コガタペンギンがクラゲを捉えた時の様子。カメラをつけた他の個体によって撮影されたもの。(画像:国立極地研究所発表資料より)

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 国立極地研究所の参加する国際研究グループは、従来、栄養価が低いためあまり大型動物の餌にはならないと考えられてきたクラゲを、ペンギンが頻繁に捕食しているという事実を、世界で初めて明らかにした。

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 クラゲ。刺胞動物門に属す動物で、水中に暮らし、浮遊生活をするプランクトンの総称である。その歴史は古く、カンブリア紀、つまり約5億年前には地球にいた。

 身体はゼラチン質であり、水分が多くて脆く、研究することが意外と難しいのだという。たとえば、動物が吐き戻した餌からその食性を分析する手法があるのだが、クラゲは身体が壊れてしまいやすいため、この手法では研究することができない。

 人間の社会では、あまり広く普及しているわけではないが食用にする文化はある。エチゼンクラゲやビゼンクラゲなどを乾燥・塩蔵して戻し、和え物、酢の物などにする食文化が中国や日本などに存在する。

 しかし、野生の大型動物はあまりクラゲを食べない、とこれまで一般には信じられていた。構成物質のほとんどは水分であり、栄養価が低いからだ。

 今回の研究は、ペンギンの水中での行動や生態を調べる、というものである。最新の小型カメラをペンギンに取り付け、一緒に行動する他のペンギンの様子をその映像から解析する、という手法で、南半球各地で、多くの種類のペンギンを調査対象とした。

 結果として、マゼランペンギン、アデリーペンギン、コガタペンギン、キガシラペンギン、つまり調査したすべてのペンギンが、頻繁にクラゲを捕食している事実が明らかになった。

 今後の研究展望としては、クラゲの栄養価(化学組成やその栄養素など)について再検討を加え、その生態系に果たす役割を改めて検証したい、という。

 なお、研究の詳細は、アメリカの生態学会学術誌Frontiers in Ecology and the Environmentにオンライン掲載されている。