病院のベッドで病気以外の苦しみが…

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 病気やケガを治すために入ったはずの病院のベッドで、さらなる苦しみに苛まれる──そんなケースが最近、目立っているという。右膝を骨折し、先月まで整形外科に入院していた50代男性は“隣人”に悩まされた体験をこう振り返る。

「2人部屋で隣のベッドは70代くらいの男性だったのですが、大した用もないのにナースコールを押しまくる。“もうすぐトイレに行きたくなると思うんだよ”なんて言っては、看護師さんから“行きたくなった時に呼んでくださいね”と返される。そんなやり取りの繰り返しです。

 若い入院患者と違って見舞客も来ないし、話し相手がほしいだけでしょうが、こっちは落ち着いて本も読めない。“看護師さんだって忙しいんだよ!”と言いたかったですよ」

 国が病床数の削減目標を掲げ、厚労省発表の推計でも全国の入院患者数は減少傾向にあるが、急激な高齢化が進んだことで65歳以上の入院患者数だけは90万人以上で高止まりしている。そうしたなかで病室での“マナー違反”が諍いの種となっているというのだ。医療コンサルタント事業を手掛けるウィ・キャンの濱川博招・代表はこういう。

「『ご近床トラブル』なんて言い方も耳にしますが、近年、入院患者同士のトラブルは増加傾向にある印象です。医療機関の依頼で患者の投書を調査すると、同室の患者への不満・要望が目立つようになっている」

◆「寝られないじゃないか!」

 ちょっとした生活音がご近所トラブルに発展するのと同様、入院中も「音」に悩まされる事例は少なくないという。濱川氏が続ける。

「専用の談話スペースなどがない病院では、“隣の見舞客がうるさい”と問題になりがちです。それと、意外にあるのが、『夜中の見舞客』を巡る苦情。実は、一定数の施設が、仕事の都合などで夜遅くにしか来られない家族の見舞いなら、面会時間外でも黙認している。それにより真夜中の話し声が気になって、眠れなくなってしまう人も出てくる」

 夜間は「音」に加え「光」も問題になる。たとえば、横になってスマホをいじっても家では誰にも迷惑をかけないので、入院中も周りを気にせずゲームや動画を楽しもうとする人は少なくないが、「カーテン越しに漏れる画面の光の明滅は、隣で寝ていると想像以上に気になる。スマホの光を巡る苦情は最近特に多い」(前出・濱川氏)というのだ。

 他にも、「オムツをした患者さんの隣だと、夜間に排泄があった時に看護師が気付くのが遅れると、部屋に臭いがこもってしまう」(同前)といった問題に直面することもあるという。

 隣に寝ている相手なので、直接話して解決したくなるが、それは避けたほうがよいという。相手の不興を買えば、かえってトラブルを大きくしてしまうこともある。こじらせると「“病室内でうるさい”という理由で同室の患者に殴りかかってケガをさせ、警察沙汰になったケースもある」(ベテランナース)というのだ。大阪府保険医協会事務局参与・尾内康彦氏がいう。

「とにかく、“告げ口になる”などと気にせず、ナースに相談すること。病院側が“イビキのうるさい人”“トラブルメーカー”などと判断すれば、その患者を別室に移すこともあります。病院側も深刻なトラブルは避けたいですから」

 ご近所トラブルでは難しい“相手に引っ越してもらう”という解決策もあるのだ。トラブルの「処方箋」はきちんと知っておきたい。

※週刊ポスト2017年10月6日号