「終活」は誰のためのもの? 早めに始めることは、自分のためにも家族のためにもなる(写真:naka / PIXTA)

みなさんは、自分の親に「銀行に預けているおカネはいくらあるか」とか、もし要介護になったらどうするか、さらに「まさかの時」はどうするか、聞いたことはありますか。また、自分の子供や妻、あるいは親族に「自分に『もしも』のことがあったら、財産はこうなっているから」などと話したことはありますか?

なぜ「終活」を早めに行うと良いのか


私は現在まだ50歳代ですが、実はかなり前から「私なりの終活」、つまり人生の終わりに向けた準備を始めています。早すぎる? いえ、そんなことはありません。私が終活を行うのには、3つの理由があります。

1つは、私の死後、「家族が困らないようにしておきたい」からです。
人生の終盤を迎えたときや死亡後には、どんな治療をするかを考えたり、介護をしたり、財産を遺族で分け合ったり、遺品を整理したりと、しなければならないことが山ほどあります。

私も両親を亡くしてさまざまな経験をしましたが、「この方法で良かったのかしら。両親の想いに沿っているかな……」と思い悩み、後悔することもあります。終末期の医療をどうするか、自身の死を誰に伝えるべきかなどを明らかにしておけば、遺された家族の「手間」や「精神的な負担」を減らせるはずです。

家族の負担を減らすことができれば、私自身もうれしいですし、自分の想いに沿って事が進めば満足です。これが終活する2つ目の理由、「自身の想いを汲んでもらう」ためです。

3つ目は、「私はこの世からいなくなっても、悲しまないでほしい」からです。

私が亡くなれば家族や友人、仕事仲間など、おそらく悲しんでくれる人がいるでしょう。でも、最高にうまく撮れている写真を遺影用に用意しておいたり、お洒落な骨壺をオーダーしておいたりすれば、親しい人は「あいつらしい」と思ってクスリと笑ってくれるかもしれませんし、それをネタに、みんなで私の至らないことを思い出し、笑って話してくれるかもしれません。「きっと楽しい人生だったのだろう」と感じてくれたら、私も、みんなも癒されますよね。

もう一度整理すると、

・家族が必要以上に困らないため
・自分の想いを全うするため
・自分も家族・友人なども死を受け入れ、前向きになるため

この3つのために、私は「ハッピー終活」を少しずつ進めています。

金融機関の口座を減らして「見える化」しよう

さて、「ハッピー終活」とは具体的に何をすればいいのでしょうか。私のハッピー終活のうち、みなさんにも特にお勧めしたいことを挙げてみます。ぜひご自身の終活として実践していただきたいですし、ご両親などの身近な人にも働きかけてほしいと思います。

まずは金融機関の整理です。

「家賃の引き落とし用」「給与振り込み用」など、多くの口座を持っている人も少なくないでしょう。私も証券会社7社、銀行8行に口座を持っていましたが、証券会社3社、銀行3行まで減らしました。まだ多いので、さらに絞り込むつもりです。

なぜでしょうか。口座が多いと、遺族の負担になるからです。

口座の名義人が亡くなると、口座は凍結され、遺族であっても自由に預金などを引き出すことはできなくなります。「家族ならいいではないか」、と思うかもしれませんが、遺族の1人が勝手に引き出してしまうと、あとでほかの遺族とトラブルになる可能性があるからです。

引き出すためには、法定相続人(財産を相続する人。たとえば両親と子供2人の家族で父親が亡くなった場合は、母と子供2人)全員が同意して所定の書類にサインし、印鑑証明などを添えて金融機関に提出しなければなりません。

それぞれの口座について手続きする必要がありますから、4つも5つも口座があると本当に大変。「兄弟が何度も実印や印鑑証明を持って来いと言うのだけれど、忙しくて対応していられない。でも早くしないと相続税の申告に間に合わなくなるから、と急かされる」と困っている人の話はよく聞きます。

私は一昨年の2015年に母を亡くしましたが、生前、たくさんの金融機関の口座を持っていることを知り、口座のリストラをしました。金融機関に母を連れて行くと、なんと本人がいるにもかかわらず、写真入りの身分証明書を持っていなかったため、口座閉鎖をすることができませんでした。仕方なく、高齢で姿勢保持もつらい状態で証明写真を撮り、住基カード(当時)を発行してもらい、複数の銀行を回って……と、かなりの大仕事に。本当に大変で、母もかわいそうでした。このように、ご両親やご親戚など、高齢の方についてはとくに、体力があるうちに整理を進めておきたいものです。

