1982年年末に行われた最高速大計測会。もちろん、ステージは日本自動車研究所の高速試験路、通称:谷田部です(今は無き)。

よく「谷田部で最高速」「谷田部に挑戦」と言っていますが、では、その谷田部とはどんなものだったのか・・・? そんなとこから、今回は見ていきましょう。そして、今回の【その4】で紹介する懐かしマシンは、Z、コルベット、ポルシェ、トランザムとワールドワイドです!

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谷田部にあるテストコースは、1周5.5kmのオーバルコース。南と北にハイバンクがある。最大傾斜角45度で、設計速度はイエローラインで180km/h、最上段で220km/hまで可能だ。したがって、220km/h以下ならハンドルから手を離しても、直線のように走ってくれる。

しかし、250km/h以上のバンク走行になると、飛び出しそうになるマシンを押さえなければならない。それより難しいのは、バンクの進入と脱出時だ。路面がフラットからバンク角へと変わるので、マシンがアウトへ出そうになる。この一瞬のコントロールを間違えると、オダブツ。バンク内は2G以上の重力がかかるので、サスペンションのセッティングひとつで、スピード限界点が変わる。固すぎるとハネてしまうし、柔らかくてもふらついてしまう。直線はアクセルを踏むだけだが、直進性の悪いクルマがほとんどなので、風が無くても左右に振られて恐い。

クルマに異常さえなければ、誰でも250km/hは出せるはずだ。が、それ以上は別世界で、直線から一瞬の間にバンクが迫り、すり鉢の底のように見えるバンクに落下するという感じだ。もし、タイヤでもバーストしたら、レーサーでもコントロールするのは難しい。280km/hレベルになると、ピレリP7などのVR規格でも保証できないのだ。だからこそ、谷田部テストでは、わずかでも異音が発生したらスピードダウンするほどの神経を使う。

テスト終了後は、「ああ、今日も命があったな」と思う・・・これが谷田部の最高速テストだ!
レースレスキューの苦労を実感!

「もし、テスト車が横転、火災が発生し、しかもドライバーが車内に閉じ込められていたらどう対処するか。とにかく様々なケースを想定し、対応を頭の中で反復していました」と語るのは、エマージェンシーカーのステアリングを握るレーサー:小宮延男だ。クルマは市販車最速を誇るコスモREターボ。

助手席には2基の大型消火器もセット。幸いにも緊急出動はかからなかったが、ホーッと緊張感が抜けたのは、テスト終了後しばらく経ってからだとか。「安全装備で4時間待機するって、サーキットを走るよりタイヘンみたい。レースレスキューの人たちの苦労がよーく分かりましたよ」。
オートテクニカルショップBM-Z 2947cc
262.77km/h

ATS-BM-Z、これがL型のエンジンノイズか!?と思わせるほど、心地よい響きを発したエンジンパーツは、オリジナル物の加工というが…。

「北野さんが走った時、290km/h出てたハズ。足まわりがいい状態じゃなかったのに、ふたりのドライバーともによく踏んでくれました。今回は諦め、次のマシンを整備して実力で勝負します!」(ATS-BM浅見)

L28改 スリーテックチューン

[エンジン]排気量:2947cc/ボア・ストローク:89.0×79.0/ピストン:G20改/コンロッド:レース用オプション/カムシャフト:スリーテック78度加工/クランク:秘/バルブ:IN45φ EX36φ/キャブレター:ソレックス50φ/圧縮比:-
[サスペンション]Fコイル:レース用オプション/Fショック:レース用オプション/Rコイル:レース用オプション/Rショック:レース用オプション/ブレーキ:レース用オプション
[タイヤ]F:P7 205/55VR16/R:225/50VR16
[ギヤ比]トップ:0.864/ファイナル:3.545
ROD MOTORSコルベット 5985cc
260.86km/h

RODモータースのシボレー350は、輝くばかりに美しく仕上げられている。このエンジン画像を見れば、コルベットが完全な「フロントミッドシップ」なのが分かるだろう。

「デフが間に合わなくて、ギヤが高すぎて失敗した」。(RODコルベットオーナー柴塚)

シボレー350 LT-1改

[エンジン]排気量:5823cc(355CID)/ボア・ストローク:102.36×88.49/ピストン:TRWアルミ鍛造/コンロッド:TRW鍛造/クランク:GMハイパフォーマンス鍛造/ブロック:LT-1 4ボルト/ヘッド:ブロンフィールド・アルミ/カムシャフト:クレーン・メカニカル/リフター:メカニカル/キャブレター:ホーリー850改
[サスペンション]Fコイル:ディックガルツストランド/Fショック:コニ・アジャスト/Rコイル:ディックガルツストランド/Rショック:コニ・アジャスト/ブレーキ:GM純正・ガルツストランド製パッド
[タイヤ]F:P7 285/50VR15/R:P7 285/50VR15
[ギヤ比]トップ:1.000/ファイナル:2.730
武田ポルシェRSR 3450cc
259.45km/h

3.5リッターフルチューンの武田ポルシェ。チューナーはアウトバーン・モーター。キャブはトリプルチョークのウェーバーを使う。ツインプラグ用の巨大なレース用デスビに注目!

ボディは935ノーズでフロント重視。サイドスカートにカレラRSR3.0用スポイラー。空力バランスはフロント優先。ただ、ボンネット上面の気流がサイドに回り込む形状は、やや抵抗になる。

アウトバーン武田ポルシェRSR3.5

アウトバーンチューン

[エンジン]排気量:3450cc/ボア・ストローク:98.0×74.4/ピストン:マーレーアルミ鍛造/コンロッド:ポルシェレース用/カムシャフト:ポルシェレース用/クランク:ポルシェレース用/バルブ:IN49φ EX41φ/キャブレター:ウェーバートリプルチョーク×2/圧縮比:-
[サスペンション]Fコイル:934トーションバー/Fショック:ビルシュタイン934用/Rコイル:934トーションバー/Rショック:ビルシュタイン934用/ブレーキ:ポルシェレース用
[タイヤ]F:P7 205/50VR15/R:P7 225/50VR16
トラスト大川トランザム 7654cc
255.31km/h

大川トランザムのシボレーLS6改467は30cmも後退させてマウントしている。他チューナーとは違い、手製のマニホールドにウェーバー48IDAを4連で装着している。「セリカはクラッチ・スリップ、トランザムは風で踏めずと、今回はいいところナシです。何となく気分的にものらなかったし・・・。」(トラスト大川)

シボレーLS6改467

[エンジン]排気量:7654cc(467CID)/ボア・ストローク:109.47×101.60/ピストン:TRWアルミ鍛造/コンロッド:キャレロ鍛造/クランク:ハンク・ザ・クランク鍛造/ブロック:LS6 4ボルト/ヘッド:LS7オープンチャンバー改/カムシャフト:イスキー・メカニカル/リフター:メカニカル/キャブレター:ウェーバー48IDA×4
[サスペンション]Fコイル:ノーマル/Fショック:コニレーシング/Rコイル:ノーマル/Rショック:コニレーシング/ブレーキ:エアロクィップホース
[タイヤ]F:P7 285/50VR15/R:P7 285/50VR15
[ギヤ比]トップ:1.000/ファイナル:2.730

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タイヤもナニも、この時代の最高速テストは恐怖以外のナニモノでもなかったようです。さて、次回【その5】からは一気に参加マシンチェックをしましょう! あのクルマも、あそこのマシンも登場です! お楽しみに。

(Play Back The OPTION by 永光やすの)

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