デザインのモチーフとなった京急電鉄の2100形電車(左)と並ぶ「KEIKYU OPEN TOP BUS」(記者撮影)

「赤い電車」で知られる京急電鉄が「赤い2階建て車」を導入――。

といっても、ライバルのJR横須賀線グリーン車に対抗して2階建て電車を走らせるというわけではない。同社が今秋から三浦半島で運行を始める2階建てバス「KEIKYU OPEN TOP BUS」のことだ。

オープントップの名のとおり2階席の屋根は開閉式で、高さ約3.5mの開放感ある空間から三浦半島の海や広々とした畑などの景観を楽しめる。京急によると、運行の形態やルートなどの詳細は近く公表するが、三浦半島の新たな観光の目玉として10月以降に運行を開始する予定という。

「ついついこだわりが…」

2階建てのオープンバスというだけでも注目を集める存在となりそうだが、なんといってもインパクトがあるのはそのデザインだ。座席指定列車の「ウィング号」や「快特」に使われる京急の代表的な電車、2100形をイメージしたといい、塗装はおなじみの赤と白の塗り分け。見た目はまさに「京急の2階建て車」だ。

当初は三浦半島の景観などをラッピングする案もあったというが、「いちばんインパクトがあってわかりやすく、『京急は面白いことをやってるな』と思ってもらえるように」(京急の広報担当者)と電車をモチーフにしたという。車内の壁や座席も2100形の内装を模しており、「やり始めたらついついこだわりが加速してしまいました」と、京急電鉄営業部の担当者は笑う。

前面は京急電鉄のキャラクター「けいきゅん」をモチーフにしたデザインで、ナンバープレートも「21-00」。一見白ナンバーのように見えるが、これは2019年開催のラグビーワールドカップを記念した特別仕様のナンバープレートだ。

バスはもともとオープントップ形の中古車で、「2100形仕様」への改装は、電車やバスなどの検査や修理を手掛けるグループ会社「京急ファインテック」の金沢事業所(横浜市金沢区)で約3カ月かけて行ったという。

電車そっくりの塗装は、電車用の色見本を基にバス用の塗料を調色。赤い部分はすべて塗装、白い部分は大半がラッピングで一部を塗装している。通常、塗料の色とラッピングフィルムの色をそろえるのは困難だというが、「白の色味を合わせるために約150色の(ラッピングの)サンプルを作成し、色合わせも5回行った」と、京急ファインテックの担当者はそのこだわりを語る。


オープントップの2階席。窓下の銀色の部分は金属製の部材ではなく、わざわざステッカーで電車の窓枠を再現した(記者撮影)

車内も2100形をイメージしており、運行時には補助席となる1階のシートは電車の座席と同じ青地に赤い水玉模様の生地に張り替えた。2階席も模様こそ異なるが、青と赤のカラーリングに変更。壁も2100形をイメージしたベージュ色のラッピングを施しているほか、一見すると金属製の窓枠に見える窓下の銀色の部分も「2100形(の窓枠部分)に極力近づけるために銀色のステッカーを張った」という凝りようだ。

ステッカーまでそっくりに…


1階席のシートは2100形電車と同じ生地で張り替えた(記者撮影)

さらに、電車の車内に貼られている座席番号のステッカーや、車両番号とメーカー名などを記した「車号銘版」も、このバスに合わせた内容で再現。「自撮り棒」の使用禁止を告知するステッカーは「電車内の『リュックは前に』のステッカーのイメージで新たにデザインした」という。

バスは京急電鉄が保有し、運行はグループの京浜急行バスが担う予定。京急では現在、三浦半島で遊覧バスなどは運行していないというが、今回の2階建てオープントップバスの導入によって「京急沿線外にも幅広くアピールし、観光活性化の起爆剤にしたい」という。

「鉄道やバスが好きな人にも楽しんでいただける『自信作』。ぜひいろいろな方に乗っていただきたい」と京急ファインテックの担当者。実は車体の4カ所に小さな「けいきゅん」のステッカーが貼られているといい、「これもぜひ探してみてください」。赤い2階建てオープンバスは観光客の人気を呼びそうだ。


「電車そっくり」にこだわったという車内のステッカー。上は「車号銘版」、下は携帯電話のマナー呼びかけと、オリジナルデザインの「自撮り棒禁止」(記者撮影)

三浦半島は、神奈川県内でもいち早く人口減少と高齢化が進んでいる地域として知られる。横須賀市は1992年の約43万5000人、三浦市は1994年の約5万4000人をピークに、2017年9月1日時点の推計人口は横須賀市が約40万1000人、三浦市が約4万4000人まで減少。三浦市の統計によると、1990年度に1万5365人だった京急線三浦海岸駅の1日平均利用者数も、2015年度には1万1701人に減った。

そこで重要となるのが、観光客の誘致による活性化だ。

三浦市の統計によると、1990年には年間600万人を超えていた来遊観光客数は、一時期は500万人台前半や400万人台後半まで減っていたものの、2015年には591万人まで再び増加した。考えられる要因として同市は、市によるシティセールスの推進や、三浦半島と城ヶ島が2013年に旅行ガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で二つ星を獲得し注目を集めたこと、貴重な自然環境が残る「小網代の森」が2014年に一般開放されたことなどに加え、京急が販売する企画乗車券の好調を挙げる。

広がるか「まぐろきっぷ」効果

京急が各種販売する企画乗車券の中でも特に人気を呼んでいるのは、2009年に発売を開始した「みさきまぐろきっぷ」。マグロ料理やレジャー施設の利用とバスのフリー乗車券、鉄道の往復をセットにした商品だ。京急によると2016年度は約15万7000枚を販売し、今年度はすでにこの枚数に迫る勢いだという。

先に挙げた来遊観光客数の統計は観光地・観光施設別の訪問者数を集計しているため、実際の観光客数より数字が大きく出る傾向はあるというものの、ピンポイントで特定の目的地を訪れるだけでなく、複数のスポットを訪れる人が増えたとみることができる。三浦市は観光客数に占める「まぐろきっぷ」利用者数については具体的に把握はできないというが、市内の飲食店や各種レジャー施設利用券を含む同きっぷは、回遊客の増加にも貢献している可能性が高そうだ。

三浦半島は京急沿線有数の観光地。1998年の空港線羽田空港ターミナル乗り入れ以後は羽田空港アクセス関連のPRが目立っていた京急だが、2016〜2020年度の中期経営計画では「都市近郊リゾート三浦の創生」を掲げており、グループとして三浦半島の活性化に注力する姿勢を示している。

「まぐろきっぷ」が人気を集める中に登場する京急の「赤い2階建て車」。バスの前面に描かれた「けいきゅん」の笑顔のような好結果を三浦半島にもたらすだろうか。