最新!「障害者雇用率ランキング」トップ100

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食品トレーや弁当・総菜容器最大手「エフピコ」の茨城県八千代町の工場。撮影は2014年1月(撮影:風間 仁一郎)

毎年9月は「障害者雇用支援月間」。障害者雇用の機運を広く醸成するため、「障害者雇用優良事業所等の厚生労働大臣表彰」をはじめ、国や地方自治体中心にさまざまなイベントが各地で行われている。

2018年4月から精神障害者の雇用義務化に伴い、企業の障害者の法定雇用率は現在の2%から2.2%に引き上げられる。さらに、その後3年以内に2.3%にまで上がることも決まっている。こうした大きな変化を迎える中で、例年以上に「障害者雇用」について社会全体でじっくり考えていくべき年ともいえそうだ。

この時期に毎年発表しているのが障害者雇用率ランキングだ。今回は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2017年版で2015年度の障害者雇用率の回答があった1129社のうち3人以上障害者を雇用している991社を対象に作成した(『CSR企業白書』2017年版は600位まで掲載)。


『CSR企業白書』2017年版(書影をクリックすると販売サイトにジャンプします)

1位は4年連続で食品トレーや弁当・総菜容器最大手のエフピコ。障害者雇用率は14.56%と高く人数も374人と多い。ダックス、ダックス四国といった特例子会社を持ち、2012年度16.10%(同369人、以下同様)、2013年度16.00%(372人)、2014年度14.98%(同369人)と他社の追随を許さない圧倒的な水準を維持している。

回収した使用済み容器の選別工場、折箱容器の生産工場を中心に全国22カ所の事業所で障害者を積極的に雇用。使用済み容器や廃PETボトルは、回収後にエコマーク認定の「エコトレー」「エコAPET」再生容器としてリサイクル。環境問題の改善と障害者雇用を一体化した事業として展開する。

エイベックス・グループは2位にランクイン

2位はエイベックス・グループ・ホールディングスの8.80%(24人)。障害者の勤務場所としてバリアフリーのサテライトオフィスを確保し、バックオフィス業務を任せる。障害者スポーツに特化した部署も設立し、障害者スポーツアスリートを積極的に雇用。トレーニングや試合などでの企業広報活動も担っている。

3位は障害者採用に特化した人材紹介や求人情報サービスを提供するゼネラルパートナーズで8.0%(パート、契約社員を含む数字)。障害者雇用に関する調査レポートを隔月で発行するなど、事業としても障害者雇用の推進を後押しする。

4位は工場用特化搬送機器メーカーであるキトーの6.68%(32人)。障害者雇用5カ年計画を推進。障害だけでなく個性を重視した配属を行い、支援者・家族とも連携し職場定着に取り組む。その成果は2012年度3.55%(27人)、2013年度4.30%(25人)、2014年度5.74%(29人)と年々向上させている比率に表れている。

5位は障害者の就労支援が中核のLITALICO(りたりこ)で5.84%(61人)。同社は発達障害の児童対象の支援事業や家族向けのWebサイト運営など障害者が社会で活躍できるよう支援するビジネスを展開している。社内の障害者雇用にも積極的で、障害者手帳の保有者向けの入社後研修は入社半年以内に3回実施。入社後サポート面談など管理職向け研修も実施している。

以下、6位ダイジェット工業5.76(17人)、7位良品計画5.09%(289人)、8位大和重工4.16%(3人)、9位極東開発工業4.03%(28人)、10位カカクコム3.81%(16人)と続く。



ランキング100位以内でもっとも人数が多いのが、86位セブン&アイ・ホールディングスの1212人(2.47%)。重度障害者が働ける特例子会社などで雇用促進を積極的に進めている。これに続くのが、90位東日本旅客鉄道(JR東日本)の788人。特例子会社以外に、現場、企画部門など、幅広い職場で勤務している。

続いて業種別の集計を紹介する。こちらは2015年度の障害者雇用率を開示している1129社が対象。全体の平均は1.86%で昨年の1.85%とほぼ同じだった。

業種によっても異なる障害者雇用率


社数が10社以上で業種別雇用率の平均値が高いのは、陸運業2.27%(21社)、ガラス・土石製品2.18%(11社)、銀行業2.08%(38社)、鉄鋼2.07%(15社)、小売業2.06%(83社)、機械2.05%(74社)、化学2.04%(97社)、食料品2.03%(52社)など。

一方で低い業種は、不動産業1.19%(21社)、倉庫・運輸関連業1.28%(10社)、証券・商品先物1.42%(13社)、情報・通信業1.49%(83社)、精密機器1.58%(12社)、卸売業1.62%(104社)などだった。

こうしたデータを見ると、「法定雇用率2.3%時代」を見据えて、多くの企業はすでに動き出していることがわかる。

今回のランキングでは対象外だが2.3%以上の企業は179社存在する。

2.2%以上も267社と各業種とも水準は上がっている(『CSR企業白書』2017年版には600位まで掲載)。そのようななかで比率が伸び悩んでいる会社は「世間から後れている」と危機感を持った方がよい。


「平成29年版障害者白書」の推計によると日本の障害者は身体障害者392.2万人、知的障害者74.1万人、精神障害者392.4万人。複数障害保有者を重複することになるが単純合計では858万人と国民の約7%が何らかの障害を持っている計算になる。こうした障害者の雇用面においては、さらに拡大が求められる。

障害者雇用の推進は、国や自治体からの助成金やサポートを受けながら社会全体で障害者の活躍の場を作ろうとするものだ。企業は障害者雇用を義務として捉えるのではなく、本業のビジネスで障害者を活用して利益を出す方法を考えることが求められている。法定雇用率はあくまでも最低ライン。それぞれの職場で知恵を出し、今後もさらなる雇用拡大を期待したい。