死亡時の行政手続きを簡略化した「おくやみコーナー」について、大分県別府市の市総務課市民サービスカイゼン係に取材した。

市役所内に「おくやみコーナー」

別府市役所には、死亡に関する手続きをまとめて扱う窓口「おくやみコーナー」がある。

一般的に、死亡に伴う手続きは複数の部署にまたがり作るべき書類も少なくない。

ここでは、故人の情報を基に、死亡に関する市役所への申請書を一括して作成。必要な課への案内と関係書類の作成を補助してもらえ、ワンストップで手続きを進められる。

関係する課とも情報を共有して手続きの種類を選別し、必要に応じて他の窓口に案内するか、その担当課の職員がコーナーまで出向くなどして手続きを完了するという。

「おくやみコーナー」の外観 提供:別府市役所

このほど、同コーナーがネット上で話題となり、「これいいな」「凄く助かる」「市民に寄り添ってるんだなぁ、と尊敬する」「素晴らしい取り組み」「素敵」「このスタイルが広がると良い」といった感想が投稿されている。

「感謝される市役所」へ

市によると、コーナーは長野恭紘市長の公約の一つである「ワンストップサービスを導入し、市民サービスの向上による『感謝される市役所をつくる』こと」を目的に、2015年7月に若手職員でプロジェクトチームを結成。そこで出た案がをきっかけに、スタートしたという。

すべてのライフイベントに対応するワンストップ窓口の設置のハードルが高いことから「死亡」に特化した窓口の設置の提案がありました。

この提案を受け、財産活用課財産係(現総務課)が市民サービス改善担当を兼務し開設の実務を担当しました。

相談スペース 提供:別府市役所

2016年度は1247件の利用

おくやみコーナーは2016年5月16日に開設。2016年度は1247件、2017年度は8月末までに580件の利用があったという。

来庁する遺族のほか、電話での問い合わせ、遠くに住む遺族への書類送付なども取りまとめているという。

市によると、コーナーの設置以前は死亡手続きは12課にわたっていた。

遺族は大切な人を亡くしたばかりで疲弊した状態。どこで何を届け出ればよいのかとい心理的負担は大きく、手探りで庁舎内を回り、同じことを何度も記入していたという。

おくやみコーナーでは、遺族の方にマンツーマンで必要な手続きをご案内し、関係書類を一括作成しています。作成した届出書の情報は関係課と共有していますので、担当課は事前の準備もでき、遺族の方は押印・署名のみで届出が完了します。

処理時間も開設当初で3割程度の短縮でしたが、専任職員の努力や各課が要領を得て協力したことにより、現在はさらに短縮されています。

利用者からは「どこで何をしたらいいのかわからず大変助かった」「親切に説明してくれた」など好意的な意見が届いているという。

さまざまな「サービスカイゼン」を実施

おくやみコーナーを運営する「市民サービスカイゼン係」は、市役所の総合案内や電話交換なども管轄。さまざまなサービスの改善に取り組んでいるという。

1.庁舎サインの改修

市民の利用の多い階に、床面に課ごとに色分けした誘導表示を設け、同じ色で各課サインを統一しました。

当市の庁舎は構造上、案内が複雑で、「黄色をたどれば障害福祉課です」などとご案内することにより庁舎の移動をわかりやすく工夫しました。

床面のサイン 提供:別府市役所

2.手続きの待ち時間などの環境整備

庁舎内に市民が休憩できるスペースがなかったため、改修で待ち時間の環境整備を整えました。

会議室などの不足により臨時的な受付を人の出入の多い場所で行っていましたが、利用状況により柔軟に対応できるように可変スペースを確保しました。

3.総合受付の増設

案内業務の充実のため、従来の1階の総合受付に加え、地階に新たに総合案内所を増設し、フロアーマネージャーも1名増員しました。この増設した案内所の一角に「おくやみコーナー」があります。

提供:別府市役所

4.各課業務検索表の作成

市長公約でもある「たらいまわしゼロ」のために、総合案内や電話交換手、宿直職員はもちろんですが、職員が各業務の担当課をすぐ検索できる「各課業務検索表」を作成しました。

長年の電話交換手のノウハウや、予算書、HP、事務分担表などにより、キーワードで検索すると何をどの係に案内すればいいのかがわかるように工夫しています。

「市民に向き合う姿勢」を大切に

市民サービスにおいて大切にしていることを聞いた。

おくやみコーナーは、増設した総合案内所のフロアーマネージャー・専任職員が業務に就いています。開設にあたり、最初にお願いしたことは、遺族の方におくやみの言葉をかけることです。

利便性やスピードが重視されますが、基本は市民に向き合う姿勢ではないかと思います。また、よりよいサービスは職員個人の向上心や知識の習得などの努力が大切です。

良いサービスのためには職員を守ることも必要と考え、「不当要求行為に対応するマニュアル」も整備したという。

市職員の細かな改善が、市民生活の改善にもつながっている。