今年度から日本サッカー協会(JFA)審判委員会は、「JFAレフェリーブリーフィング」を定期的に開催している。内容は、Jリーグでのレフェリーの判定を詳しく説明するというものだ。

まず1つのプレーに対して2つの角度から映したビデオが流され、出席した記者たちは自分ならどう判定するか、挙手したりシートに書き込んだりする。その後その後、本当はどうだったのかスロービデオを元に解説が行われる。

スローモーションまで見ても記者の意見が真っ二つに割れることもある。また、なぜ間違った判定が起きたのか説明されると、納得させられてしまう事例もある。

そんな事例の一つが8月26日、磐田vs神戸であった。神戸の渡部博文がロブのシュートを手で跳ね上げ、ゴール直前でクリアしたのだ。放送用映像には渡部が手で意図的にボールを叩く場面がしっかりと映っていた。

ところが主審と副審はこのハンドリングがわからなかった。それはなぜか。

実はビルドアップの際、DFが相手選手にぶつけるという想定外のミスを起こしてしまった。パスがつながるものと思って、センターライン方向に向かって走り出していた主審にとっては「まさか」という事態だっただろう。

ところが一気に攻守が入れ替わり、主審は慌ててペナルティエリアに向かって、攻撃側の選手と飛び出したGKのプレーを見極めるためダッシュした。その主審が走って行った位置からは、シュートされたボールと頭と手が一直線になってしまったのだそうだ。反対側の副審からは、手と頭とボールがこれまた一つのラインに並んだ。しかも手ではたき落としたのではなく、ポンと上に上がったので、頭に当たったように見えてしまったという。

主審や副審にとっては悪夢のような出来事だっただろうし、不可抗力にも思える。だが、このプレーを正しく判定する方法もある。

それはルヴァンカップで行われているように、ゴールの横にさらに副審を追加すること。それから海外では一部始まっているVAR(ビデオアシスタントレフェリー)を導入することだ。そうすればピッチを見つめる目は増えるし、ビデオも判定の役に立つ。

すぐにでも実現したらどうか。特にVARについては、DAZNが試合を放送している現在、審判の4人以外は、多くの人たちがスマートフォンを使ってすぐに実際のプレーを確認できている。判定を下す人間だけが、自分たちの目だけで判断しなければならないのだ。

小川佳実審判委員長はVAR導入の必要性を認識しながらも、実施時期について明言を避けた。問題は審判委員会が変革の時を迎えていることだ。

審判委員会は草の根からトップリーグまで、すべてのレフェリーを管轄している。JリーグでVARなどを導入しようと思っても、その下のカテゴリーまでのことを考えながらではないと決断できないのだ。

では海外ではどうなっているか。JFAレフェリー戦略経営グループシニアマネジャーのレイモンド・オリヴァー氏はヒントを持っていた。イングランド・プレミアリーグなどプロリーグを担当するレフェリーは別の組織にも所属し、手厚いサポートなどを受けているのだそうだ。

同じような組織を日本で実現しようとすると、まず費用をどこから捻出するかという問題がある。また、どう組織を作るのかも議論を進めなければいけないだろう。

しかしノンビリやっている暇はない。これまで以上に観客が大きな不満を抱えるインフラはもう整っているのだ。審判委員会、JFA、そしてJリーグの一日でも早い決断が待たれる。

【日本蹴球合同会社/森雅史】