり、ファンゾーンや軽食販売トラックが大賑わいしているのを眺めながら、一周してみたんですが、天気が良かったせいか、一番売れていたのはやっぱりビールだったかと。

▽今のところ、クラブ博物館の移転はまだのため、付属施設がオフィシャルメガストアしかなく、そこは入り口に行列ができるぐらいの大混雑。時間が気になる試合前に行くのはあまりお勧めしませんが、この土曜のように試合が終わるのも早いと、正面右側、メトロの駅近くにあるスタジアム内駐車場の出入り口の周りで選手たちの車が出て来るのを待つファンもかなり多数いて、その頃でしたら、ストアの方も入り易くなっているかと思います。ただ、難点はアトレティコがアジアン・ゴールデンタイム枠に当たるのはあまりないことでしょうか。

▽え、それより肝心のrival directo/リバル・ディレクトー(直接ライバル)との対戦はどうだったのか知りたいって? いやあ、ミッドウィークのアスレティック・ビルバオ戦から5人の選手をローテーション、しかもその試合同様、前半は大したチャンスもなかったアトレティコだったんですけどね。セビージャのカリッソも「Nos hicieron gol en la primera jugada del segundo tiempo」/ノス・イシエロン・ゴル・エン・ラ・プリメーラ・フガダ・デル・セグンド・ティエンポ(後半最初のプレーでゴールを奪われた)」と言っていたように、再開から1分で先制点をゲット。そう、ビエットのスルーパスを受けたカラスコがエリア内でGKセルヒオ・リコをかわしてガラ空きのゴールにボールを蹴り入れたんですが、おかげで最初から盛り上がっていたスタンドがますます沸き立つことに。

▽これがまた、新スタジアムは上部に屋根がグルリとついているため、ビセンテ・カルデロンと違った響き方で、後でシメオネ監督も「Cuando la gente anima y grita parece un circo romano/クアンドー・ラ・ヘンテ・アニマ・イ・グリタ・パレセ・ウン・シルコ・ロマーーノ(人々が応援して大声を出すと、まるで古代ローマの円形闘技場のようだ)」と感心することしきり。更に24分にはカラスコがエリア内右側から出したパスを敵DFに取られそうになりながら、グリーズマンが必死に足を延ばしてボールを一旦外へ。それをフィリペ・ルイスが戻したところ、新スタジアム初ゴールに続き、リコの股間を抜くシュートで2点目にしてくれるんですから、ようやく彼にもエンジンがかかってきた?

▽結局、そのまま2-0と勝利、順位を逆転して2位となったアトレティコでしたが、相手のセビージャがリーガ3連戦の最後だったため、ノリートがケガで招集されていなかったり、ヘスス・ナバスも目立たったりと、プレーのレベルが落ちていたのに比べ、メンツが代わっても守備力はもちろん、ゴールも決められるようになった彼らには感心するばかり。これにはその日、午前中にメディカルチェックを済ませ、パルコ(貴賓席)で観戦していたジエゴ・コスタにもこの3カ月間で心してコンディションを整えないと、先発に食い込めないという危機感を与えたかもしれません。

▽ただ本当に今季のチームに得点力があるのかどうかはこの水曜、今季2度目のヨーロッパの強豪との対決となるCLチェルシー戦を迎えてみないと何とも言えないんですが、いえ、同じ出戻り組のフィリペ・ルイスなど、「ジエゴがただの通過点ではなく、留まるために帰って来たのはアトレティコがビッグなクラブという証明」と自信を見せていましたけどね。2014年夏にチェルシーに移った最後の1人、後釜として来たオブラクが優秀なせいもありますが、これまで1度も復帰を乞われたことのないGKクルトワなど、「凄いFWだから、estoy contento de que hasta el proximo ano no tengamos que enfrentarnos a el/エストイ・コンテントー・デ・ケ・アスタ・エル・プロキシモ・アーニョ・ノー・テンガモス・ケ・エンフレンタールノス・ア・エル(来年まで彼と当たらなくて済むのにボクは満足しているよ)」と、FIFA処分でアトレティコがコスタを選手登録できず、年明けまでプレーできないことを歓迎。

▽その辺はグリーズマン、コレア、フェルナンド・トーレス、ビエット、ガメイロら、今いるFWたちがそうは問屋が卸さないと発奮してくれることに期待するしかないんですが、要注意は先週末、プレミアリーグのストーク・シティ戦でハットトリックを挙げたモラタ。BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの頭文字)の頸木から放たれ、コンテ監督の下で爆発しているため、その日は休養をもらったゴディンも決して気を抜くことはできないかと。加えてペドロ、セスク、アスピリクエタといったスペイン人選手たちが見られるのも楽しみなアトレティコvsチェルシー戦は水曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からキックオフ。1節はカラバフに大勝した相手とは対照的にローマとスコアレスドローだったアトレティコだけにここは絶対、勝ち点が欲しいところです。

▽そして土曜の次の時間帯ではお隣さんがメンディソローサでアラベスと試合したんですが、メトロで40分程かけて自宅近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に私が着いた頃にはすでに前半も30分が経過。こちらは現在、ケガ人が多いながら、CLドルトムント戦が火曜と近いため、ジダン監督はベイルやモドリッチをベンチスタートに。代わってセバージョスが先発デビューしていたんですが、その彼が早くも前半10分、アセンシオからのパスを敵DFにコースを塞がれる前に撃って先制点を挙げているんですから、これはもう、レアル・マドリーのスペイン人若手逸材獲得力を褒めるしかありませんって。

