今季のリバプールを象徴するかのような一戦だった。

 9月23日に行なわれたプレミアリーグ第6節のレスター・シティ戦。15分で先制し、20分経過時に78%のポゼッションを記録したリバプールは、その3分後に2点目を奪取した。23分という早い時間で2点のリードを奪い、完全に優位に立ったように思われたが、前半終了間際に岡崎慎司のゴールで失点。後半は立ち上がりから浮き足立ったプレーが目立ち、特に守備陣は盤石とはほど遠い動きを見せた。


ゴールを決めて雄叫びをあげるフィリペ・コウチーニョ(右)

 それでも、ゴールを奪おうと猛攻を仕掛けたレスターをカウンターで叩き、3-1にしてふたたび2点のリードを奪うことに成功。片手に勝ち点3が乗ったと思いきや、その1分後にFWジェイミー・バーディーにゴールを許し、またも1点差に詰め寄られる。

 さらにその3分後には、GKシモン・ミニョレの不用意な飛び出しからPKを献上……。この大ピンチはベルギー代表GKのセーブで切り抜けたが、ジェットコースターのようなアップダウンの激しい薄氷の勝利だった。リバプールサポーターにとっては、極めて心臓に悪い試合だったのではないだろうか。

 苦戦の要因は、一向に安定しない守備陣にあるのは明白だ。

 岡崎のゴールはGKへのファウルだったとの声もあるが、そのレスターの1点目は今季失点を重ねているセットプレーから。開幕時から不安定な守備を繰り返すDFデヤン・ロヴレンはこの試合も安定せず、いとも簡単にDFラインの裏を取られた。

 9月16日に行なわれた前節バーンリー戦でも、リバプールの拙い守備は散見された。コーナーキックやロングスロー時にはマークミスからフリーでシュートを打たれ、なぜかMFエムレ・ジャンとDFラグナル・クラヴァンの味方同士が空中戦を競り合うシーンもあった。その3日前に行なわれたチャンピオンズリーグのグループリーグ・セビージャ戦でも守備陣は足を引っ張り、なんてことのないクロスボールをロヴレンが空振りして失点。解説者のアラン・シアラー(元ニューカッスル・ユナイテッドFW)は「この守備でプレミアリーグの頂点に立つのは不可能」とまで言い切った。

 批判の声は、指揮官のユルゲン・クロップにも向けられた。守備の強化は昨シーズンからの継続課題だが、センターバックを補強することなく夏の市場を終えたことがその理由だ。指揮官はセンターバックの獲得に動いていたと強調しているものの、ターゲットのDFフィルジル・ファン・ダイク(サウサンプトン)を取り逃したこともあり、強化策に疑問の声があがった。そして、9月に入ってからは公式戦の4試合で未勝利(2敗2分け)。いつも笑顔を絶やさないクロップ監督も、さすがに表情が冴えなかった。

 その意味でも、レスター戦の勝利で連続未勝利記録をストップした意義は大きい。「首位に5ポイント差まで開いて批判する者もいるが、私の見解は『すべてポジティブである』ということ。まだタイトルレースにも残っている」と、試合後のクロップ監督は語気を強めていた。

 また、攻撃陣が好調な点も心強い。特に夏の市場でバルセロナへの移籍が取り沙汰されたMFフィリペ・コウチーニョが1ゴール1アシストの活躍を見せたことには、クロップ監督も胸を撫で下ろしたに違いない。きれいな弾道を描いて叩き込んだ直接フリーキック、ピンポイントでスコアラーのFWモハメド・サラーに合わせた高精度クロスに加え、スルーパスやボールテクニックでも攻撃陣を引っ張った。

「コウチーニョがトップフォームに戻った」

 イギリス公共放送の『BBC』はブラジル代表MFをMOMに選出し、解説者のダニー・マーフィー(元リバプールMF)も「コウチーニョが違いを生んだ」と絶賛していた。

 さらに、新加入ながら今季4ゴールを挙げているサラー(前ローマ)も、最終局面の仕掛けの切り札として機能。マンチェスター・シティ戦における退場処分で出場停止中のFWサディオ・マネはレスター戦に出場できなかったが、彼も決定的な仕事を連発してエースの風格を漂わせ始めている。そんなリバプールの印象を岡崎慎司は、「選手個々のクオリティが高い。コウチーニョを筆頭に、みんなレベルが高いと思いました」と話していた。

 今年6月で50歳になったクロップ監督は、今季のチームについて次のように語る。

「セットプレー時の守備は完璧だが、サッカーの仕方を知らないチーム。もしくはまったく逆のチーム、つまりサッカーで人々を魅了できるが、セットプレーの守り方を知らないチームがあるとしよう。『どちらを取るか?』と聞かれたら、わたしは後者のチームを選ぶ。セットプレーで失点を重ねている今でも、その考えは変わらない」

 攻撃陣には力強さが目立つ一方、守備陣は心もとない。そんな前傾姿勢の強いチームをクロップ監督がいかに仕上げていくのか――。在任3季目を迎えたクロップ体制に注目したい。

■海外サッカー 記事一覧>>