メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役の警察官であるTさんへのインタビューで「自転車の取り締まり」に関する裏話を暴露する当シリーズ。今回は自転車同士の接触事故を、人身事故ではなく物損事故扱いにしたがる警察官のホンネと、最近横行する「チャリテロ」の実態が赤裸々に語られています。

軽車両の自転車はどこまで車両や歩行者と共存できるのか? その13

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(前回までのあらすじ)現役警察官のTさんが実際に扱った、自転車同士の接触事故の話。加害者の女性が傘をさしながら片手運転をして、一時停止を無視した飛び出しによって接触事故が発生。しかし、被害者の男性はケガをした加害者女性をまったく助けようとせず、その事故の様子をスマホで動画撮影し始めた。結局、負傷者の救護を行わなかった被害者男性は、「ひき逃げ扱い」で重罪処分に。さらに加害者女性は「私は一時停止した、傘をさして目立つ自分を見過ごした男性側に過失がある」と呆れた主張をし始めた……。

Tさん:酷いこと言うなぁって思ったのは「男性は私が自転車で出てくるのを見過ごしていたわけですから、前方不注意じゃないですか? しかも傘さしていたので相当目立っていたわけですので、男性にも大きな過失があると思います」と言ってきたんですね。正直呆れました。事故の引き金を作ったのはあなたなんですよって言いたかったんですけども、それはさすがに言えなかったので我慢しましたが、加害者なのに負傷したことから被害者意識が芽生えてしまって面倒な状態になったんです。

吉田:うーん、自転車に乗って一時停止を無視する人のよくある傾向ですね。車両という認識があまりにもなさすぎます。結局、事故は人身事故での扱いにしたんですか?

Tさん:これが色々揉めまして、最終的に物損事故で処理しました。自転車同士での接触事故では人身事故での取り扱いはなるべく行わないように……と言いますか、率先して行わないですね。

吉田:ええ!? それはなぜですか?

Tさん:判断は被害者側次第でもあるんですが、結局のところ警察側からの民事不介入にするほうがその後に揉めたりしたとしても私たち自身が関わらなくて済みますので。

吉田:それって警察側の怠慢じゃないですか!

Tさん:そうおっしゃると思いました(苦笑)。

基本このような自転車同士の接触事故では当事者同士の示談で解決させるのが私たちの優先事項で、刑事扱いになる人身事故では訴訟問題に発展したりすることが懸念されますので、立ち上がれないほどの重傷重体、または死亡事故にならない限りはなるべく物損事故で示談を勧めるようにしております。

吉田:つまり……警察側としても面倒くさいからって解釈でいいんですね?(笑)

Tさん:そりゃそうですよ。自転車同士の事故や、自転車が歩行者に接触した事故事案は数えきれないぐらいありますからね。

吉田:自転車側のモラルが低すぎるからですか?

Tさん:まさにそうです。自転車も軽車両という認識がなさすぎるからなんです。自転車同士では今回のような出合い頭での接触事故や、右側を走る逆走した自転車が左側通行して交通ルールを守っている自転車へ正面からハンドル同士が接触したりなどで揉める事案があったりとか、本当にキリがないんです。

吉田:そもそも揉める以前に逆走している自転車に大きな責任ありますけどね。ですが、お互い動いている者同士で事故の割合が10:0にならないから揉めたりするわけですよね?

Tさん:さすがですね、そうなんです。後ろから追突でもされない限り10:0にはなりません。今の日本の法律では接触してきたほうだけが損するわけではなく、そんな加害者も守られてしまうんですよね。被害者だけが泣き寝入りする古いままの法律が延々と変わらず継続されてますので、それは自転車だけではなくクルマでもバイクでも同じことなんですが……。

吉田:うーん、これでは殺人を犯した加害者でも人権が守られるのと交通事故の加害者は同じようなもんですなぁ。

Tさん:確かに似たようなもんですね。自転車同士での接触事故で一番揉めてしまうのは自転車の修理費用なんです。それはクルマやバイクでも物損事故になった時と同じなんですが、10:0にでも過失割合が判断されない限り、被害者側も自分の壊れた自転車の修理費用を負担しなくてはならないわけで、初めて事故扱いされた人は面食らってしまうんです。「なんで相手の無謀運転でぶつけられた側なのに修理費用は相手が全部負担しなくていいんですか? こちらは被害者なのにどうしてなんですか?」と言われることも多々。この過失割合は私たちの感情的にも納得行かない部分多いですが、法律で定めていることでもありますので成すすべなしなんです……。

吉田:そういえば以前、巡査の方々と愚痴り大会含めた飲み会に参加したんですけども、自転車を運転する人のモラル低さは道路交通法改正しても絶対変わらないよって嘆いていたんです。その際に皆さんが”チャリテロ”って言ってたんですが、まさに自転車に乗って歩行者以外と接触したとしたらまさにテロですよね。

Tさん:よその署の方々はチャリテロって呼んでいるんですか。凄い隠語ですねぇ。ある意味で正しい使い方かもしれませんが……私もチャリテロって使わせて頂きます(苦笑)。私も愚痴り大会な飲み会参加したいので声かけてくださいよ!

吉田:ヤバい話しか出てこないのでもしかしたらドン引きするかもしれませんけどお声かけますね(笑)。

そのチャリテロ認定する事案というのは、弱者救済措置に関してなんですけども、自転車vsクルマな話が多く、ほぼチャリテロは当たり屋であると全員一致した回答に。タチの悪いエピソードを色々伺ったんですが、仕事がなく治療費やら慰謝料やらで生活保護みたいな感覚で生計立てようと自転車でクルマに接触する輩が結構いるそうなんです。まさに定められた過失割合を悪用してのチャリテロ。走っているクルマの前に飛び出して接触しても自転車の過失割合はどういうわけか3割で、クルマが7割とおかしな過失割合になることを利用しているそうなんですね。自転車で飛び出した側の加害者でも国が定めた過失割合に守られていることを徹底して悪用する事案なんですが、クルマのほうが自転車よりも強くて大きい弱者救済措置を逆手に取った邪悪なやり方は、巡査の方々皆、八方塞がりだと言ってました。

Tさん:で、そんな事案に対するテロ対策はあるんですか?

(次回へつづく)

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出典元:まぐまぐニュース!