内田彩、チャートアクション好調の意義 声優アーティストの存在感さらに高まるか?

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参考:2017年9月11日〜2017年9月17日週間CDアルバムランキング(2017年9月25日付)

 桑田佳祐『がらくた』が返り咲きの1位を獲得。昨年リリースされた小田和正のベストアルバム『あの日 あの時』のチャートアクションでも同様のことを感じたが、ベテランアーティストのフィジカルの販売スパンは息が長い。「初動=最高順位」のままチャートを下っていくのではなく、熱心に情報を追っていなくても「そういえばアルバム出たんだな」と気がついて買うような層が2週目以降の売り上げを支えているのだろう。スピード感が重視される昨今において何とも牧歌的な感じもするが、こういう現象こそが「生活に根づいた音楽文化」と呼べるものなのかもしれない。先週ワンツーフィニッシュを飾った浜田省吾の企画アルバムが8位と9位に踏みとどまるなど、レジェンドの動きが目立つ今週のチャートである。

(関連:内田彩、復帰ライブで示した“歌への気持ち”と“ファンとの絆” 『Early Summer Party』レポート

 さて、今回取り上げるのは2位にランクインした内田彩の『ICECREAM GIRL』。μ’sのメンバーでもある声優の自身名義では3枚目のフルアルバムである。先日はどうぶつビスケッツ+かばん×PPPの一員として『ミュージックステーション ウルトラFES』(テレビ朝日系)に出演するなどマスに届く活動が続いており、そんな勢いもあってか自身初のトップ3入りを果たした。

 今作を聴いた印象は、「こうだったかもしれないJポップのヒットチャート」。 作品冒頭を飾るキラキラしたエレクトロサウンドの「What you want!」「Yellow Sweet」(Tommy february6あたりを想起させる)、ガールズロックど真ん中という感じのロック風味「Say Goodbye,Say Hello」、アーバンでおしゃれな「Close to you」など、ラジオのカウントダウン番組を聴いているかのような手広さである。hisakuniや黒須克彦といった手練れによって手がけられたこれらの楽曲に内田彩のキャッチーな歌声が乗ることで、アルバム全体としても筋が通ったものになっている。

 「メインストリームの音楽がつまらない」という批判はクオリティを担保したヒット曲が多数登場した昨年で一旦無効になった感があるが、一方で「AKB48の登場以降、似たような曲がヒットチャートに並ぶようになった」といった類の物言いには(いろいろと反証はあるものの)一定の説得力があると言わざるを得ない側面もある。様々なサウンドの楽曲が次々に登場する『ICECREAM GIRL』を聴いていると、「もしかしたらJポップにはこういう感じの未来があったのかもしれない」という気分になる。

 ポップカルチャー内の序列でアニメが「一部のおたくのもの」から「間口の広い一般的なジャンル」になって久しい。その影響力は今では音楽を凌駕する部分もあると思われる。そういった構造を考えると、アニメを支える声優の面々による音楽が音楽シーン全体においてもっと存在感を増してもいいはずだが、現時点ではまだまだ一部の好事家からの注目を集めているレベルだと言ってよいだろう。Jポップ全体を包含するかのような感触を持つ『ICECREAM GIRL』の好調なチャートアクションは、声優アーティストが音楽シーン内の力関係を再構築していくきっかけとなるだろうか。(レジー)