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直近の航空業界トピックスを「ななめ読み」した上で、筆者の感覚にひっかかったものを「深読み」しようという企画。今回は、ピーチ・アビエーションの那覇=香港線運休とJAL×トリップアドバイザーの協業について取り上げたい。

ピーチ、那覇=香港線を運休、10月29日から

ピーチ・アビエーション(MM)は8月22日、10月29日からの2017年冬ダイヤを発表。週3便で運航中の那覇=香港線を運休する。同路線は那覇空港から2路線目の国際線として、2015年2月21日より週4往復8便で運航を開始し、LCC初の那覇=香港線、また、本邦航空会社の定期旅客便としては12年ぶりの開設だった。

○香港空港のスロット問題も原因のひとつ

ピーチの路線休止の判断はLCCらしくスピーディだ。これまでにも、成田=新千歳/那覇や那覇=石垣などを運休しているが、ピーチにとっての判断根拠が「利用率のガイドライン」という単純な図式ではないだろう。

エアラインが路線休止を決める時に考慮するのは、「路線採算を改善できる可能性があるか」ではあるのだが、それを判断する上ではいくつかの要件が複雑に絡む。なぜ採算を確保できないかの分析を行い、その要素を排除できるかの検証となる。成田路線の休止では、便数競争力が弱く増便もできない、那覇=石垣は便数に加えて運賃が競合他社と差別化しにくくLCCとしての優位が確立できないという状況にあり、今回の休止を決断したものとみられる。

ただ、路線を休止してもその路線に課せられている固定費(空港の賃料、人件費、機材費、本社コストなど)は他の路線に振り分けられるので、休止しても損失分がまるまる改善するわけではない。休止によって浮いた機材と乗員をより有効活用できる代替路線の有無も、大きな要素となるわけだ。

これに加え、那覇=香港線の場合は「週3便」という問題があった。通常、地方路線の国際線の場合は、外国LCCが週3便で運航するケースは多々あるが、これは3〜4日の旅行パターンを組める曜日で運航すれば十分に観光客を積み取れる、デイリー運航するには需要が不十分などの要素からの自然な帰結である場合が多い。しかし、前提条件として「主基地からの運航」であることが必要になる。主基地以外では「運航しない曜日」にどのように機材を稼働させるか、が大変になるからだ。沖縄からではこの点が厳しかったと思われる。

加えて、香港空港のスロットは現在非常にタイトな状況で、各国エアラインにとって新規枠を獲得することが難しくなっている。エアアジアグループはここ5年間の拡大拠点としてマカオを活用すると表明しているし、香港エクスプレスも香港空港のスロットが計画通りに取れなければA320neoの発注テンポを見直し、A321ceoへの大型化を検討するなど、日本の各空港のエアポートセールスにも影響を与えかねない状況となっている。今後、国際線への進出を計画するハイブリッド各社(エア・ドゥ、スターフライヤー、ソラシドエア)の選択肢も狭められている。

日本のLCC各社も急テンポの事業拡大を検討しているが、中国本土も含めアジア各空港のスロット問題はますますクリティカルな問題となっていくだろう。

JAL×トリップアドバイザー、訪日旅客の国内旅行需要喚起で協業

日本航空と世界最大の旅行サイト「トリップアドバイザー」は9月11日、新たにトリップアドバイザーが立ち上げる日本特集サイトで情報発信し、訪日客の国内旅行を喚起する取り組みを共同で始めると発表した。10月中旬以降アジア太平洋地域13カ国のトリップアドバイザーのサイトで公開する。

○中立的な「自分が信頼できる人」の声を生かす

JALとトリップアドバイザーの提携は大変興味深いテーマだ。2017年に入り、航空大手2社の地域創生に絡めた各種の提携が相次いでいる。ANAはホールディングス本体、ANA総研・セールス等を通じ、高知県、徳島県、静岡県、福島県、竹田市、釧路市などと包括提携や営業連携協定を、JALは新ジャパンプロジェクトなどを通じ、秋田県、熊本県、岩手県、福井県や各種地元団体との提携を行なっている。

地元宿泊や観光リソースを組み込んだパッケージ商品の販売など、分かりやすい事例はあるものの、これらの提携があまり響かないのは、総じて「具体的に何をするのか」「それが地方や航空会社にどんなベネフィットをもたらすのか」が曖昧模糊としており、さながら実の薄い「地域の囲い込み合戦」と映るからではないだろうか。

また、地方の側からすれば、最初にどちらかと提携を結ぶことでもう一方のグループが離れるようなことがあっては、結果的に地元住民の選択肢を狭めることになるので、提携協力大手エアラインの片方だけと行うのは痛し痒しとも言える。現実を見ると、各種提携によってインバウンド旅客を地方に取り込もうとするものの、打ち手が的を得ていないものも多く、「誘引効果」が実感できないという側面は否めない。

しかし、トリップアドバイザーは別格の強みを持つメディアチャネルである。地方の雑貨店、レストランなどが外国人客であふれている光景を見るが、お店の人たちは特に告知を発信していない。トリップアドバイザーやフェイスブック、ツイッターによる情報拡散の効果である。最近は動画の見せ方がポイントのようだが、ミソは「広告は効かない」ところで、訪日外国人たちは友人や有名ブロガーなど「自分が信頼できる人」の推しや、友人に自慢できる体験をしたいという欲求によって行動する構図であるため、企業告知・広告という面でのSNSメディアとの「具体的な提携効果」は期待しづらい。

JALのリリースでも「今回の協業により、JALは訪日旅客専用運賃である『JAL Japan Explore Pass』を紹介することで国内線事業収益力の強化を、トリップアドバイザーは訪日旅客に対する更なる情報の充実を図ります」としている。外国人特別運賃は国内各社も提供していることからも、目先の収益よりも「観光庁受け」という効果の方が大きいようであるが、このような外国人に影響力を持つメディアとの提携によって多くの「知られざる日本のスグレモノ」がこれからどんどん世に出ることを期待したい。

○筆者プロフィール: 武藤康史

航空ビジネスアドバイザー。大手エアラインから独立してスターフライヤーを創業。30年以上に航空会社経験をもとに、業界の異端児とも呼ばれる独自の経営感覚で国内外のアビエーション関係のビジネス創造を手がける。「航空業界をより経営目線で知り、理解してもらう」ことを目指し、航空ビジネスのコメンテーターとしても活躍している。スターフライヤー創業時のはなしは「航空会社のつくりかた」を参照。