閑古鳥鳴く北朝鮮の港で拡張工事が行われる謎
相次ぐ核実験、ミサイル発射実験による国際社会の経済制裁で、貿易が先細りする一方の北朝鮮。それなのにどういうわけか、港の拡張工事が行われている。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、今年5月18日に北朝鮮最大の港、南浦(ナムポ)港を撮影した衛星写真を分析し、コンテナ埠頭の北東にある池を埋め立てて、少なくとも4棟の大型倉庫を建てるなどの拡張工事が行われていると伝えた。
この地には、朝鮮半島が日本の植民地支配下にあった1915年10月に、日本鉱業株式会社(現JX金属)が建設した鎮南浦精錬所があった。
植民地支配の終了とともに南浦精錬総合企業所となり、北朝鮮を代表する亜鉛製錬所となったが、大飢饉「苦難の行軍」直後の2000年12月に設備が撤去され、廃墟と化していた。
2002年4月、金正日総書記の指示で北朝鮮初のコンテナ埠頭として工事が始まり、2008年に完成した。さらに金正恩党委員長は2011年、拡張工事を進めよとの指示を出した。クレーンが2機に増やされ、2014年からは、コンテナの野積み場を増やすために池の埋め立てが始まった。
その後の対中輸出の増加で、南浦港は失われていた活気を取り戻した。
昨年10月に撮影された衛星写真には、100個のコンテナが写っている。しかし、国連安全保障理事会で北朝鮮に対する制裁決議が相次いで採択され、コンテナの数は減少の一途を辿り、今では閑古鳥が鳴いている。
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さらに、トランプ米大統領が21日に署名した大統領令では、北朝鮮の港に寄港した船舶のみならず、そのような船舶から積荷を受け取った船舶も含めて、米国入国を180日間禁じているため、南浦港はさらに寂しくなると思われる。
そのような現状の下、北朝鮮が港の拡張工事を続ける理由について、米ジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮研究者、カーティス・メルビン氏はRFAの取材に「北朝鮮が南浦港をいかに重要視しているかの現れだ」と解説した
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一方では、北朝鮮お得意の「ハコモノ事業」の一環ではないかとする見方もある。
立派な港湾施設を完成させ、金正恩氏の業績だと喧伝するためだ。金正恩氏は、首都平壌と東海岸の元山(ウォンサン)の空港の新ターミナルを建設させたが、平壌は週に14便しか飛んでおらず、元山は定期航空便がひとつもない有様だ。
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