木内登英・前日銀審議委員が会見、日銀が金融緩和の一環として実施している国債大規模購入について「今のペースで買い入れを続ければ来年半ばにも限界がくる」と警告した。写真は講演する同審議委員。

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2017年9月22日、前日銀審議委員の木内登英・野村総合研究所エグゼクティブエコノミストが日本記者クラブで会見、日銀が金融緩和の一環として実施している国債大規模購入について「今のペースで買い入れを続ければ来年半ばにも限界がくる」と警告した。2016年末の日銀国債保有残高は370兆円と12年末から280兆円も増加、発行残高全体の4割に達している。

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また日銀が目標とする「2%の物価上昇」について「2%目標には、ほとんど根拠がなく、妥当ではない」と強調。日本経済の現状を踏まえると目標は高過ぎると批判した。

日銀が現在導入している長短金利操作をめぐっては「廃止か見直しを行い、国債買い入れの限界という危機的状況を先送りすべきだ」と提言した。また「日銀が政府債務を引き受ける『ヘリコプターマネー』(中銀マネーによる財政補てん)になっていると市場が認識するようになれば、通貨価値が損なわれるリスクは高まる」と警告した。

木内氏は17年7月までの日銀審議委員任期中、副作用を理由に現在の緩和策に反対票を投じてきた。日銀は2013年1月、政府との間で2%の物価目標を「できるだけ早期に実現することを目指す」とした共同声明を発表。黒田総裁は2年をめどに目標を達成すると宣言して異次元緩和を導入したが、6回にわたり達成時期は先送りされており、実現のめどは立っていない。

木内氏の会見要旨は次の通り。

(1)「需給ギャップ」に見る近年の日本経済は欧米と比べて良好だが、日本の金融政策の正常化が遅れているのは「2%の物価目標」という妥当でない目標を堅持していることによる。80年代後半のバブル期と同様に、正常化が遅れると各種の副作用が累積する。

(2)内外で期待されたほど賃金・物価上昇率が高まらない背景には「成長期待の低下」がある。人手不足がさらに深刻化しても、賃金・物価上昇率が急速に高まる事態には至らず、むしろ経済・金融市場を不安定化させる。

(3)日本銀行の追加的な金融緩和効果は2014年頃には早<も概ね出尽<し、その後は潜在的な副作用のみが累積する状況だ。主な副作用は、▽国債買入れの限界と国債流動性低下による市場の混乱、▽正常化の過程での日本銀行の財務悪化とそれが通貨の信認、▽金融市場の安定に与える悪影響、▽財政ファイナンス観測の高まりによる通貨価値、国債市場の不安定化、▽金融仲介機能を低下させるリスク、金融不均衡拡大のリスクーなどがある。

(4)今のペースで日本銀行が国債の買い入れを続ければ来年半ばにも限界に達し、その際には国債市場の流動性は極度に低下して、価格の大きな変動を生じさせる可能性がある。これは日本の金融市場全体や経済の安定を損ねるだけでなく、過度なリスクテイクが進むグローバル金融市場の大幅調整へと発展する可能性がある。

(5)長期金利目標値の短縮など、「イールドカーブ・コントロール」を大幅に見直すことが、そうした危機回避に有効と考える。

(6)現時点の経済の潜在力に照らして、高過ぎて達成不可能な「2%の物価安定目標」が金融政策の正常化を阻み、潜在的な副作用の累積を許している元凶である。「2%の物価安定目標」を中長期的な目標に位置づけるなど柔軟化することが、政策全体の正常化に道を開<。

国債の買い入れについては、昨年9月の長短金利操作の導入により「事実上の正常化」が進んでおり、日銀のプロパー中心に軌道修正がされていく可能性がある。(八牧浩行)