マンチェスター・シティの監督2季目を迎えたジョゼップ・グアルディオラ【写真:Getty Images】

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大金を投じた甲斐があったSBの入れ替え

大金を投じた甲斐があったSBの入れ替え

 イングランド・プレミアリーグ第6節終了時時点で首位に立つマンチェスター・シティ。ジョゼップ・グアルディオラ監督が就任後2季目を迎え、その攻撃力をいかんなく披露している。特に9月の代表ウィーク明けからはリーグ戦3試合で16得点を記録。圧倒的な勝ちっぷりを見せるチームに死角はあるのか。(文:山中忍【イングランド】)

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 9月23日の6節クリスタルパレス戦(5-0)を終え、プレミアリーグ首位に立つマンチェスター・シティ。開幕から1引分けのみの無敗で、代表ウィーク明け後のリーグ戦3試合では計16得点0失点という勝ちっぷりからすれば、扇動的な大衆紙などが早々と「王者の証」と騒いでもおかしくはない。

 シティ評が「優勝有力候補」の域に留められている理由には、得失点差で2位のジョゼ・モウリーニョ率いるマンチェスター・ユナイテッドの存在もさることながら、前回の反省もあるのだろう。昨季のシティは、今季の滑り出しを上回る開幕6連勝。新監督のペップ・グアルディオラが「いきなり国内外4冠か!?」と、言われた当人が呆れるほどの勢いで騒がれた。だが、結果は無冠だった。

 しかし、今季のシティは昨季とは違う。グアルディオラ体制2年目の“攻撃マシン”は、明らかにスケールアップを遂げている。アーセナルからのアレクシス・サンチェス引き抜きに失敗したように、看板の攻撃陣に新たな大物が加わったわけではない。だが、大物獲得なみの予算を費やしたSB陣の入れ替えが既に功を奏しているのだ。

 新たな左右のレギュラーは、バンジャマン・メンディとカイル・ウォーカー。守備に戻る走力も体力も充分な両SBは積極果敢に攻め上がる。しかも、グアルディオラ体制下のアップダウン部隊は、単にタッチライン沿いを走ってクロスを放り込むだけではない。

 アタッキングサードでの連係にも絡む。必然的に対戦相手の守備陣はアウトサイドに意識や頭数を割かざるを得ず、ピッチの中央で、指揮官が好む「長くても6m前後」のパスをつないで敵を攻め崩しやすい状況が生まれる。

 そのスペースで、CFのセルヒオ・アグエロや、チャンスメイカーのケビン・デ・ブライネとダビド・シルバといった顔ぶれが、持てる能力を遺憾なく発揮するというわけだ。

中央でのプレーがすっかり板についてきたデ・ブライネ

 中でも、中盤中央でのプレーが板についてきたデ・ブライネは、6節までのリーグ戦アシスト数こそシルバに6対3でリードを許しているが、攻撃の中枢としての重要度ではコンビを組む相棒を凌ぐと言ってもよい。

 攻撃の糸を引き続けて各紙でマン・オブ・マッチの評価を得た4節リバプール戦(5-0)は、強豪対決で10人になった敵に容赦なくとどめを刺した点でも、今季の違いが確認された勝利となった。

 昨季のシティは、ポゼッションでの圧倒的な優位を得点差に反映できない試合が次第に増えていった。トップ6対決では、チェルシー、トッテナム、リバプールに勝てず、ユナイテッド戦とアーセナル戦での白星も2?1の辛勝だったのだ。

 今季のリバプール戦後、グアルディオラは、アグエロが3-5-2システムの前線でコンビを組んだガブリエル・ジェズスに施したアシストを殊更に喜んでいた。昨季のアグエロは、後半戦のジェズス加入でエースの座が危うくなった。

 それが再び先発の機会が増え、周囲からのチャンス供給も更に増えた今季は、自らもゴールを狙えた場面で20歳の後輩に得点機を譲る心の余裕すら見せて乗っている。

 プレミアで自身6度目のハットトリックを決めた5節ワトフォード戦(6-0)などは、アグエロによる3ゴールだけを例にとっても、シティの攻撃がより円滑で多彩になっていると理解できる。

 1点目のヘディングは、攻撃参加を見せたCBジョン・ストーンズが奪ったFKから、デ・ブライネが放った絶好のクロスに合わせたもの。2点目は、左サイドを突破したジェズスからシルバを経由したボールが、ゴールに走り込むアグエロの足元に届けられた。相手選手4名の間を自ら持ち込んで決めた3点目、ドリブルのきっかけは右サイドを上がったウォーカーからのボール供給だった。

注目を集める次節チェルシー戦の行方

 このリバプールとワトフォードとの試合では、レロイ・サネがベンチスタートだったのだから贅沢な話だ。続くクリスタルパレス戦、4-1-4-1の2列目右サイドで先発の機会を与えられたサネは、期待に違わぬ1ゴール2アシストの活躍でチーム内最高の貢献度を示している。

 うち1アシストは、逆サイドのラヒーム・スターリングへのクロス。共に20代前半の両名には、グアルディオラの下でポジショニングや、ペナルティエリア付近でのシュートとパスの判断といった選手としての知能を高められた跡が窺える。

 サネのお膳立てによるゴールは合わせるだけでよかった類だが、中央のスペースをスルスルと上がった賢い動きがあればこそ、絶好機を得てシンプルなフィニッシュが可能になった。

 圧勝が相次いでも、監督のグアルディオラは「改善の余地はあるし、まだ9月だ」と、メディアの逸る気持ちを抑制するかのように語っている。身上とする攻撃は、敵がボールにも選手にも近づけない時間帯さえ珍しくない見事さだ。
シティ指揮官の発言に頷ける部分があるとすれば、それは守備面だろうか?

 5試合が格下との対戦だった6節までのリーグ戦では、開幕前にベテランで怪我の多いヴァンサン・コンパニへの依存度がいまだに高いと見られていた守備力が、さほど試されてはいない。

 かといって不安を覗かせなかったわけではなく、クリスタルパレス戦では、リーグ戦で無得点のまま連敗中の敵に先制される危機を、ゴールポストと相手のシュートミスに救われた。

 ワトフォード戦でも、FKからのクロスに反応した敵のヘディングが枠外で事なきを得た。この2試合の間に行われたリーグカップ3回戦では、CKの流れからノーマークの状態でウェストブロミッジに得点を許している(2-1)。

 そこで、より一層注目されるのが次節チェルシー戦。6節でストークを料理し(4-0)、3ポイント差の3位につけている昨季王者を相手に、敵地で戦うビッグゲームでも昨季とは違うシティの姿を披露できるか? その答えが「イエス」となれば、いよいよメディアも我慢できなくなり、結果を伝える翌日10月1日の国内紙では「優勝」や「王者」といった言葉が、今季のシティに用いられているはずだ。

(文:山中忍【イングランド】)

text by 山中忍