公衆衛生の専門家が指摘する「店頭陳列」食品の注意点

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店頭に陳列していた総菜が原因とみられる食中毒で、子供が亡くなるという痛ましい事故があった。スーパーやお弁当屋さんなど店頭陳列の食品を購入する機会は多く、他人事ではない。公衆衛生の専門家に店頭陳列の食品における注意点などを聞いてみた。

■ 食中毒防止の3原則とは

北里大学医療衛生学部公衆衛生学研究室の伊与亨先生は、まず「食中毒防止の基本原則は、付けない、増やさない、殺す、の3つです」と話す。

食材をラップして密封するのは「付けない」、冷蔵庫に入れて温度を下げるのは「増やさない」、包丁やまな板を熱湯や漂白・除菌剤などで消毒するのは「殺す」に当てはまるそうだ。

一連の食中毒では、取り分け用のトングの使い回しが問題視されているが、他にどういった危険性が考えられるのか。店頭に陳列した食品を購入する際の注意点を伺おう。

「まず陳列棚の高さに注意する必要があります」と伊与先生。「あまり低いと、従業員や客が歩いて立てた埃や汚れが舞います」と理由を説明し、「少なくとも60cmは必要です」。2Lサイズのペットボトルの高さが概ね30cmなので、その2倍を目安に確認してみよう。

■ バックヤードの保管状況も大事

次に「上面が開放となっている保冷庫の温度管理がしっかりとしているでしょうか。上面にある食品はしっかりと冷気にさらされているでしょうか」と注意を促す。定期的に温度チェックをしているか、食材を詰め込み過ぎていない(詰め込みすぎると室温の空気に触れて温度が上がる)かが重要なポイントという。店員の動きを見ていれば分かるだろう。

またバックヤードでの保管状況も、その店の衛生管理体制を推し量る大事な情報源になる。

伊与先生によると、冷蔵庫で保管する際は、下段の下段:解凍品→下段の上段:野菜、卵、下ごしらえをした野菜→上段の下段:漬物、飲み物など→上段の上段:加熱処理した調理品、サラダ、殺菌処理した生野菜などと区分し、冷凍庫に保管する際は、上から順に加工食品など麺類→野菜、肉、魚など――と管理するのがそれぞれ正しい。

冷蔵・冷凍庫内に限らず上下で温度差があるのは常識。従業員に知り合いがいるようなら、きちんと理にかなった保管をしているのか、ぜひとも確認したいところだ。

■ 食中毒予防のシーン別ガイド

予防策を知る手段として、伊与先生が閲覧を奨めるのが、厚生労働省のサイトに掲載されている「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」だ。

食品の購入、家庭での保存、下準備、調理、食事、残った食品――と予想される様々な場面での適切な対処方法が列記されている。

そして、これに加えて確認したいのが、電子レンジやオーブンレンジによる再加熱の効果だ。多くの家庭で実施されているはずだけに非常に気になる。恐る恐る尋ねると……

「よく間違えられるのは、火を通せば大丈夫ということですが、火を通しても食中毒は防げないことがあります」と警鐘を鳴らす。詳しい理由を聞いてみよう。

■ 電子レンジで再加熱に期待するな

「細菌性食中毒は、毒素型と感染型に大別されます」と伊与先生。黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌が前者で、腸管出血性大腸菌O157が後者に当たる。

伊予先生は「毒素型は細菌が増殖して産生した毒素によって食中毒を起こしますが、この毒素は火にかけても失活しません」とし、「電子レンジやオーブンレンジでの再加熱で、殺菌による食中毒予防を期待することはやめておいた方が無難となります」と結論づける。

さらに「食中毒は、毎年、1000人から3000人発生しています。患者数も2万人から5万人で推移、死者数は10名前後となっています」と述べ、「食中毒リスクをゼロにすることはできませんので、発生確率を可能な限り低くし、食中毒が起きた際の被害を最小限にとどめることが必要でしょう」と呼び掛ける。

そして「ちなみに、生でそのまま食べられる野菜(キャベツ千切りなど)でも、肉でも魚でも、細菌がその表面に付着しています」と付け加え、「カット野菜では1袋に10万個、肉では1g当たり数万、魚は1g当たり数千という測定結果を得たことがあります。断片的な測定ですが。」と驚愕の事実を伝える。

「ただし、細菌などの微生物がいるから危ないということはありません。この世の中は菌だらけです。結局、食中毒リスクを科学的に正しく畏れるということが食中毒対策の基本となります」(伊与先生)

リスクを甘く見たり、思い込みで対策をするのではなく、科学的な知識に基づいて正しい対策をとることが、食中毒被害に遭わないための基本というわけだ。

食中毒は先ほど紹介した厚労省のサイトに掲載されているような簡単なことをきちんと守れば予防できるとのことだ。

「教えて!goo」では「あなたが実践している食中毒予防法は?」ということで皆さんの意見を募集中だ。

(武藤章宏)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)