2015年の加入時から、鄭大世は勝ちにこだわる姿勢を伝えてきた。(C)SOCCER DIGEST

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[J1リーグ27節]清水1-3広島/9月23日(土)/アイスタ
 
「点を取っても、すぐに失点することがエスパルスは多い。1点の価値が下がってしまいますよね」
 
 復帰早々に反撃の狼煙を上げる同点ゴールを決めた鄭大世は、悔しさを滲ませながらそう語った。得点してから10分以内の失点、セットプレーからの失点、カウンターからの失点……その3つは今季序盤から指摘されてきた清水の課題だが、J1残留に向けて非常に重要な試合で、それがすべて出てしまったことが痛恨の敗戦につながった。
 
 開始6分で右CKから失点したのも当然痛かったが、その後は冷静にパスをつなぎながら攻撃することができていた。前半で大きなチャンスも3回作れていた。後半も同じ流れからなかなか1点を奪えないなか、69分に満を持して怪我から復帰した鄭大世を投入(8週間ぶりの出場)。彼がピッチサイドに立っただけでアイスタのスタンドは大きな歓声に包まれ、ピッチに入ってすぐに竹内涼からキャプテンマークを受け取りに行ったあたりからスタジアムの空気は変わり始めていた。
 
 初めは少しボールが足につかなかった鄭大世だが、徐々に感覚を取り戻し、動き直しをくり返して周囲と合い始めた84分、北川航也の右クロスからDFの前に飛び込んで頭で右ポスト際を射貫き、復帰から15分でエースらしい大仕事を見せつけた。その瞬間、スタジアムは熱狂に包まれ、清水の逆転勝ちという劇的なストーリーを多くの清水サポーターは予感した。
 
 だが、現実はその正反対。同点にされても下を向くことなく勝点3を取りに来た広島に、アディショナルタイムに入ってカウンターから2点を奪われ、降格圏の15位・甲府に勝点差4まで迫られてしまった。
 
「同点になった後、前がかりになってもう1点取りにいこうというよりも、ちゃんとリスク管理してカウンターに気をつけながらやろうという意識は、みんなあったと思います。でも、それが分かっていて相手の勢いを殺せないし、やっぱりカウンターでやられてしまった。結局、そこは個人の状況判断。(カウンターを受けた時に)もっとわかりやすく早い段階でファウルで止めればいいのに、きれいに取ろうとして、それでダメだったらファウルで取ろうとするから結局止められていないので」(鄭大世)
 
 鄭大世はそのことを2015年の夏に清水に来た直後から言い続けていた。
 
「ルーズボールになった瞬間にファウルでもいいからプレーを止めることを、何回も言い続けてきました。たとえカードをもらっても、しっかりとゲームを締めないと。そういう個人の状況判断が勝点に大きくつながっていくんじゃないのかなというのは(離脱中に)上から見ていても思ったし、プレーしながらもずっと感じています」
 
 この試合では、得点後に全体が間延びして選手同士の距離が開いていたことも多くのカウンターを食らった要因のひとつなので、リスク管理という面でも問題はあった。ただ、そういうなかでも個人の責任で何としても止めなければいけないと鄭大世は主張する。
 
 もちろん、イエローカード覚悟のファウルは褒められたプレーではない。清水は昨年J2でフェアプレー賞を獲得するなどクラブとしての伝統もあるので、誰もが鄭大世の声に100パーセント賛同するわけではないかもしれない。サポーターにも賛否両論あるだろう。
 
 ただ、本当の瀬戸際になった時、個々がどちらを選ぶのか。これから残留争いが本格化するなかで、どんな選択をするにしても、選手それぞれに覚悟が必要になってくるのではないだろうか。
 
取材・文:前島芳雄(スポーツライター)