ドイツ首都ベルリン市内の廃屋を訪れ、メモを取るジャーナリスト(2017年5月12日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】荒れ果てた塹壕(ざんごう)や放置された兵舎、廃虚と化した病院──。ドイツの首都ベルリン(Berlin)には、忘れられた場所に赴き、冷戦(Cold War)時代の遺物を巡ってタイムスリップした感覚を味わおうというアーバンエクスプローラー、すなわち都市探検家がこぞって訪れる。

 ベテラン都市探検家のキアラン・フェイヒー(Ciaran Fahey)さんは、共産主義だったかつての東ベルリンにある古い小児病院を訪れた。雑草と落書きに覆われた構内を歩きながら、「すごい。こんなに大勢がやって来たのを見たのは初めてだ」と驚きを隠せない様子だ。

 この日は、地元ドイツに加え、ロシアやラトビアからスリルを求めてやって来た総勢24人が、廃墟の中で恐る恐る歩を進めていた。

 この通称「ゾンビ病院」は、1991年から放置されている。普段ここに時折姿を見せるのは、たまり場を求める若者やホームレスだけだ。

 他の「失われた場所」同様、この古い病院建物も危険とみなされているため表向きは立ち入り禁止となっている。それでも、訪問者らは当局の目を忍びつつ、金網塀の穴をくぐり抜けて中に入る。

 ベルリン市役所のエバ・ヘンケル(Eva Henkel)氏は、危険な不法侵入行為が繰り返されるこうした都市探検を警察は快く思っていないと苦言を呈する。

 しかし都市探検家にとっては、それは旅行パンフレットと同じくらい魅力が詰まっていて、彼らが手にするベルリンの観光地図にはこの病院の所在地がしっかりと記されている。

■「見捨てられたベルリン」

 長年ベルリンで暮らしているアイルランド出身のフェイヒーさんは、こういった廃虚をほぼ誰よりも熟知しており、心を込めて写真を撮影し、その細部について自身のブログや写真集で紹介している。どちらも「見捨てられたベルリン(Abandoned Berlin)」というタイトルが付けられている。

 人々が興味を示し始めたのは、1989年のベルリンの壁(Berlin Wall)崩壊後のことだった。壁の向こう側にあった広大な土地に、かつてのナチス・ドイツ(Nazi)の塹壕やソ連軍の兵舎、閉鎖された赤レンガ造りの工場、さらには乗り物や恐竜の像がそのままになった古い遊園地まで、無数の遺物が見つかったからだ。

 それから四半世紀、不動産ブームで都市の景観が塗り替えられる中、都市探検の人気も高まりをみせた。この流行は世界的なもので、グーグル(Google)で都市探検を意味する「urbex」を検索してみると、700万件以上ヒットする。

 彼らの間には、「写真以外は持ち帰るな、足跡以外は残すな」という暗黙のルールが存在する。

 こうした背筋がひやりとするような旅には、文明滅亡後の世界を垣間見るような醍醐味(だいごみ)があると都市探検家の多くは言う。ラトビアからの参加者の一人は、「自然による侵食」を目の当たりにするのは興味深いと語った。

■秘密は自分だけのもの…なのか?

 流行とあれば、民間業者が放ってはおかない。ベルリン市内には現在、観光客向けの有料ツアーを催行する会社が複数存在する。

 中には、旧西ベルリン(West Berlin)の木々の生い茂った丘の上にある、冷戦時代に使われ今では落書きだらけになった米国家安全保障局(NSA)の聴音哨を訪れるというツアーもある。

 第2次世界大戦(World War II)中に出たがれきを積んで造られたという、「悪魔の丘」を意味するトイフェルスベルク(Teufelsberg)の頂には、巨大なゴルフボールのようなドームを冠した建物があり、長年野外パーティーの開催地になってきていた。

 旅行会社「ゴットゥノウ(Go2know)」の共同創設者アンドレアス・ベットガー(Andreas Boettger)さんは、企画ツアーなら「許可を得て安全」に立ち入りが可能で、誰もが「こういった場所の魅力を感じる」ことができると話している。

 こうした企画についてフェイヒーさんは、自分で無料で訪れられる場所にもかかわらず、料金を徴収して案内する商業ツアーは好みではないと話す。「それでもツアー会社にお金を払いたいなら、それはその人たちの勝手だ」

 フェイヒーさん自身も、自ら発見した穴場への行き方やその周辺を詳述するという、一部の愛好家がタブーとみなす行為に及んでいるとして周囲から批判を受けてきたという。

「所在地を公開して物議を醸した。秘密は自分だけのものとしてしまっておきたいという人もいる」と自らの行為について話したが、「でもこういう場所はごく短い期間しか存続しないのだから、多くに開放すべきだと私は思う」とその背景にある考えを明らかにした。
【翻訳編集】AFPBB News