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もくじ

ー 高性能メルセデスのマイルストーン
ー ブラックシリーズはAMG版GT3
ー 負けず劣らず高性能。しかもリアシート付き
ー 万能性には隔世の感あり

高性能メルセデスのマイルストーン

30年間の開発の積み重ねが生んだ違いが、どのようなものかはよくわかった。そして、今日では当たり前のことが、世代を遡れば途轍もないものだったのにも、もはや驚きはしない。そこで、次なる比較は、世代差をもっと縮めてみようではないか。そう、10年にまで。

2007年に登場したCLKのブラックシリーズは、1950年代のガルウイング以降、メルセデス・ベンツが試みてこなかったような方法でパフォーマンスカーを造ろうとしていることを、明確に示した最初のクルマだ。ブラックシリーズを名乗ったのはSLK55のそれが最初だったが、そのクルマにはあまり触れない方がいいだろう。また、当時最速のメルセデスはSLRマクラーレンだったが、欠点も多かった。

CLK63ブラックシリーズの意義は、その名にふさわしい初めてのクルマであり、先頃デビューしたハイパーカーのプロジェクト・ワンに続く道筋を築いた点にある。また、どのような基準に照らしても、これは過激なマシンだ。

ブラックシリーズはAMG版GT3

エンジン出力が通常のCLK63より29psアップして514psになったことなどは、大した問題ではない。このクルマは、その大パワーを持て余してはいない。もっとも目に付くのは、フロントが75mm、リアが66mm拡大されたトレッドと、それを収めるためのオーバーフェンダーを与えられたボディの方だ。その下にあるサスペンションは専用設計で、アジャスト機構をフルに盛り込まれており、このクルマがサーキット志向であることを強く示している。

さらに、超軽量の鍛造ホイールやリフトを打ち消すカーボンリアウイングなどのエアロパーツ、プログラムを変更したギアボックスを備え、リアシートは取り払われている。これはポルシェ911GT3にインスパイアされたクルマだということは、AMGが認めるところ。たしかにこれは、その手のマシンである。

今になってドライブしてみても、がっかりするところはまったくない。その速さは途轍もないなどという言葉さえ甘いものに感じられ、6.2ℓV8自然吸気のパワーフィールはレースカーを思わせる。その排気量にもかかわらず、本領を発揮させるには回転を上げる必要があり、しかし、いったん回してしまえば、ほかのいかなるメルセデスでも味わえない極上のサウンドに包まれる。

それにも増して、シャシーがまた秀逸。リアにはブラックシリーズ用のオイルクーラー付きLSDが備わるが、それがいかにハードな利きを見せても驚きはしない。後輪にちょっとばかり多くのパワーを送り込めば、スロットルペダルの踏み込み量に比例したテールスライドを生み出せる。10年経ってなおここまでものすごく、まったく失望を覚えないクルマというのはそうあるものではない。

負けず劣らず高性能。しかもリアシート付き

しかしながら、ブランニューのC63クーペも、カタログモデルでありながら、限定モデルのブラックシリーズに引けを取らない。V8ツインターボは、なかなかのサウンドを放ち、たった1750rpmでCLKブラックシリーズの最大値を凌ぐトルクを叩き出す。直線だろうがコーナーだろうが、速さはこちらが一枚上手だ。

ハンドリングについては、それほどスライドしたがるものではない。それは、ほとんどの場合には歓迎すべき性格だ。それでも、テールを振り回そうと求めた操作にはしっかり応えてくれるし、やってみれば素晴らしくコントロールしやすい。10年前には最大の悩みどころだったステアリングでさえ、精確さとリニアさ、満足のいくフィールを手に入れた。

しかも最新のC63は、乗り心地に優れ、スロットルが一定であれば静かで、装備が満載されているうえに、リアシートも備わるのだ。

万能性には隔世の感あり

10年前のメルセデスは、新しいC63に近いことができなかったわけではないだろう。単に、そうしないことで手を打たねばならなかっただけだ。ブラックシリーズは素晴らしいオモチャだが、あくまでもオモチャだということだ。一方で、C63を休日だけの遊び道具にしているのなら、これはもったいない。一番おいしいところを使っていないと言ってもいい。

もうひとつ、見逃せないのが価格だ。2007年当時、CLK63ブラックシリーズは£100,000(1511万円)をわずかに切るプライスタグをつけていた。しかし、今日のC63クーペはそれより£30,000ほど安い。これほど短い期間での進歩ぶりとして、これ以上のものにお目にかかったことはない。