6月にはU-18日本代表に初選出され、ポルトガル遠征に参加した高橋。いくつかの選択肢の中から、清水を進路先に選んだ。写真:安藤隆

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 鹿児島の屋久島に、初のJ1リーガーが誕生する。
 
 清水エスパルスは9月25日、神村学園のMF高橋大悟が来春に入団すると発表。これまで屋久島出身のJリーガーと言えば、昨年J3の鹿児島ユナイテッドFCに入団した塚田翔悟(国見、九州共立大卒)がおり、高橋はふたり目となる。
 
「いつかはハイレベルなJ1でやってみたい。小さい時から観ていた憧れの舞台で、すごい選手や一流の選手が集まる場所。もしそこに自分が入れたらと思うと、とてもワクワクします。自分次第なのですが、チャンスを掴みたい」
 
 高橋の元には複数のJクラブからの打診があったが、こう話していた春先はまだ現実味が乏しかった。そんな彼を最初にプロの練習に誘ったのが清水だ。山崎光太郎スカウトは以前から、高橋の卓越した左足の技術とインパクトの強いキックに注目し、その動向を追いかけていた。
 
 とはいえ、選手本人がそんな想いを知る由もなく、今年3月に清水の鹿児島キャンプへの参加を提案された時は、「正直、嘘でしょ? と思った」。
 
「それまでは『大学どうしようかな』と思っていたので……。もちろんプロになりたいという強い気持ちはあったけど、全国大会にも出ていない自分が呼ばれる訳がないと思っていました」
 
 今年のインターハイまで、彼は高校生活で1度も全国大会に出た経験がなかった。無名の存在であることを自覚していたのだ。そこに届いた清水からの練習参加のオファー。戸惑いを抱えながら行ってみると、刺激的な体験が待っていた。
 
「いままでできていたことができなかったり、自分の中で『これだけは負けない』と思っていたことを、もっとすごいレベルでこなす選手がいたりで……。本当に衝撃的でした。一番衝撃だったのは、金子翔太選手。身長は僕と変わらないし、体格も似ているけど、スピード感がまるで違うし、スペースに潜り込むのが巧い。それでいて守備もいっさい手を抜かなくて、走り切って、寄せ切る。自分の活きる術を理解しているように感じたんです。自分の特徴をしっかりと理解していて、最大限に活かそうとする姿勢は、本当に衝撃的だった」
 
 そして、熟練のストライカーにも感銘を受けたという。
 
「チョン・テセ選手もあんなに偉大な選手なのに、守備では献身的だし、練習試合でも一生懸命がむしゃらにやる。この姿勢も衝撃でしたね。トップレベルの選手はチームを第一に考えた上で、自分の結果も追求している。『プロになるってこういうことなんだ』と感じたし、自分の甘さを痛感した」
 
 刺激的な日々は、ずっと彼の脳裏に鮮明に焼き付いていた。その後、清水以外にもアビスパ福岡、ガンバ大阪などが獲得に動き、一時期はどのチームに行くべきか相当頭を悩ませた。インターハイが終わってからも熟考を重ねた高橋。そしてようやく、決断を下した。
 
 自身で出した結論は、最初に大きな刺激を与えてくれた清水だった。「プロに行きたいな」程度の考えだった自分を、本気で「なにがなんでも行きたい」に変えてくれたクラブであり、自分に足りないもの、プロとしてのあるべき姿を教えてくれた。
 
 縄文杉に代表される、大自然に包まれた屋久島。その中で伸び伸びと育った『屋久島の純真』が、プロの世界へ──。
 
 島民の期待も一身に背負った彼は、まだ叶えていない高校生活最初で最後の選手権出場に向けて、爪を研ぐ。神村学園のエースとしての最後の勇姿を披露すべく、大きなモチベーションを抱え、走り続ける。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)

※クラブ公式HPに掲載された選手のプロフィールとコメントは以下の通り。

高橋大悟(たかはし・だいご)
 出身地:鹿児島県
生年月日:1999年4月17日
身長・体重:163cm・53kg
利き足:左
選手歴:宮浦SSS(屋久島町立宮浦小)→神村学園中等部→神村学園高等部(3年在学中)
代表歴:U-14日本選抜(2013)、U-18日本代表(2017)
主な成績:高円宮杯U-18サッカーリーグ2016プリンスリーグ九州 得点王
本人のコメント:
『小さな頃からの夢であるプロサッカー選手になることができ、すごく嬉しく思います。そして、清水エスパルスという歴史あるクラブでスタートすることができることを誇りに思います。今までに支えてくださった多くの方々への感謝を忘れずに、恩返しができるよう1日でも早くピッチに立ち、チームの力になりたいと思います。清水サポーター皆さん、エスパルスのために全力で頑張りますので、これからよろしくお願いします』