日本のCGアニメを先導するサンジゲンの松浦裕暁さん

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今年で誕生から100周年を迎えた日本のアニメ――。日本が世界に誇る一大コンテンツのメモリアルイヤーに、週プレNEWSでは旬のアニメ業界人たちへのインタビューを通して、その未来を探るシリーズ『101年目への扉』をお届けする。

第4回目は、サンジゲン代表取締役の松浦裕暁さん。ピクサーに代表されるように、現代の海外アニメーションはCGが主流となっている。それに対し日本のアニメは、伝統的に手書きのセルアニメーションが本流だった。

そんな中、日本でもCGアニメーションを定着させるべく、その勃興期から活動してきたのが松浦さん率いるサンジゲンだが、その目指すCGアニメーションはピクサーやディズニーの作品とはちょっと違う。

あくまでも日本のセルアニメの特徴を引き継いだ「3DCGアニメ」で勝負し、間違いなく今後の日本のアニメ作りの主流となっていくCGアニメを先導するサンジゲンという会社についてお話を伺った。

■ピクサーとは違う、日本独自のCGアニメ

―サンジゲンが取り組む3DCGアニメとは、海外のCGアニメーションとどのような違いがあるのでしょう?

松浦 元々、アニメーションといえば手描きのセルアニメしかなかったのですが、90年代にピクサーが台頭してきて、海外ではCGアニメーションが一般化しました。しかし日本には独自のアニメ文化があり、CGで作ったからといって、簡単に海外にいけるわけではありません。

そこで僕らが考えたのが、日本独自の手法で海外のCGアニメとどう戦うのかということでした。それはつまり、子どもの頃から日本人が親しんできたセルアニメをベースに作るということです。それがサンジゲンが行なってきた「3DCGアニメ」というものですね。

―3DCGアニメといえば、2001年に日米合作で制作された『ファイナルファンタジー』(2001年)もありました。

松浦 サンジゲンの3DCGアニメは、あくまでも2Dアニメの延長線上にあります。セルアニメのCG版といったほうがいいかな。なので、ああいった作品とはちょっと違うものです。

―最近はゲームにもアニメ風のムービーシーンが導入されることが増えていますが、それとも違う?

松浦 前にゲーム誌でも同じことを聞かれたことがあって「似ているけど違うよね」と話したことがあります。僕らの仕事は質感と動きが密接な関係にあります。日本のアニメはリミテッドアニメーションといって、(フルアニメーションが実写と同じ1秒24コマで描くのと違い)コマを抜くことでキャラクターの動きを想像させるような表現をしています。

でも、そうした表現を1秒60フレームで描写するようなゲームでやると情報量が足りなすぎて、どうしても違和感があるんですよ。それは技術の問題ではなくて、子どもの頃から僕らが培ってきた感覚による違和感です。

―日本人の根底にある「アニメはこういうもの」という刷り込みからズレるというか。

松浦 そうですね。その感覚もCGアニメを観て育った世代が増えることによって変わっていくとは思いますが、今のところ日本人にはCGアニメも2Dのリミテッドアニメーションをベースにしたほうが合うだろうと。それでサンジゲンではセルルックの3DCGという表現を行なっています。

■今のCGアニメーターは技術に頼りすぎている

―あくまでも「CGを使って、日本のアニメを作っている」という意識なんですね。しかしアニメ好きの人たちからは未だに3DCGアニメに対して「オレたちが観たいのはこれじゃない」「作画で観たかった」という声が挙がることも多い。これをどう感じていますか?

松浦 そういう意見は理解できますよ。僕自身も違和感を覚えることはありますし、そうした声を凌駕(りょうが)するような作品づくりをできているかといえば、正直まだまだという部分があります。

―では、今の3DCGアニメには何が必要ですか?

松浦 僕がまだまだと思うのは、多くのCGアニメーターが技術に寄りかかってしまっているところです。CGの表現の水準が上がったといっても、それは髪の毛を動かせるソフト、水の表現ができるソフトが開発されたからにすぎないんです。必要な表現のために技術を開発するという、紙では当たり前に行なわれていたことをできていない。

CGは作業していると、どんどん絵が埋まっていくんです。だからアニメは完成できる。でもいい表現を目指すなら、自然とできあがっていくものに対して疑問を持たなければならないわけです。コンピューターでキャラクターの関節を動かしたら、歩いているようには見えます。でも、それは”動いている”だけで、”芝居を描いている”とはいえないのではないか。

情報があふれている現代では、ネットで調べればなんでもわかった気になれます。CGソフトの使い方だって学べますからね。でも、本当にクオリティの高いCGアニメを作るのであれば、「歩くということはそもそもどういうことなのか?」というところまで考えないといけないはずなんです。そこをできてないところが、今のCGアニメの課題ですね。

―そのお話で思うのが、そもそもCGアニメをやりたいって人って、表現者を目指している人が多いのですか? それともエンジニア志望が多い?