また「A銀行とB銀行に口座がある」といった情報を、きちんと記録しておくことも大切です。

親が亡くなったあと、家中のいたるところから古い通帳が見つかる例もありますが、最後に記帳されたのが何年も前だとしても放っておくわけにはいきません。もしかしたら大金が眠っているかもしれませんし、放置したままにすると、あとから相続税の申告漏れを指摘される可能性もゼロではありません。

口座がありそうなら、名義人が亡くなったことを証明する書類を用意して口座の有無や残高などを問い合わせる必要があり、残高があれば法定相続人の同意書を提出して預金などを引き出す必要があります。

終活は、今を生きるための「棚卸し作業」にもなる

私は自分自身で、口座がある金融機関のリストを作り、支店名や口座番号を記載しています。もちろん、暗証番号はほかの人が見てもわからないように工夫したうえで記載し(子供だけがわかるようにしています)、金融機関リストとは別の場所に保管しています。届出印の保管場所も、別のところです。

そのほか、私自身の老後資金として加入している国民年金基金と小規模企業共済については、証券をファイリングして保管。年金手帳や国保(国民健康保険)組合の書類もわかるようにしています。

多少の手間はかかりますが、「どの金融機関に、どんな資産があるか」「老後に受け取れるおカネはいくらか」などが整理でき、自身のライフプランを考えるきっかけにもなります。このように、終活とはいいながら、整理は「今を生きるための作業」という一面もあるのです。

金融機関の口座についてもいえることですが、何事もシンプルにしておく、というのも終活のポイントです。

私は、いままで生命保険や医療保険に加入したことはありません。私が亡くなっても経済的に困る人はいませんし、医療費がかかっても高額療養費によって医療費の自己負担は一定額で済み、貯蓄から支払うことができると思うからです。

もちろん、保障が必要な方もいます。保険に加入しているなら、「どんなときに、どんな保障が得られるか」を家族と共有し、保険証券をわかるところに保管するなど、未請求にならないための準備をしておきましょう。請求できなければ保険に入っていても、意味がありません。

また死亡保険金は相続税対策になることも知っておきましょう。法定相続人1人につき500万円までは相続税がかからず、現金でおカネを遺すよりずっと有利です。相続税は重税化されてきており、特別な資産家でなくても相続税がかかるケースが増えています。基本的な知識を得て、効果的な相続税対策をしておくことも、大事な終活です。

「積極的な治療を望まない」という考え方

さらに、健康面について考え、身近な人に考えを話しておくことも大切です。

私はもし大きな病気になっても積極的な治療はしないことに決めています。そのため早期発見をしたいという想いは、あまりありません。人工呼吸器などの延命措置は拒否するつもりです。とはいえ、痛くてつらいのはいやなので(家族も見ているのがつらいと思う)、緩和ケアはお願いしたいと思っています。この考えは、事あるごとに家族に話しています。病状が進むと、延命措置をするかどうかなど、家族に判断が求められることがありますが、家族が本人の意思をしっかりと理解してくれていれば、迷ったり、苦しんだりすることも避けられるでしょう。

とても大切なことなので、身近な人と、しっかり話し合っていただきたいと思います。さまざまな経験をしたり、年齢を重ねたりすることで考えが変わってくることもあるので、機会をみつけて、何度でもお話しするとよいと思います。

葬儀もささやかな家族葬を望んでいて、仕事関係も含め、供花などは辞退するよう、家族に伝えています。誰に、どのタイミングで死去を知らせるかも考えてあり、近々、リスト化する予定です。

洋服や持ち物も、使ってもらえるものは差し上げ、喜ばれないものは処分し、かなり減らしました。しかしアクセサリーやバッグ、靴は好きな気持ちが勝ってしまい、処分できていません(苦笑)。「減らそう……」と思いながら、「無理かも……」とも思うので、「欲しい人がいたら差し上げて、残ったら業者さんに頼んで一気に処分」の方針です。

では、自分が要介護の身になったらどう暮らすか。それについても考えていますので、これは次回、お話ししたいと思います。

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