筆記具には“なり”がある。年齢なり、とか、立場なり、というやつだ。

 

個人的には「年齢も立場もさておき、自分の手にあった書きやすいものを使えばいいじゃないか」と思っているが、大人の社会で暮らしている以上、そういう“なり”にも気を遣わねばならないことも知っている。

 

ハイクラスになれば高級(または高級に見える)筆記具はいくらでも選べるし、まだ若かったりして“なり”が気にならない人なら、それこそ選び放題だろう。ではなくて、「そういうのに気を遣うほどの年齢でも立場でもない、でもそろそろ気を遣った方がいいかな……と思い始めたあたりの人」に最適な筆記具というのが、意外と文房具業界的にブランクなのである。

 

高級感があり過ぎず、かといって見た目が安過ぎず、こだわってる雰囲気も出せて、できれば書き味も気にしたい……。そういう面倒くさい要望に、わりとフィットするペンが最近発売されたので、紹介しておこう。本人が買っても良いし、そういう面倒なお年頃の人にプレゼントするにもちょうどいい感じなのだ。

↑サクラクレパス「SAKURA craft_lab 001」全5色 各5400円

 

「SAKURA craft_lab 001」は、クレパスやクーピーペンシルでお馴染み、サクラクレパス製のゲルインクボールペン。

 

年齢なり、と言っておきながらサクラかよ! と言うなかれ。SAKURA craft_lab 001(以下、001)は、学童画材のイメージが強いサクラクレパスが、サクラブランドとして初めて大人向けに開発した新ジャンルのペンなのである。

↑パッケージは、金色のクリップで綴じてあるなど、そのままプレゼントにできそうなオシャレ感

 

ボディは真鍮削り出しのソリッドな軸に、磨りガラス風の加工を施したアクリルを被せたもの。

 

このスモーキーなアクリルを通して下地の真鍮軸をうっすら透けて見せることで、アクリル部分に鈍い光沢を出す、という手の込んだ演出が施されている。また、このアクリルのおかげで、見た目にも大人感を出し過ぎず、ほどよく高級な印象でまとまっている。真鍮部分は使い込んでいくうちに表面が酸化して風合いを増してくるので、新品の状態ではピカピカのグリップも、やがてアクリルと同じく渋味のある表情になっていくはずだ。

↑真鍮の上に、アクリルを被せてあるのが見てとれる

 

ペン先の繰り出しになっている頭冠は、オールドカメラのダイヤルをイメージしたもので、その頂にはクレパスのパッケージなどでお馴染みのサクラマークが刻印されている。ボディには、ほかにメーカー名・製品名など文字情報が一切なく、サクラ製だと示すのはこの頭冠の刻印だけ、というシンプルさである。

↑サクラマークの刻印がキリッとりりしい印象

 

無垢の真鍮から削り出して作っただけあって、実際に握ってみるとかなりの重量感がある(実測で約34g)。一般的なノック式ボールペンが10g前後なので、単純に3倍以上重い。金属製の軸に慣れていない人だと、おそらく最初のうちは長時間筆記をしていると指に疲労を感じるはず。

↑指に乗せるとズッシリと重い34g。バランスは取れているので書きにくさはない

 

とはいえ、この重量感にはすぐ慣れるので、さほど問題はないだろう。むしろ、真鍮まんまの平滑なグリップが滑りやすいため、指先に力を入れて握ってしまうほうが、疲労につながりそうだ。手汗をかく人には辛い仕様である。

 

インクはボディのアクリル色に揃えたグリーンブラック・ボルドーブラック・ブルーブラック・ブラウンブラック・ブラックという、黒系の5色展開。

↑黒にこだわった5色のインク。どの色も、ビジネスシーンで違和感なく使えるだろう

 

昨年にはゼブラのサラサシリーズでも同じようなカラーブラックが『ビンテージカラー』として発売されたが、001の方がより暗くブラックに近い色味である。一見するとブラックだけど、よく見るとうっすらグリーンがかっている……という感じ。書類などに使いたいのでインクはブラックがいいが、でも単なるブラックじゃなくて他人とは違うこだわりを出したい……という主張には、ちょうどいいところだろう。

 

筆記感は、ゲルインクとしてもインクフローはかなり多めでなめらか、リッチな印象だ。ずっしりしたボディの重さを感じながら、インクが少し紙に染み込むのを味わうぐらいに、ゆっくり書くのが似合うペンだと思う。

 

外見・インク色・筆記感とも大人な印象をキープしつつ、「単なる高級品とはちょっと違う」アピールができるペンとして、かなりオススメの1本である。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。