「安倍首相はトランプ大統領の忠誠心ある相棒(sidekick)だ」――この8月、こんな見出しの記事が米国の大手紙、ウォール・ストリート・ジャーナルに大きく掲載された。

 また9月には、ニューヨーク・タイムズが「トランプ大統領は日本の安倍首相こそを友人だとみなしている」という見出しの長文の記事を掲載した。

 安倍首相とトランプ大統領の親しい関係は国際的に知られているが、米国では、その親密な仲にさらに関心が高まり、国際関係や日米関係の専門家たちまでもが正面から論評するようになった。

 日米首脳のこの異様なほどの緊密な絆は、果たして両国を利するのか? 日本にとってプラスなのか、あるいは危険なリスクをもはらむのか? 多様な意見を総合すると、米国でのこの「日米相棒関係」への評価は、いまのところ前向きのようである。

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北朝鮮問題のせいだけではない会談の頻度

 安倍首相とトランプ氏は、トランプ氏の大統領就任前から親しい関係だった。トランプ氏が大統領当選後に初めて会った外国の首脳は安倍氏である。しかもトランプ氏の私邸「トランプタワー」での、同氏の家族を交えての親しげな会合がスタートだった。

 その後も、安倍首相はイギリスのメイ首相に続いて2月には早々とトランプ大統領との首脳会談を果たし、フロリダ州の別邸に招かれて滞在するという厚遇も受けた。この会談中には北朝鮮が弾道ミサイルを発射したため、トランプ、安倍両氏は北朝鮮への非難や制裁の強化を共同で訴え、期せずしてさらなる連帯を世界に誇示する結果となった。

 その後も両氏は頻繁に連絡を取り合い、北朝鮮が核爆発実験を断行した9月上旬までに、顔を合わせての会談を計3回、電話での会談を計13回行った。8カ月間で13回という電話会談の回数は、オバマ前大統領の2期目の4年間における電話会談の回数をすでに上回っているという。

 北朝鮮の核とミサイルの脅威の増大が、安倍・トランプ会談の頻度を高めたことは間違いない。9月3日に行われた北朝鮮の6回目の核実験の前後には、両首脳は1週間に3回の電話会談を行っている。

 とはいえ、トランプ大統領は韓国の文在寅大統領とは、核実験の翌日の9月4日に1回電話会談をしただけである。一方、安倍首相とは、実験の翌日から3日間のうちに2回電話で会談している。安倍・トランプ両首脳が特に親しいのは、北朝鮮問題のせいだけではないと言えそうである。

 この「相棒関係」のおかげなのか、トランプ大統領の言動が世界各国の首脳から批判されても、安倍首相がトランプ大統領を批判することはまずない。たとえばトランプ政権が「パリ協定」からの離脱を決めた際、主要国のほぼすべての首脳や政権から批判を浴びた。また、米国南部のシャーロッツビルでの人種がらみの紛争に対し、トランプ大統領が白人至上主義に寛容とみえる対応を見せた際も、やはり世界各国から批判された。だが、安倍首相はいずれのときも批判に加わらなかった。

安倍首相が「努力」して信頼を得た?

 では、安倍、トランプ両氏はそもそもなぜこれほど親密なのか。

 まず米国のメディアが頻繁に指摘するのは、「両者ともに保守主義者でナショナリストだから」とか「性格的にも相性が良いから」という理由である。しかし、米国の日米関係専門家らは、それ以上に深い理由があると解説している。

 以下は、米国メディアが伝えた、そうした専門家たちによる説明である。

「トランプ大統領は間違いなく安倍首相に対して『親しい友人』という感じで対応している。安倍首相は米国新大統領とのこうした関係を一生懸命努力して築いたと言える」(シーラ・スミス外交関係評議会日本研究者)

「安倍首相はトランプ大統領に対して、超大国の最高指導者としての重要性を認め、その発言にも賛意を表明して信頼を得た。この種の国際的な首脳レベルでの賛同は、トランプ大統領にとって不可欠である」(スタンフォード大学東アジア研究所講師のダニエル・スナイダー氏)

「安倍首相は、予測困難で奇矯な言動の多いトランプ大統領をうまく誘導することができた数少ないアジアの首脳だと言える。そうした誘導は、安倍首相自身と、そして日本にとって実質的に有利な材料となる」(前オバマ政権国家安全保障会議アジア部長のエバン・メディロス氏)

「トランプ大統領は世界的に不人気かもしれない。だが、対処の難しい米国の新大統領にうまく対処できる方法があるのなら、日本の首相としては当然それを目指すだろう。それは日本の安全保障などの国益に資することになる」(元ブッシュ政権国家安全保障会議アジア部長のマイケル・グリーン氏)

 一方、米国の識者の間には、安倍・トランプの「相棒関係」について「安倍首相が米国大統領に追従しているようにみられる」「安倍首相は、トランプ大統領の政策に反対する国の首脳との友好が難しくなるのではないか」という批判的な論評も見受けられる。

 だが全体としては、日米首脳の特別に親密な関係は、いまの日本にとってプラスの材料になるという見方が多数を占めるようだ。

筆者:古森 義久