1956年に発売された「腰掛式洗落とし便器」。一般住宅などに広く普及し、2007年に廃番になった

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九州のロングセラー商品の秘密にせまる「メイド・イン・九州」。今回は、TOTOの「腰掛式水洗便器」をピックアップ!

【写真を見る】豊富な知識と高い技能をもった検査員による厳しいチェックをクリアした商品のみが出荷される

■ 腰掛式水洗便器

いわゆる洋式の水洗トイレ。陶器製は汚れが付きにくく、お手入れしやすいのが特徴。同社ならではの技術を駆使した洗浄能力や節水技術には定評があり、現在では3.8リットルという業界トップクラスの節水を実現している。

■ トイレの常識を変えた世界に誇る技術

かつては汲み取り式の和式便器が主流で、衛生的な観点から屋外にあるのが当たり前だった日本のトイレ。初めて国産の洋式便器を製造し、日本のトイレ環境に革命を起こし、快適で豊かなものへと変えたのがTOTOだ。今からおよそ100年前、創立者の大倉和親は、欧米の真っ白で清潔感あふれる水洗トイレにいち早く着目し、“日本にも快適で衛生的な生活を提供したい”と国産の洋式水洗便器(腰掛式水洗便器)の開発に着手する。試行錯誤のすえ完成した第1号は、海外製品と比べても遜色ないと高評価を得るも、下水道も整備されていない時代に、なかなか普及はしなかった。

転機となったのは、1960年代の高度経済成長期。近代化が進み、下水道が急速に整備されると、高級ホテルや百貨店、公団住宅にも洋式便器が標準装備されることになる。やがて、一般家庭にも徐々に浸透し、1977年には、販売数が和式と逆転。現在では、洋式が約99%を占めている。

創立から100年が経ち、今ではフタが自動で開き、便座は程よく温かく、立ち上がると自動で洗浄・除菌と至れり尽くせりの機能を搭載するまでに進化した。単なる排泄行為をする場所という常識を超えた、その快適さが、世界の人々を魅了する。

■ ヒットの裏側

品質維持・管理が難しい衛生陶器の製造は、熟練の職人による焼物作りと同じ。そのため、ほとんどの工程に人の手が加わり、豊富な知識と高い技能をもった検査員による厳しいチェックをクリアした商品のみが出荷される。その“良品と均質”の精神は代々受け継がれている。【九州ウォーカー編集部】