松浦 後者ですね。元々、パソコンをいじるのが好きで、CGソフトをいじっているうちに「こんな表現もできるのか!」と感動して、これを仕事にしてみようとなる人が多い。紙に絵を描くのが楽しくて、それを仕事にするために技術を学んでいきました、という従来のアニメーターとは逆のパターンです。「CGのエンジニアがアニメもやっています」という感覚の人が多いかもしれませんね。

■地元にCGの仕事がなかったのでアニメ業界へ

松浦 僕もエンジニアからアニメの世界に入ってきたタイプでした。でも僕の場合、地元の福井から東京に出てきた時に、最初に入ったのがアニメ会社(スタジオディーボルト)だったというのが大きくて。そこで演出家の方々からいろんなお話を聞けたのがラッキーでしたね。

―どんなお話に影響を受けたのですか?

松浦 演習と芝居は密接な関係にあって、キャラクターが悲しく歩く動作ひとつとっても、単にそういう絵を描くだけでなく、前後に演出が絡んでいないと悲しく歩いているようには見えないということです。アニメはゼロベースから芝居を作り出す必要があるので、演出の意志というのがすごく重要なんですね。

これが実写だと、役者の動きを一旦受け入れて考えるしかないんですが、アニメは演出の意図次第ですべてをコントロールできる。そこが魅力だと感じて、この世界に入ることを決めました。

―では、子どもの頃からアニメの仕事をしようと思っていたわけではない?

松浦 そもそも地元でアニメの放送がほとんどなかったので、アニメ好きになるわけがないんですよ。それでも同級生にはアニメに詳しいやつがいて『新世紀エヴァンゲリオン』を勧められて観たりしましたが、当時は「すごい作品だなあ」くらいで。アニメを観るよりもコンピューターをいじるほうが楽しかったですね。

だから地元で働いていた時は、Macで印刷のDTPをやったりしていたんですよ。でも気が付いたら、CGを仕事にしている人は県内にまだほとんどいないという状況で。というのも、ニーズ自体がなかったんです。シリコン・グラフィックスのコンピューターを600万円で買っても、CMの仕事のギャラが1本5万円で「どうやって回収するんだよ…」という環境でした。

それで東京に行こうと思い、友人の紹介でCGのエンジニアを募集していたアニメ会社に入ったというわけなんです。その後、世界でも最初のフルデジタルアニメのOVAだった『青の6号』を制作したGONZOに移りました。

■萌系ブームでメカの表現がCGに

―そこからサンジゲン設立に至るのはどういう経緯で?

松浦 デジタルのアニメが作られ始めたといっても、当時のCGはまだ手描きの枠の中でCGも使う箇所があるというだけでした。僕は将来的に3DCGがメインになる時代は来ると思っていたのですが、まだニーズはなく、会社として対応していけるわけではなかったんですよね。

そこで、これは独立するしかないのかなと思い、フリーの下請けを3年ほど続けて、それから仲間と一緒にサンジゲンという会社を設立しました。

ただ、そうはいっても、いきなり3DCGアニメを作らせてもらえたわけではなくて。僕はキャラクターをやらない限り、CGがアニメ制作のメインになることはないと思っていたのですが、当時の発注はメカ関連がほとんどでしたね。

―人物は手描きだけど、ロボットだけはCGみたいなパターンですね。

松浦 そこには時代の流れも影響しているんです。深夜アニメの時代になって、DVDが売れるのは萌え系の作品ばかりになりました。それでメカニック系のアニメーターが激減して、僕らに仕事が回ってくるようになったんです。

―もしかして、初期の仕事にサンライズ系の作品が多いのはメカ関連の仕事が多かったことが関係しているんですか?

松浦 そうですそうです。その流れで『ラブライブ!』のPVをCGでやらせてもらったりしました。そういう仕事をコツコツ積み重ねて、ようやくキャラクターを任せてもらうようになっていったんです。

●この続き、後編は来週配信予定!

(取材・文/小山田裕哉 撮影/鈴木大喜)



■松浦裕暁(まつうら・ひろあき)

1972年生まれ。福井県出身。サンジゲン代表取締役。様々な作品で3DCGプロデューサーを務め、3DCGのリミテッドアニメーションという新しいアニメ表現を確立。2011年にはサンジゲンを含むアニメ関連企業5社をグループとした「ウルトラスーパーピクチャーズ」も設立、クリエイティブとビジネスの両面から日本のアニメ業界の将来を見据えている。著書に『アニメを3D(サンジゲン)に!』(星海社新書)

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