▽一方、開幕から5連敗、20チーム中最初に監督解任踏み切ったアラベスもこの日はカベージョ暫定監督の下、意地を見せ、40分にはムニルのクロスをキャプテンのマヌ・ガルシアがヘッドで決めて同点に追いつくことに成功。でもその3分後にまたセバージョスにゴールを許し、再びリードされてしまってはねえ。後半はどちらもポストを叩くシュートがあったものの、得点は生まれず、そのまま1-2でマドリーが勝利することに。まあ、結果はこれでいいんですが、それにしても気懸りなのはジダン監督も「Para nosotros irnos con los dos goles es muy poco/パラ・ノソトロス・イルノス・コン・ロス・ドス・ゴーレス・エス・ムイ・ポコ(ウチにとって、2ゴールはとても少ない終わり方)」と言っていたように、最近の彼らはなかなかシュートが決まらないこと。

▽とりわけミッドウィークのベティス戦で12本もシュートを撃ち、その日も8本撃ったものの、ロナウドが得点できなかったのは当人も試合中、かなりイラついていましたしね。ちょっと心配ではありますが、幸い次は気合が入るCLマッチ。しかもここ数年、恒例になっているドルトムントとのアウェイ戦となれば、きっとロナウドも照準を取り戻してくれるはずです。月曜に現地入りしたチームにはアラベス戦を肋骨の痛みでお休みしたクロースが復帰したものの、ベンゼマ、コバチッチ、マルセロ、テオ、バジェホはまだケガが治らず。その影響で右SBの控えがRMカスティージャ(マドリーのBチーム)から昇格したばかりのアシャーフしかいないため、開幕から10試合皆勤しているカルバハルの疲労が心配されますが、「Es joven y puede aguantar/エス・ホベン・イ・プエデ・アグアンタール(若いから耐えられる)」とジダン監督は気にしていないよう。

▽どちらにしろ、今は左SB2名がおらず、万能DFのナチョをそこに充てないといけないため、カルバハルが出るしかないんですけどね。ちなみにドルトムントは開幕から5勝1分けでブンデスリーガ首位を走っており、とりわけ8得点を挙げているオーバメヤンが絶好調。その他、香川真司選手は途中出場が多いようですが、フィリップ、プリシッチなど、計19得点しながら、失点はたったの1と文句のつけようのない成績を挙げているものの、何故かCLでは1節のトッテナム戦に3-1で黒星スタートしています。うーん、これまでマドリーのジグナル・イドゥナ・パルクでの成績は3分け3敗とまだ白星がないのはちょっと心配とはいえ、火曜午後8時45分からの一戦では撃ち負けないでくれるといいですね。

▽そして翌日曜はヘタフェ(マドリッド郊外)にメトロ10号線とメトロ・スールを乗り継いで向かった私でしたが、そこでは予期しないgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)にお目にかかることに。いえ、前日の兄貴分同様、前半をスコアレスで終え、柴崎岳選手の欠場が響いているのかなという印象もあったホームチームだったんですけどね。後半には秘密兵器が炸裂。それは後でボルダラス監督も「Le damos mucha importancia al balon parado y hemos conseguido el premio/レ・ダモス・ムーチャ・インポルタンシア・アル・バロン・パラードー・イ・エモス・コンセギードー・エル・プレミオ(ウチはセットプレーを重要視していて、ご褒美を手に入れた)」と満面に笑みを浮かべていた、週2回の非公開練習の成果だったんですよ。

▽ええ、後半8分にはCKからカラのヘッドをアンヘルがゴール右前から頭で押し込み先制したかと思えば、いえ、18分の2点目はモリーナがセメドのパスミスを敵陣エリア前で奪って決めたんですけどね。24分にはFKからカラのヘッドはGKバルボサに弾かれたものの、ベルガラがこぼれ球を3点目に。ロスタイムにも最後の仕上げとばかり、アンヘルが再びFKからヘッドで4点目を入れているんですから、ビックリしたの何のって。もちろん、その日のビジャレアルのように集中力を欠いたチームも珍しいですけどね。まだ左足の第5中足骨のヒビを手術して治すか決める検査が残っており、復帰時期が見えない柴崎選手もこれには安心? それともアンヘルやアルバロ・ヒメネスに先発の座を固められてしまう方が心配でしょうか。

▽そんなヘタフェはミッドウィークの苦行も今週はなくなり、土曜のデポルティボとのアウェイ戦にも余裕を持って臨めることになったんですが、その日の朗報はまだ終わらず。そう、丁度、駅から自宅への帰り道、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)でもう1つのマドリッドの弟分、レガネスが終盤に差し掛かっていたんですが、こちらも後半に入って掴んだボーヴュのゴールによる1点リードを必死で守っているだけかと思えば、ロスタイム最後のプレーで再びシマノフスキが絶妙のラストパス。今度はエラソが決め、ラス・パルマスに0-2と勝ったため、マドリッドの4チームが全て白星という最高の週末になることに。

▽いえ、月曜の試合でサンティアゴ・ベルナベウでマドリーに勝って勢いに乗るベティスがレバンテに4-0で勝ったため、彼らはヨーロッパリーグ出場圏の6位から7位に落ちてしまったんですけどね。1つ上の大先輩、マドリーとたった勝ち点差1だけというのは大いに胸を張っていいかと。ただ次節はもう1つの兄貴分、アトレティコをブタルケに迎えるため、そうそう浮かれてもいられないんですが、それが終われば世間は各国代表戦ウィークに突入。ほとんど招集される選手がいないレガネスにとっては願ってもない練習漬けの2週間になるため、ここでマラガ戦の後はアスレティック・ビルバオ、セビージャ、バレンシアと続く、格上チームとの戦いを乗り切る力をつけてくれるといいですよね。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。