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金融業界がIT技術を活用し、保守的な運用にドラスティックな変革を加えようとしている。それが近年話題に上る「フィンテック」だ。ファイナンスの"fin"とテクノロジーの"tech"を掛け合わせた造語は既に日本でも浸透し、具体的な活動に至っている。筆者が周辺を取材していて、顕著な動きを感じるのは地方銀行だ。

例えば福岡銀行は次世代金融サービスの検討・創出の協業を目的に多くのワークショップを開催し、横浜銀行はフィンテックというキーワード登場以前から、ビッグデータを活用したEBM(Event Based Marketing)に取り組み、データを中心としたアプローチを加速させている。

他方でメガバンクの動きは出遅れている印象を持つ。三菱東京UFJ銀行はハッカソンやベンチャー発掘・支援プログラムを実施しているものの、行内のドラスティックな変革には至っていない。ただし、2017年9月19日には、全行の生産性を高めるため、全体の約30%におよぶ9,500人相当の労働力をIT技術に置き換える発表を行った。

とあるフィンテック企業のCEOはフィンテックブームを「1980年代のPC業界に類似している」と指摘する。当時を振り返ると、PCを家庭で利用する理由付けを行うため、レシピ管理やワープロ、ハガキ印刷など活用方法を模索していた。つまり、キーワードばかり先行し、事例が増えない状況であることを意味する。前述のとおり各行はフィンテックを用いたビジネスプロセスの改善に取り組んではいるものの、具体的な成果物を示していない。

だが、この状況は大きく変わりつつある。2017年5月26日に改正銀行法が成立し、6月22日には金融庁とASIC(オーストラリア証券投資委員会)がフィンテックに関する協力枠組みを発表した。これら政府の取り組みがフィンテックに対する「波」を押し上げ、加速的に普及するのは間違いないだろう。

鍵を握るのは決済サービスと顧客とのインタフェースとなる「API」だ。先の改正銀行法では、フィンテック企業の登録制と共に技術革新を推し進めるため、銀行に「オープンAPI」整備という努力義務を課した。例えば銀行の預貯金データをAPI経由で取得し、確定申告などに利用する海外事例は既に存在する。

既にフィンテックは「今何をするか」ではなく「今後何ができるか」というシーンに突入した。オープンAPIを用いたビジネスモデルの発掘や、費用対効果を踏まえた既存システムの合理化など、ビジネスの現場や顧客のUX(ユーザー体験)を変えていく存在なのだ。

阿久津良和(Cactus)