3得点に絡んだドゥドゥ(10番)は、明らかにコンディションを上げている。写真:徳原隆元

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[J1リーグ27節]甲府3-2横浜/9月23日/中銀スタ

 J1最少得点の甲府が、J1最少失点の横浜から3ゴールを奪って勝った。しかも甲府にとって3得点は今季最多のスコアだ。残留圏内に沈み、6月と7月の6試合は1得点も決められなかったチームに光が差し込む試合だった。
 
 立役者は誰がどう見てもドゥドゥだろう。何しろひとりで2得点を決め、3点目のPKも獲得したのだ。今季はまだ4得点だが、その状態は間違いなく上昇曲線を描いている。
 
 彼は昨年11月に左膝の手術を受け、今季はなかなか本来の動きを取り戻せていなかった。しかし8月末の24節・川崎戦で見違えるようなプレーを見せて今季2点目を決め、さらに23日の27節・横浜戦でも際立った活躍を見せた。
 
 吉田達磨監督も「コンディションが整って踏ん張れるようになった。ドゥドゥが絡みついてくるのは(相手にとって)脅威だと思います」と彼の復調を喜ぶ。
  
 コンディションの上昇と並ぶ好調の要因は2トップのコンビネーションだ。11分の先制点は、まさにドゥドゥとリンスの関係から生まれたもの。中盤でボールを受けたドゥドゥは相手をいなして中央から持ち上がり、リンスにパスを出した。リンスの左には田中佑昌がフリーで動いていて、ドゥドゥに戻す選択肢もある状況だった。
 
 ドゥドぅは振り返る。
 
「彼に『シュート!シュート!』と声をかけて、こぼれることを信じてゴール前に入った」
 
 リンスのシュートはポストに嫌われたが、ドゥドゥがこぼれ球を落ち着いて流し込んだ。
 
 2点目はドゥドゥが相手の横パスをカットして独走した流れから。GK飯倉大樹との駆け引きを制し、1対1からニアに流し込んだ。
 
 3点目につながった仕掛けは、彼が中澤佑二に「絡みついた」ことから生まれた場面。相手有利の体勢からボールを追い、懐に入り込み、そのまま粘る――。ドゥドゥはそんなプレーで本来の切れ、球際の粘りを取り戻していることを証明して見せた。
 
 しかし彼は直後のPKをリンスに譲った。ドゥドゥはこう振り返る。
 
「2点決めていたので、チームメイトのことを考えた。リンスに気持ちよく点を決めて欲しかった」
 リンスもこう説明する。
 
「フィゲレンセの時からドゥドゥのことは知っているし、一緒に試合で組んだこともある。グラウンド以外でも仲が良かったから、それがコンビの上手く行っている理由じゃないかなと思う。お互いに譲るところは譲れる関係だし、良い形でやれていると思う」
 
 ドゥドゥはスピードがあり、球際でも粘れるようになってきた。リンスは狭いスペースでボールを受けて、収める能力が高い。リンスは8月上旬の加入だが、過去の関係も奏功してふたりの活かし、活かされる関係が速やかに生まれた。
 
『内容は悪くないけれど決められない』という深刻な症状に見舞われていた甲府だが、ようやく普通のチーム並みに得点を決められるようになっている。
 
 クラブもそれを見込んでウイルソンとの契約を解除したのだろう。ブラジル人を4人同時に起用することはできない。そこで甲府のフロントはアジア枠で高さという強みを持つビリーの獲得を選択した。
 
 吉田監督も「それぞれがどこにいるか、どこにいるべきかが見えてきた」とふたりの関係を肯定的に見る。端的に言えばふたりは近い距離間でプレーし、ふたりだけで崩し切れる。攻撃にあまり人数を避けない甲府にとって、そのようなユニットが機能することは大きい。
 
 吉田監督はこうも述べる。
 
「練習を見ていてもふたりはものすごく楽しそうにやっている。そんなこともすごく良いのかなと思います」
 
 ともすると重苦しさが生まれやすい残留争いの日々のなかで、彼らの陽気なキャラクターもチームを助けている。
 
 ドゥドゥの復活に大きく貢献した裏方が、5月下旬にチームへ加わった日系ブラジル人の理学療法士木村マルコストシフミ氏。彼のメニューがドゥドゥのコンディション向上に好影響を与えていることは明らかだが、実は彼もフィゲレンセに長く在籍していた。
 
 かのマンチェスター・シティと提携する横浜を倒す立役者になったのは――。ブラジル全国選手権の1部と2部を行き来するフィゲレンセから甲府にやって3人の男たちだった。
 
取材・文:大島和人(球技ライター)

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